tacica × OTOTOY『singularity』先行ハイレゾ試聴会(後編)
前半はこちらから。
感想④ GLOW〜人間讃歌
ここからは中畑さんと野村さんも参加。もうバンドだと思ってるんで、と猪狩さんが言うように最近のtacicaには欠かせないお二方。
ここからさらに濃密な話が飛び出してきました。
9.GLOW
猪狩さん曰くアルバムの中で最も自分の感情に近く、明るくはないと語る曲。ステイホーム時に作られたそう。
今までは猪狩さんあるいは野村さんが率先してドラムのアレンジを考えて中畑さんに依頼していたらいが、初めて中畑さんに全てをお願いした曲とのこと。
プロデューサーであり、エンジニアであり、ギター、ピアノである野村さんが何でも屋と評されていた。
10.ダンス
弾き語りで随分やっていた曲で、アレンジ自体を受け付けられなくなるほどになってしまったらしい。
「コーラス橋本絵莉子にやってもらってるんですけど」
サラッと猪狩さんから驚きの発言が。
パーソナルなものになり過ぎたと語り、tacicaとして出すことが正しいのか悩まれたらしい。
しかし、小西さんもこのままで良くね、と太鼓判を押し、このご時世だからこそ猪狩さんの家族と日常を切り取ったこの曲のGOサインを出した、と野村さんが語ってくれた。
ここで、飯田さんから「最初から野村さん、中畑さんのお2人入ってたほうが話の濃厚度が違った」との発言が。
11.ねじろ
2021年リリース曲。
飯田さんから曲のことを振られると、猪狩さんが野村さんに意見を求めだしてしまう。聞く人の視野を限定してしまうから曲の解説をあまり話したくないとお話をされていた。
この一節を聞いたときに震えたと話し、これを書けるのは猪狩さんしかいない、と野村さんは絶賛していた。
金という生々しい言葉を使い、ファンタジーもクソもない現実的なこと、生きにくさを表現したとのこと。tacicaにおいてメッセージ性というのは特になく、あるとすれば"共感"と猪狩さんは語っていた。
12.人間讃歌
飯田さんが、まずは野村さんからと、tacicaではなく野村さんに振る。
消毒液というこのご時世ならではの言葉に強烈な衝撃を受けたと野村さんが語る。"何でもない空の下"という歌詞があるため、野村さんのスタジオの屋上でフィールドレコーディングをしたそう。
Rooftop Hymnはここから取られている。
コロナ禍でも割と顔を合わせながら、制作ができたという曲。何気ない1日とかのほうが特別に感じられると猪狩さんは語っていた。
余談になってしまうが、ordinary dayという曲がある。訳すと"なんて事のない日"。これがリリースされたのは2018年。コロナの前である。ただこのご時世とリンクするような曲である。何気ない1日が宝物と歌うこの曲から地続きになっているような気がする。
感想⑤アルバム「singularity」のまとめ
全曲聴き終えて、今回のアルバムsingularityの総合的な事を語ってくれた。
tacicaは普遍的であると評されることが多いと猪狩さんは語る。このアルバムは果たして普遍的なのか、まさに"特異点"であるか、そういうアルバムですと語っていた。難しい。
そして、話題はCDの話に。NASAのゴールデンレコードを模したデザイン。
私も良く知らなかったがゴールデンレコードについてはこちらの記事を参照。
壮大なプロジェクトのようです。
今回のこのCDを作るに当たって、NASAに直接連絡を取ったそう。何を歌っているのか、ツアーや、グッズはどういうものなのか、そういったやり取りを行った上で漸く作られた作品。
「許可する」と返信が来た時はテンションが上がったそう。
「tacicaのゴールデンレコードがどこか知らない星にたどり着いた」という体のCGがジャケット裏面にあるらしい。これを凄く言いたかったです、と熱を込めて猪狩さんが語っていた。
小西さんは今までで一番時間をかけたアルバム、だからこそ一歩先に行けたアルバムだったと語ってくれた。中畑さん、野村さんはtacicaをラクしない、サボらないバンドと評していた。
ここで中畑さんが野村さんに「BROWN」の最後のドラムなんで残したの?と質問が。
BROWNにはドラムのスティックを置く音まで入っているが、その音さえも猪狩さんと野村さんからのカッコいい高評価があり、入ることになったそう。中畑さんはそのことを知らずに出来上がりを聞いて、驚いたそう。
ビリー・アイリッシュが自宅で作ったアルバムがグラミー賞で5冠を取った話から、どこで、どう撮ろうとと猪狩さんのギター、ボーカルと小西さんのベースがあれば、tacicaであるということになると野村さんが1人のファンとして熱く語ってくれた。「完璧でしたね」とtacicaの2人から絶賛。
「どんなアルバムかどうかは皆で決めてくれていいと思います」と猪狩さん。
飯田さんから最後に何かありますかとの質問には
2人揃って「大丈夫です」と応える。
なんとも"らしい"感じでインタビューは終了。
最後に猪狩さんからのリクエストで「Dignity」をもう一度聴くことに。
猪狩さんは前の席にそのまま残り、野村さんは後方へ移動して立ったまま聴いていた。小西さんと中畑さんは先に退場。
(この場面をアーカイブで見たら、猪狩さんだけ居てかなりシュールな画面。見ようによっては謝罪会見のようにも思えてしまった笑)
最後に
ハイレゾ音源は目の前で演奏している感覚というよりも、脳内で演奏しているような感覚に陥っていた。自分の頭の中にtacicaがいる感覚。それほどまでに迫力ある美しい音だった。発売の数時間前とはいえ、先行的に恵まれた環境で曲を聞くことが出来るということはもちろん、tacica、野村さん、中畑さんの4人のインタビューを生で聞くことが出来ることは大変貴重な機会だった。飯田さんもこちらが聞きたいことを4人にぶつけており、根掘り葉掘り聞いて下さって大変ありがたかった。
また次があることを期待して待ち続けていたい。
猪狩さんがインタビュー内でも、また後にブログを更新して書き記していたが、"何の先入観も持たずに真っ新な気持ちで聴いてほしい"とのことなのでこちらに書いたことはあくまでも頭の片隅に置いておく程度にしてsingularityを聴くことにする。何日も、何ヶ月でも何年でも。
この音楽が聴く場所であったり、状況であったり、その時の感情であったり、いつか自分にとっての特異点となるのかもしれない。