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tacica 20th anniversary tour “AFTER GOLD” at東京キネマ倶楽部 感想

  tacica9枚目のフルアルバムとなるAFTER GOLDのリリースツアー。1週間前に先行でデジタルリリースされており、CDは会場限定での販売となっていた。

 また来年2025年は結成20周年という記念すべき年になるので、それに向けて行うのが今回。
 全部で17公演という久しぶりの大規模開催。
そんなツアーの初日はお馴染みのキネマ倶楽部から幕を開けた。


感想① 登場〜

 今回は初の2階席。30名限定の席を取れたのは幸先が良い。今までは至近距離で立ちながら見るというのが当たり前だったので、見下ろしながら見るtacicaは新鮮だった。しかもど真ん中の席。ステージと観客を俯瞰して見れるのはなかなか無い機会だった。
 
 入場BGMがいつものではなく変わっていた。
そして時間になるとまずは遊戯が鳴る中での登場。前回ツアーのYUGEから地続きになっている感じがある。そしてその音源を使用している倒木からスタート。昨年の猪狩さんの弾き語りの際に聞いた楽曲で猪狩さんのギターソロと歌がメインで進むしっとりした曲。歌詞的にもこれから始まるあるいはこれからも続いてくような予感をさせるのでスタートに相応しい一曲だったと思える。

 猪狩さんがギターを持ち替える中で中畑さんのドラムのドン・ドン・タンッとリズムが刻まれる。そこに入ってくる歌声。そして間奏の小西さんのベース。三者三様の良いところが詰まっていたと思えた日進月歩。サビ部分にライトでお三方が照らされるそれはまさに"希望のような光"があることを思わせる。またラストの猪狩さんの歌と小西さんのコーラスが重なる部分は生命力を強く感じられるようだった。
 ベースの歪んだ音が特徴的なミカラデタサビ。アルバムの中では唯一前回TLFHでも披露されていた楽曲。その時は中畑さんが前奏は立ちながらドラムを叩いていたが今回は座ったまま。とはいえカッコいいのはもちろんそのままというよりも前回よりもさらに磨かれている感じがあった。アロンに次ぐ新たな定番曲となり得そうな曲。

猪「tacicaです。AFTER GOLDツアー初日です。初日から気合い入れてやっていきたいと思います。よろしくお願いします」

感想② (ほぼ)ノンストップ演奏

 猪狩さんの宣言後には再び演奏へ。
いい意味でダークな雰囲気のあるまぼろし
色気のある歌声は美しいというよりも妖しさを思わせる。歌い方もなかなか特徴のある曲。
続いた曲は前回のTLFHからEmpty Dumpty
同じような雰囲気を持つ曲が続く。ドラムの力強さと呟くように歌うのが特徴的な楽曲。間奏で猪狩さんがギターを弾く様は前回も思ったが何かに取り憑かれているかのようだった。

 サビでメリーゴーランドの華やかさを思わせる虹色に点滅するライトが特徴的だったメリーゴーランド。初めのほうにトラブルなのかハウリングが起きていた。
待ち合わせは地下の喫・茶・店のリズム(ダッ・ダッ・ダン)が気持ち良い。
さっきまで虹色に点滅されていたライトが最後の猪狩さんソロでスポットライトが当たる演出はまるでメリーゴーランドから降りてふと我に帰る、現実に戻るような感じを思わせた。
 アルバム順にほぼ間を空けずにSOUPへと続いた。ダイナマイト持って生きるのも〜というなかなか刺激的な歌詞から始まる。はじめはドラムが目立つサウンドだがサビに向けて助走があり、サビに入ったときにはギター、ベース、ドラムの音が不思議と自然に調和する。

帰りたい 出発地点 疾うに見失ってる

2番サビのこのワンフレーズが刺さる。来た道を戻ればいいのにそもそも来た道がどこか分からないあるいは無くなっているような気がする。歳を取れば特に。

 アコギに持ち替えてからネバーランド。弾き語りのときからとても好きだったので、バンドサウンドでも聴けるのが感激だった。小西さんのベースの低音が入ることで曲が締まる。
"格の違いを見せつけるんだ"の後にはまさにそれを体現するように力強い歌声と駆け上がっていくサウンドを奏でた。サビ部分で赤いライトがステージを照らしていてまさしく赤い夕日の中にいるように感じられてノスタルジーな雰囲気を体感できた。
続いたordinary dayも同じくノスタルジーな雰囲気を味わえた。
「猪狩くんの声は世界のバンド史上一番良い声をしてる」
野村さんが試聴会の際に語っていた言葉だが、まさしくその通りだと思えるような声の伸びと力強さと優しさあるいは怒りとかそういう感情全てが乗っかっているようだった。

感想③ グッズ紹介

猪「いつにも増して気合い入れてグッズ作ってきたので小西が紹介します」
いつものようにパネルを開こうとするもなかなか開けず。
小「お待たせしました。グッズ紹介していきたいと思います。
今回Tシャツ作ってきて今自分も着てるんですけど着心地が良くて。ここにロゴが入ってて」
胸の部分のロゴを見せようとするもオーバーオールの紐の部分でロゴは見えず。
「見えないっすよね。こっちなら分かるか」
背面のの日程の入ってる方を見せるがやっぱりオーバーオールで見えず……。
「パーカーは久しぶりにジップ付きのものにしました。暑い日が続いてたんですけどこれから寒い時期になるのですぐ羽織れるのでおすすめです。これも着心地よくておすすめです」
Tシャツと同じ説明に会場から笑い声が漏れる。

「クッションも作りました。relax。休息とかって意味ですね」
中「え?」
小「あれ違ってます?」
中「いや多分合ってる」
小「これは肌触りが良くて……なんて言うんだろう」とおもむろにクッションを触る。
「反発力がすごくあって。ちょうど良いサイズですし、寒い時期におすすめかなと思います。布団の隙間を埋めるのにもいいかなと」

「小物置きはAFTER GOLD感が出たかなと思います。
メガネケースも作ったんですけどポーチとしても使えるようになってます。ただメガネケースなのでクロスも付いているんですけど。さっきのトレーの下に敷いてもいいのかなとか思います。
ストラップも色々使えると思うので。今回一緒に持ってきてるサコッシュの紐と取り替えることもできるのでそれもいいかもしれません。
キーホルダーもタイトルが入っているものを作りました。かっこいいです」
「あとこれはおすすめというか是非っていう感じなんですけど、CDを持ってきています。今日発売することが出来て持って来れて良かったなと思ってます。みなさんのおかげでもあります」
観客から拍手。そして隣で猪狩さんも拍手を送っていた。
「今日この後早く終わると思うんで、曜日的にも。良かったら是非見ていってください」

以下反省会。
猪「ありがとうございます」
中「どうだった?」
と聞きつつもドラムを叩き始めて次の曲をやろうとするフリをしていた。
小「いや、なんか言葉力無かったかなって」
猪「言葉力なんて言葉を使ってる時点で語彙力無いよね」
この小西さんのコメントの際に私の周りにいた人も語彙力だよと呟いていたので良かった。私だけが言葉力という単語を知らないのかと思ってしまった。

猪「楽屋で小西がツアーTシャツ着て、その上からオーバーオール羽織ってたんだけど。ロゴとか隠れるわけ。でもさ、それで『よし!』って言ったんだよね。
……これがこいつの正体です」
小「確信犯です」
中「あざといね」
小「そうですね」
猪「いや、そんなに笑えないからね」
猪狩さんから釘を刺される始末。

感想④ CDとは

 そんなグッズ紹介の後に、「やりますか」とくだけたテンションから一気にスイッチが切り替わって演奏されたのは花束と音楽隊だった。イントロから思わずのめり込みながら聴いていた。
音源を聴いていてもカッコいいなと思っていたけどやっぱりライブでもカッコいい。
元々短めの曲というのとあるが、あっという間に駆け巡っていった。真っ赤なライトに照らされるステージも相まって純粋にカッコいいロックサウンドだなという言葉を失うくらい良かった。

簡単にロックンロールの音は
どうせ忘れられないでしょう  
 
ただ一回を この一回を
喜んで差し出そう

歌詞の通りに忘れられないような音だったし、tacicaに全てを差し出せると思えた。

 お次からは既存曲メドレー。
集う鹿以来およそ一年ぶりとなる群青
この曲も割とテンポよくリズムよく駆け抜けていくような曲であっという間に過ぎ去っていった印象があった。

奇跡も魔法もないから 
僕たちの歩みは右往左往するのだろう

 魔法と言う言葉は今作の日進月歩にも登場する。また前作の荒野を行くでも使われているなどよく出てくる単語の一つ。魔法なんかはないからみんな迷い、戸惑い、悩みながら生きなくてはいけない。

 イントロから会場が沸き立っていた人鳥哀歌
結成20周年を迎えようとしているtacicaを代表する一曲。そして恐らく中畑さんがサポートで叩き始めてこの10年近くの間に何十回と演奏されてきただろう楽曲。安定感は抜群。ただ猪狩さんが途中わざとなのか歌詞が1番と2番を混ぜこぜにしていたが。なにはともあれ、お祭りのような一曲。間奏で小西さんがステージギリギリまで前に出て楽しそうに演奏しているのもとても印象的だった。観客も合間に手拍子をして、腕を振り上げ、身体を揺らすなど盛り上がっているのが伝わった。

 弾き語りや生配信では聴いていたが、ワンマンツアーで聴くのは久しぶりな気がしたLEO
8月にあったFC生配信の際に9月でリリースから10年経つと語られていた楽曲。月日というのはあっという間だ。この頃はまだそんなにtacicaにのめり込んでなかったし、まだ小西さんはロン毛だったし、野村さんもまだ入っていない時だと考えると色々あったなと思う。
 猪狩さんがギターのヘッドを掻き鳴らすそれでもう分かってしまったアロン
2年前にリリースされてからというもののライブの定番曲になりつつある楽曲。色々書くよりも一番伝わることを書くと"最高にカッコいい"。個人的には今まで聴いてきたアロン史上最高だったと思えた。
 
 猪狩さん、小西さんが中畑さんの方を向き合う。中畑さんはフーッと2回息を吐き出してリズムをとってから始められた夢中
アルバムの中で最長というかバンド史上最長時間の楽曲。だが長さは全く気にならない。
弾き語りで古くから演奏されていた曲だったので曲自体は知っていたが、バンドでの演奏となると全く別物になる。
ここまで15曲以上歌ってきたと思えないような声の伸びと力強さ。2階席で聴いていながら目の前に猪狩さんがいるのかと思うくらいの迫力だった。 

猪「CDは有るべきかみたいなの、最近あるけど。今はサブスクもあって、自分も使ってて便利だなとは思ってるし、でもやっぱりCDを買う機会とかは昔から比べると減ってて。触れるモノを作りたいなという想いがあって。音楽ってそれぞれの人の想いが詰まっているものだし。
自分たちが作る以上はこだわって作りたいなと思って作りました」
ここ最近ずっとCDのリリースはライブ会場限定で、その後に通販で販売という形がとられている。配信という目には見えないモノでリリースされるのは確かに手軽で便利だ。でもモノとして残したいという想いもとても分かる。何でもかんでも手軽とか便利とかを求めるけれどそれで失ってしまうモノもあるよなとか色々考えていた。でもきっとスマホは手放せないし、電子決済とかも使っているんだろうなと思う。

 本編最後の演奏となったのは今作の最後に収録されている物云わぬ物怪で締められた。
優しい歌声、優しいサウンドが会場を包む。
今作では音にこだわったと語っていたが素人でも分かるくらいの良い音が演奏されていたと思う。
物怪が出てくるようなそんな静かな夜のようにしっとりとそのまま本編は終了となった。

感想⑤ 不意打ちの情報公開

 アンコールで登場した猪狩さんの手には何やら紙が。また近くのスタッフさんが何やらグッズのようなものを持っていた。
猪「ありがとう。なんかツアー初日がファイナルって久しぶり? っていうか初?」
中「そうなんだ。知らないけど」
猪「ドラム中畑大樹」
中「よろしくお願いしまーす」
猪「今回アルバム作ってきて、やっぱり手渡ししたいなっていうのがあるので終わったらダッシュで物販に向かいます」
singularityの頃からだが、レコ発ツアーの時には猪狩さんないし小西さんが終わりに物販に立つのが恒例となっている。それほどに想いが詰まっている作品だということだ。

猪「ちょっと告知いいですか」
手元の紙を見ながら発表。
結成20周年記念公演「水母|《くらげ》の骨」を来年4/6に開催!
そしてその前日5日にFC会員鹿の仔限定のライブの「集う鹿」の開催!! とツアー初日にまさかの次回ライブの詳細発表!!!
次回のライブ発表があるとは思わず、面食らった。ファイナルに発表するのが通例だったので今回のこの発表は不意打ちだった。

ちなみにタイトルになった水母|《くらげ》の骨は命あればクラゲも骨に会うという諺からとられたそう。意味としては長く生きていると思いがけないような幸運に巡り合うこともあるということ。
骨のない水母が長生きすれば、自分の骨に出会うこともあるかもしれないということらしい。

tacicaらしいタイトル過ぎる。

20周年記念の発表を受けて
中畑さんが「そっかー。あれ(烏兎)から10年かぁ。あの握手から10年か」と感慨深そうに言っていた。

そしてさらにもう一つ。
猪「今回久しぶりにツアーポスターを作って。なんか最近tacicaのポスター無いなって思ってた人もいるかも知れないけど作ってなくて。でも今回は17公演もあるし作ってみたんだけど中々良いのが出来たなと思っていて。でも基本販促物だし、数とか分からなくて。ポスターも無限に作れるわけじゃないし。あっ、でも木があればいいのか」
と小ボケを挟む。
「だから鹿の仔限定になるんだけどこの後から販売します。裏返すと水母|《くらげ》の骨が印刷されていて。あとシールも付いてくるので。今これから入会しても買えるようになるので是非」
とのことで鹿の仔限定でAFTER GOLDと水母の骨の両面印刷ポスターが終演後から販売された。

 そんな怒涛の発表から演奏へ。
アンコール一曲目はこちらも前回TLFHからの連続での激しいロックサウンドのCo.star
大きな音が会場を包む。次回のライブ発表で沸き立っていた会場をさらに盛り上げるようだった。
最後に一曲、ありがとうございました。との宣言からの締めは定番のアースコード。相変わらずアウトロは盛り盛りで最後の一音まで聴き惚れた。御三方ともそれぞれが去り際にお辞儀をして退場。

 猪狩さんはその後宣言通りに物販に立っていた。
今回もメンバーが物販に立つだろうなと言う予想はしていたのでCDだけは終演後に買おうと考えていたが、今回はポスターの件もあり長蛇の列が出来ていた。
売り子さんに挟まれるカタチで猪狩さんが立っていて、売り子さんに支払って、猪狩さんは売り子さんから受け取ったグッズをお客さんに渡していくというスタイルをとっていた。
話しかけるなんてことは流石に出来なかったけれど受け取りながらありがとうございます、とだけ伝えたら「またお待ちしております」としっかり目を見ながら猪狩さんに言われて心臓が飛び出るんじゃないかというほどの動揺をしながら会場を後にした。尚も長い列が出来ていて人気さが伺えたのがとても嬉しかった。

セットリスト

  1. 倒木

  2. 日進月歩

  3. ミカラデタサビ

  4. まぼろし

  5. Empty Dumpty

  6. メリーゴーランド

  7. SOUP

  8. ネバーランド

  9. ordinary day

  10. 花束と音楽隊

  11. 群青

  12. 人鳥哀歌

  13. LEO

  14. アロン

  15. 夢中

  16. 物云わぬ物怪

  17. en. Co.star

  18. en.アースコード

まさかの珈琲憂歌は演らず……。
singularityツアーのときにstarsをやらなかったということもあるのでもしや……と一抹の不安を抱えている。

おわりに +余談

 アルバムを聴いて物凄く楽しみにしていたツアーの初日。朝5時に目が覚めるくらいに興奮していた。まるで遠足の日の子供のように。
そんな期待を裏切らない最高の初日だった。アルバム曲はもちろん、既存曲もどれも素晴らしいものが聴けた。また初めてキネマ2階席から見るという体験もできていつもとは違う光景を堪能できたが、やっぱり下で立ちながら見るというのも羨ましくなった。
 そしてまさかまさかの来年のライブ発表には度肝を抜かれた。4/5にライブがあるだろうと予想していたが流石に連日でしかもうち一日は集う鹿だとは思いもしなかった。20周年に向けてのライブということなのでファイナル公演で色々情報が公開されるのかと思いきやこのタイミングでの発表とは思わず歓喜した。絶対に何が何でも参加します。絶対に。
 今回はまだまだ参加する予定なので、アルバム曲たちがこれからどう進化していくのか、セトリは変わるのか、小西さんのグッズ紹介は上達していくのか。これからの長い旅路を見届けていきたい。

今回の旅路
グッズとそれを見守る動物たち

 以下余談。
今回急遽開演前に前回TLFHのファイナル公演で会った鹿の仔たちとお会いした。
一人はCDで聴くまでAFTER GOLDの音源は聴かないというストイックな方(先行物販の際に流れていたのもブロックしたとのこと)でアルバムについての話はそこまではしなかったけど、それでも十二分に盛り上がれた。
その際に今回のグッズの小物置きに刻まれている英語は「"命あれば水母も骨に会う"で20っていう数字も刻まれているから多分これがタイトルだと思うんですよねー」と軽口叩いていたらまさかの答え合わせが数時間後にあった。
また「来年は集う鹿もやると思うんですよねー」とも話してたらそれも同じく発表されて、何だか勝手にネタバレをしてしまった気分になった。

 とにもかくにも最高な時間を過ごせた。突発的に誘ってしまって申し訳なかったけれどもとても最高だった。またいずれ。
そしてそんな繋がりを作ってくれたtacicaに改めて感謝を。
いつまでも鹿の仔として親であるtacicaの後をついていきたい。

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