猪狩翔一 oneman live “単独飛行vol.2” 感想
はじめに
tacicaのGt.Vo.の猪狩翔一による弾き語りワンマンライブ。ワンマンの"単独飛行"は今年の三月の名古屋以来の二度目となる。場所はsomeno kyoto。配信あり(アーカイブも)。どうやらチケット倍率が高かったようで取れなかったと報告されていた方も散見された。
また、前回と同じくカセットテープの販売があり、前回の単独飛行の音源の一部が今回は収録されていた。
tacicaのライブ物販での販売と通販での販売もなく、弾き語り会場限定での販売になるそう。無事に入手。
感想① ゆっくり丁寧に
着席スタイルで立ち見はなし。二席ずつの感覚で用意されていた。なかなか狭く身動きは取りづらかったが、着席ということもあり比較的落ち着けた。sold outということもありスタッフが前から席を詰めるようにとの誘導。
開演時間の五分押しでスタート。ぬるっと猪狩さんが袖から登場。弾き語りでは定番だがメガネあり、コーヒーと水のペットボトル二本を用意していた。
思わず近いな、と呟くほどの客席までの距離感。
まず始められたのは聴いたことのない曲。
"とうぼく"というタイトルらしい。どういう字なのかは不明。年老いたとか君のいない世界などという何というか儚げな歌詞が印象的だった。割と短めな曲でその歌詞からも今度リリースされる「YUGE」の一曲目かなと思った。
以前、singularityの試聴会の際にアルバムの一曲目は遺書を書く気概でやっているということを思い出した。
お次は弾き語りの定番となっている冒険衝動、デッドエンドと続く。
「ゆっくり、丁寧にやっていきます」と宣言があり、曲が終わるごとにその曲のタイトル紹介をしていた。
また、デッドエンドの終わりにはいい曲だなぁ、と自画自賛していた。思わずその言葉に頷いた。
この"らしい“の部分にtacicaが詰まっている。
猪「someno kyoto6周年でまさか弾き語りワンマンが出来るとは思ってなくてすごい嬉しい。
初めて出たのが4周年だったんだよね?」と会場に確認するも特に反応はなし。
「味方がいない」
感想② 暑い日々
チューニングに時間を割く。
「子供が学校の課外授業で川へ行くことになった。最近、川の事故とかもあるから親御さんもご参加出来る方は見学だけでも是非とのことだったから、暑い中ご参加してきた。見学だけのつもりでユニクロのパンツにサンダル履いて割とラフな感じで行ったら、周りは長靴履いてる人もいて割とちゃんとしてた。結局そのまま川に浸かることになって、もうビチョビチョになった。キャプテンみたいな人がいて、その人が配置とかも決めてくるんだよね。
この歳で川に行くことももうそんなにないし、楽しかった」
そんなエピソードから夢中を演奏。
弾き語りでは定番となっている曲。今回販売されたカセットテープにライブ音源として入っている。このカセット曲名が英訳(?)されている。夢中はin dreamsという訳で夢の中という直訳になっているのだが、なかなかどうしてぴったりとハマっている気がする。
歌詞は公開されていないので正確にはわからないが、生まれ変わっても自分でいたいかといったような自問自答するような歌。
「みんな楽にしてね。曲間で飲み物飲まなきゃいけないってわけじゃないんで。演奏中にも飲んでいいからね。曲間に一斉に飲むから、氷の音が凄い」
「最近いわゆる怪談系のyoutubeにハマってる。それこそ取り憑かれたみたいにみてる。
心霊スポットによく行きたがる人って、その心霊スポットの霊が別の場所へ行きたいって思いがあるみたいでそれのせいみたい。要は霊が人を介して別の心霊スポットへ行ってるから、狂ったように心霊スポットに行く人が出てくるらしい
暑い日にはこういう話おすすめです。ちょっとヒンヤリするかも、是非」
ordinary dayは弾き語りでも、tacicaのライブでも最近わりと頻繁に演奏している気がするけど、ハイライトの歌詞の"同じ音色の日は二度とは来ない"を思い起こすように、毎度毎度別の曲のように感じる。
感想③ 新曲ラッシュ
「地元に帰ったら北海道なのに東京よりも暑かった。元々の環境的にもクーラーなんてないから地獄だった。
あと、コンビニへ行ったら照明が全くついてなくて真っ暗だった。聞くと、大きな蛾が大量発生してて、点けると商品のように蛾が入ってくるらしい」
ここからは怒涛の新曲ラッシュ。
ネバーランド(仮)は誰しもあるような忘れてしまったあの頃を振り返るような、どこかノスタルジックで寂しげな曲。
その後、ほとんど間を空けずに荒野を行く。
サビの高音のファルセットが印象に残った。歌詞は猪狩さんらしいフレーズが溢れている爽快な曲に感じた。
「今見てる世界って0.5秒くらい先の世界らしい。脳が指示を出して、意識によって身体を動かしているっていうのが通説だったんだけど、脳より早く意識が動いているんじゃないかっていう話を聞いた。そういう曲をやります」
前回の単独飛行時に初披露されたディスコード。特徴的なメロディが繰り返される。紹介にもあったように"脳が先か、心臓が先か"という歌詞が登場。音源化されてないものの今年の弾き語りにおいては度々披露されているし、曲としても完成されている感じがするので今度のミニアルバム「YUGE」に収録されるような気がする。というかして欲しいというただの願望。
感想④ たっぷりと堪能できた90分
そのままナニユエへ。
今までは弾き語りで披露されていた曲がバンドの曲として発表されることが多かったが、このナニユエはバンドセットのものがリリースされてから弾き語りで初披露されていた。
ビルボードで出来たらいいなと思って森田さんを含めた四人編成で作った曲と紹介。
そして、そのビルボードでも披露されていたターナーの汽罐車をいま一度弾き語りでやりたいと演奏。
お次はまたまた新曲。物怪という歌詞が出てくる通り、ツアータイトルにもなっている物云わぬ物怪。サビ前のフレーズが繰り返される部分が語りかけるようで印象的だった。届ける音楽だなとつくづく思った。
「物云わぬ物怪って曲でツアータイトルにもなってるんだけど、今回出すミニアルバムには入ってない」とまさかの発言が。
「曲作ってるハードディスクがあるんだけど、整理してたらこの物怪が出てきて、ベースもドラムもコーラスも入って全部出来てた。だから他人の曲を歌ってる気分」
LEO、ダンスと続き本編は終了。
実に一時間半のソロライブ。たった一人で演奏しているとは思えないバラエティに富んだラインナップだった。
最後には「また単独飛行するので是非来てください」との言葉がとびだした。名古屋、京都と来たので次は是非関東圏で。
感想⑤ アンコールと告知
舞台袖に下がってからすぐに会場ではアンコールを求める拍手が始まる。少し間をおいてから再び登場。
someno kyoto6周年のtシャツに着替えていた。
「前回の単独飛行の時の音源を会場側が録ってくれていた。製品用に録ってないからノイズが酷い曲とかは入れていない」
ライブ音源ということで拍手や一部猪狩さんの声も入っている。
また、今回も自腹で愛犬たぬきちのシール第二弾を作ったとのこと。そして、そのたぬきちが何と洋服になるのだそう。tacicaのグッズではなく、売上が動物保護団体に寄付されるようなものだそう。
さらに、ここで今後の弾き語りの告知。チラチラと舞台袖を確認。ビルボードで一緒に演奏した森田さんとのツーマンが決まったとのこと。いつもは会場側のブッキングだが、今回は猪狩さん持ち込みなのでいつもとは違ったことが出来るかもとの期待を上げさせる発言が。またfad横浜での弾き語りも発表。まだまだ今年も動いていくみたいで嬉しい。
感想⑥ ブラザー登場
告知を終えるとまた舞台袖をチラリと見て
「あの一人来てるので」とさらりと紹介。
慌ただしく機材が会場にセットされる。
「本当は喋ってる間の準備だったはずなんだけど、入りづらくなっちゃったか」
ここで拍手の中、小西さん登場。
小「すいません。中々出るタイミング無くて」
と謝り気味で登場。
猪「ブラザーです」とそんな小西さんを紹介。
冗談半分なのかもしれないが、そんなことを言えるような関係性、信頼していることが伝わってくる。
猪「来る?って言ったら来るって言うんで」
小「名古屋に続いてまた来れるとは。来ない体でいたんだけど」
猪「二回目は慎重にって思ってたんだけど。二回目来たら三回目も確定になるじゃん」
小「やめるなら今だねって」
猪「ただまぁ確定ではないけどね。来るかは分からないけど、常連になりつつある」
猪狩さんが地元に帰っている同時期に小西さんも地元に帰っていたそう。
猪「地元に駐車場とソフトクリーム屋が結構出来てた」
小「あと道の駅も」
猪「ソフトクリームって儲かるのかな……。今度物販でやろうか」
小「じゃあソフトクリーム巻きます」
感想⑦ アンコール三曲
猪狩さんが始めていい?と小西さんにアイコンタクト。
恐らく弾き語り初だと思われるアリゲーター。二人というのももちろん初。
この時間に帰りたいな。
まだやりますと続いてSilent frogの演奏。小西さんはベースを置いてカホンで参加。前回の単独飛行で人生初のカホンですと言っていたのが不思議なくらい様になっているように見えた。
猪「何か喋りますか?」
小「いやもう充分喋りました」
猪「充分っていうほど喋ってないけど」
小「たぬきちの洋服出るの凄いね。猪狩は絶対上下買うだろうなって」
猪「いや、上下はやばいなって思って下はやめた」
年明けごろに洋服は発売されるそう。
最近の暑さに参っているという話と京都の人の多さに驚いたという話。
猪「京都って厳かなイメージ。寺とか神社とか心を清める場所なのに京都駅で床に座ってる人がいてさ。まだそういう人は京都早いよね。そういう人は鶯谷のキネマ倶楽部あたりに来てください」
最後にバンドとしては未発表曲のぼくらを小西さんのベース入りで披露。
いつも一人で弾き語りで演奏されるこの曲が、小西さんとの二人の演奏でまさに"ぼくら"といったところ。
もしや、こちらも「YUGE」に入るのかもしれない。
セットリスト
とうぼく
冒険衝動
デッドエンド
夢中
ordinary day
ネバーランド(仮)
荒野を行く
ディスコード
ナニユエ
ターナーの汽罐車
物云わぬ物怪
LEO
ダンス
en.アリゲーター
en.Silent frog
en.ぼくら
おわりに
ソロワンマンは今年に入ってから始まったもので、本人も緊張していると漏らしていたが、圧巻のライブだった。
someno kyotoを訪れるのは初めてだったが、以前にFCラジオでsomeno kyotoは音がいいと仰っており、その通りだった。
弾き語りに行くと必ずといっていいほどに新曲を披露される。これがいつしかtacicaとしての曲になっていくと思うと何だか一緒に子供の成長過程を見ているような気分になる。
だから単独飛行のこれからに期待して、ずっとついていきたい。
もちろんブラザーも一緒に連れてきてください。