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musubu vol.6 猪狩翔一(tacica)/山岸健太 感想(猪狩さんのみ)

はじめに 

 新代田crossingにて行われた弾き語り公演。
昨年の夏ごろから行われているツーマンイベントの6弾目。猪狩さんのcrossing出演は2023年12月以来とおよそ一年ぶり。
ちなみにこの週は月曜日は王子、水曜日は横浜、そして土曜日がこの新代田と、ワンマンツアーをしながら弾き語りもこなす少し心配になるスケジュールだった。

以下、猪狩さんの弾き語り感想です。

感想① スタート

 猪狩さんは後半。20時30分ごろからスタート。先手の山岸さんのことは恥ずかしながら存じ上げなかったけれど、とても力強く、本人もおっしゃっていたけど全てを曝け出すような演奏だった。

 猪狩さんはメガネをしておらず、ギリギリまでずっとマスク着用していた。髪も大分長くなっていて肩くらいまであり、演奏前に髪を耳にかけていた。セットされた楽譜の表紙にシールが多数追加されているような気がした。

「猪狩翔一です。よろしくお願いします」
弾き語りでは恒例の挨拶をしてからスタート。
一曲目はホワイトランド
チューニング中の試奏で何となく察してしまい、その時からもう感情が爆発しそうだった。
雪こそ降らないが寒い冬の夜。どことなく寂しげな雰囲気に包まれるそんな夜に猪狩さんの優しい音色と歌声で温かくしてくれる。
バンドセットだとファズの強烈な音が特徴的でいわば豪雪のようだが、アコースティックだと雪がしんしんと降っているように思える。
終わり方は雪の中でも進む人を見送るかのような優しくも寂しく儚げなサウンドが響く。

「ギター、ほんのちょっと上げてください。上がってるか分からないくらい上げてください」
とスタッフさんに要求してから冒険衝動へ。
ホワイトランドが温めるような曲なら、こちらは熱くさせるような曲。ホワイトランドがこたつのような温もりをくれる曲なら、冒険衝動はストーブや焚き火のように燃えるような。
何か行動しないと、と掻き立てられる。衝動的に何かをやることって意外と大事だったりする気がする。


感想② 山岸さんの話を受けて

 「あんなに良い曲ばっかり作れるなら、ストリップ行ってみようかな。
音楽を作るときとかモノを作るのには無駄なものがないって思ってるから」
冒険衝動終わりのチューニング中に唐突に話し始める。
先手の山岸さんはmcで正月明けにストリップに行った話をしていた。
その中で山岸さんが、"音楽をやることって曝け出すことだと思っていて少し似ている部分がある"というような意味合いのことを話していて、表現することってそういうことだよなと思いながら私は聞いていた。

ordinary dayという曲を。と紹介してからの演奏。
ゆったりとしたリズムがまるでタイトルにもあるなんてことのない日を思わせる。
この演奏の際、客席からカメラのシャッター音が聞こえていた。思わず猪狩さんもカメラやめてもらっていいですかと曲の途中に挟んだ。その後そのまま演奏しきったのは流石プロだなと思った。

「すみません。途中で演奏切っちゃって」

今回はなるやんさん不在だったので本来は止めるべきはずの人がいなかったのもあったのかなと。基本的にこういう場所では撮影、録音、録画禁止なんて当たり前のことだと思っていたので驚いた。何にせよ演者の方にこれを言わせるのは一番よくない。

「前によくスネオヘアーの曲を弾き語りでカバーしていたんだけど、最近やっていなくて。
でも、カバーしてくれって要望があったのでやります。スネオさんの曲が好きすぎて選曲の段階から時間かかっちゃうんですよ」

そしてスネオヘアーのno trick
弾き語りではカバーをすることが多いような気がするけどその度に丁寧に演奏しているなと思う。楽譜を見てチューニングして、一つ一つの音と声をその通りに原曲を崩さないように演奏をしようとしている気がする。

「10年以上前にスネオさんと一緒にツアー回っていただくことがあって。スネオさんは映画の出演がこれから控えてて、ナイーブになってるのかお酒に頼ってるような状態だった。初日は終わったら怒って帰っちゃった。次の公演もお酒を飲んできててステージに上がって一曲しかやらなくてあとはずっとメールを打ってた。バンドメンバーが演奏してるんだけどスネオさんはFのコードずっと弾いてるだけだった。
でも最後の公演の演奏がめちゃくちゃ良くて、思わず泣いちゃったんだよね」


感想③ 残り全部の命を使え

 試奏の部分で声を上げそうになった不死身のうた。以前弾き語りで聴いたこの曲がめちゃくちゃ良くてそれからずっと虜。バンドセットで何度か聴いていたけど弾き語りで聴くとガラッと雰囲気が変わる。一人で演奏する姿と歌詞も相俟って寂しげな雰囲気を醸し出す。見栄を張ってみせた自分と現実の自分が転調してから表現される。

「山岸くんとは初めましてだったんだけど。
さっき話してて、俳優もやってるって聞いて。
ミーハーなんですけど、勉強とかするんですかとか聞いてた。
面白かったです」

これを後ろで聞いていた山岸さんは笑って返していた。弾き語りをやっていると色々繋がりが出来るんだろなと思う。そういう方たちとバンドで共演するのも面白いかもしれない。

物云わぬ物怪は今絶賛ツアー中のアルバムに入ってる曲なので何度も聴いたし、これからも聴くことになるだろうけど弾き語りで聴くとなるとまた別の趣がある。ベース、ドラムのないギターと歌だけで表現される。だから音に余白がある気がするけどその一瞬の無音とか息遣いさえもこの曲の一部になっている気がする。
ちなみに私の身体はtacicaの音楽で満たされている。なので tacicaのライブや猪狩さんの弾き語りを聴きに行くことは身体を回復しに来ているのと同じだと思っている。

本編ラストはやっぱりダンス
弾き語り定番だけど個人的に弾き語りは久しぶりだったので久しぶりにこの曲を聴けた。

曖昧な事など気にしないでおこう
終わるまで夢中になれたら

ここに全てが詰まっているような気がする。
余計なことを考えずに夢中になって踊りきる。そんな人生を送ってみたい。

「ありがとうございました」
飲み物を持ってステージから去るものの、飲み物だけ物販エリアに置いてすぐにまたギターを持った。
「整理してたら、カセットテープの第一弾が3つだけ出てきたので販売します。もし興味ある人がいればぜひ」
この3つは終演後すぐに売り切れたらしい。3月の札幌公演で新しいカセット出してくれないかなと期待。

「じゃあ最後に一曲だけ」
と始められたのはDAN
この曲は歌詞がとても強い。最初からクライマックスかのよう。その歌詞に負けないように必死で声を絞り出し、ギターをかき鳴らすその姿はまさしく残り全部の命を使っているかのようだった。バンドセットでは強烈な音で終わるけどアコースティックだと静かにしっとりと終えられる。
ありがとうございましたと再び締めの挨拶をしてステージから物販の席に戻ってお客さんの対応をしていた。

セットリスト

1.ホワイトランド
2.冒険衝動
3.ordinary day
4.no trick
5.不死身のうた
6.物云わぬ物怪
7.ダンス
8.en.DAN

おわりに

 個人的には2025年の弾き語り初めだった今回。何度か参加しているけれど、やはり弾き語りで聴くと曲の装いも違う。
新代田crossingも久しぶりでステージとの間隔も近く、色々あったけれどお二方のステージが素晴らしく、楽しむことができた。ただ低い椅子は身体に堪えた。

以前会った鹿の仔の方とたまたま整理番号が連番だったので開演前と終演後に話し込んでしまった。基本ぼっちで過ごしてきたのでこういう機会があるとは思ってもいなかった。
今年はtacica結成20周年イヤーということなので、これを機に鹿の仔の方々と交流を出来たらいいなと思っている所存。

2025年もどうぞよろしく。

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