
tacica 20th anniversary tour “AFTER GOLD” at 名古屋ell.FITS ALL 感想
tacicaのAFTER GOLDツアーのセミファイナルは名古屋公演。大阪からの連日参戦。意外にも今回、連日の参戦は初めてとなった。
大阪から名古屋はひのとりで移動。
名古屋も名古屋で人多し。大須商店街は歩けたものではなかったので即座に退散。あとやっぱりまだ寒い。
感想①スタート
今回も小西さん側に陣取って見ていた。開演前に以前も会っている鹿の仔と遭遇、しかも整理番号も近めの番号だったのでべらべらと話しながら待機。小さいハコでソールドはしてなかったが時折、前に詰めるようにスタッフからアナウンスがあるくらい人は入っていた。
ほぼ定刻通りにスタート。青と緑のライトに照らされたステージに森の環境音、遊戯が流れる中でメンバーが登場してアコースティックの柔らかくそしてどこか寂しげな音が響く。
枯れてからが勝負みたい
見切りをつけるのはまだまだ早いみたいだ。
森のせせらぎが止むとドラムの音で雰囲気をガラリと変えてからの日進月歩は「光」をテーマにしているような気がした。ステージを単色の白い光が照らしており、サビではもう少し明るい色がパッとステージを彩る。日進月歩というタイトル通り、日々進歩し続けていくことは光を浴びることに繋がるように思えた。
2番前のベースが駆け上がってくるところが、だんだんと時間が流れていくような情景を生み出していた。
小西さんと中畑さんがアイコンタクトを取ってから始まるミカラデタサビはまだ序盤も序盤なのにアンコールくらいの熱気が沸き起こっていた。
ベースの特徴的な音と強烈なドラムの音もさる事ながら、ギターの金属音に似たキュィーンとした音も印象的。
"笑ってるように泣いてるんだから"の後の猪狩さんがエフェクターから足を弾く動作がかっこよすぎた。中畑さんも時折ニヤリと笑いながら演奏しているし、小西さんは勢いあまって足元に置いてあったペットボトルを転がしてしまっていたり、各々の楽しそうな演奏が見られてこちらも盛り上がった。
次のギターから入っていくまぼろしは猪狩さんの手元ばかり見ていた。手を動かしながらあの独特なリズムで歌えるのかと素人極まれりの目線で見てしまった。
Empty Dumptyはスティックカウントから、せーので始まる音の一体感が気持ち良い。
歌詞にもある卵の中の"黄色"をイメージした照明がステージを照らしていた。以前にも書いたが、このドラムのリズムと叩き方が卵を割ろうとしているように思える。ラストのサビ前のセッションからの猪狩さんのアカペラは痺れた。
七色に輝く照明が印象的だったメリーゴーランド。初日キネマ倶楽部公演の時から好きなライティングだったが、この会場でも見られることができて満足。キネマの時よりもさらに華やかなライティングだった気がする。
そのまま続けてSOUPに移行。
2番のベースソロパートは小西さんのテクニックを存分に拝見できた。
大真面目になったら 笑えない様な事を
これから幾つもまだ期待しているよ
大人になるというフレーズがこの曲ならずアルバム内でよく使用されている。大人になると、真面目に仕事をこなし、社会での役割をこなさなくてはならない。だけどそんな毎日ばかりじゃつまらない。笑えるくだらない、無駄にも見えるような事が案外、生活を豊かにしてくれたりする。
感想② グッズ紹介
猪「ありがとう。tacicaです。
……小西がグッズ紹介をします」
小西さんがパネルを持ちながらいつもの如くグッズ紹介コーナーへ。
小「では、セミファイナルのグッズ紹介をします。
Tシャツのフロントにはツアーのロゴが入っています。こんな感じです」
とオーバーオールの紐をずらしてチラ見せ。
「ちなみに後ろはこんな感じです」
振り向いて見せるがオーバーオールで隠れて見えず。でも小西さんは満足げにドヤ顔で頷いていた。
「パーカーも作りまして、こちらもTシャツと同じロゴがフロントに入ってまして、後ろは別のデザインのロゴが入ってます。今回ジップアップにした理由はもう分かりますよね。すぐに羽織れるからです。今日寒いですけど、明後日あたりから暖かくなるみたいで良かったですね」
クッションはもちろん実物を見せながら紹介。
小「今回の推しなんですけど、各会場でおすすめしていたら、じわじわと売れてきていて、あの、でもまだもう一声いきたいなと」
もう一声という言葉に笑ってしまう。
「今、これだけ膨らんでますけど、渡す時はペシャンコですからね」
何のアピールか分からないポイント。
トレーも今回実物を持ってきていた。
小「マルチトレーです。レーザーでtacicaロゴが入ってて、あと色味とかもこだわってます。
玄関とかに置いておいたら小銭入れとかに使えるかなと。急な配達が来て、小銭が足りないって時とかに使えるかなと」
相変わらず独特の感性をお持ちの小西さんのアイデアにいつも驚かされる。
小「ポーチはもともとメガネケースなんですけど、メガネ使わない人はペンケースとかにも使えるようになっています。あとクロスもつくのでスマホとかの画面を拭くのにおすすめです」
「ストラップは調整ができるようになっています。今回持ってきたサコッシュの紐を付け替えることもできます。取り付ける部分が2つあるものには代用ができます」
「キーホルダーは立体感のあるつくりになっています。メタルキーホルダーです」
前日の大阪で硬いのも作りましたという紹介が尾を引いて笑いを堪えるのに必死だった。
アルバムを愛知県に持ってこれました。是非手に取ってみてください、と最後にAFTER GOLDの CDを紹介して締めた。
猪「ありがとう。昨日ふと思ったんだけど、俺らって心の底からグッズを売りたいっておもってるのかな」
小「え、うん」
猪「いや、だとしたらあんなジャパネットみたいな紹介になるかな」
小「でも、ジャパネット良くない?」
猪「いや、ジャパネットは素晴らしいよ。……どこで会話がすれ違ったかな。売りたい人は『クッション渡す時ペシャンコですからね』なんて言わない」
小「いや、クッションの気持ちかなぁ」
猪「クッションの気持ちかなぁ、じゃないんだよ」
中「でも、クッション売れてるんでしょ」
小「売れてます! でももう一声」と食い気味に答えていたが、
中「そこはありがとうでいいんだよ」
とダメ出しされていた。
感想③ 身体が心が脳みそが動く限り
漫才もといグッズ紹介が終わりはネバーランドからスタート。まさにこの一瞬、一瞬が私にとってのネバーランドだった。忘れたくないけどきっといつか忘れてしまう。セトリとかはメモして残せるけど、その時の感情だったり、雰囲気だったり、状態だったり、そういうものまでは覚えてはいられない。
アウトロの音は夕陽を見送っていくようなそんな情景が見えた気がした。
息を吸ってから猪狩さんの歌声とギターの音色のみで進んでいったハイライト。
思い出に因る逆襲の罠
ずっと こうやって
ある日のハイライトを
目に映したから
僕は又 独り
過去を思い出すことを逆襲というフレーズで表して、強烈なことのように印象付ける。
来る日もハイライトを目に映しながら
人間が生きるように
僕も生きるように
最後はこの歌詞で締められる。
そんな過去というハイライトを糧に進んでいく。猪狩さんのしっとりと力強い歌声、それに合わさるステージを照らす黄色いライトが太陽の光のように思えて、力を貰った。
ギターを持ち替えて始まるここからの流れは怒涛に過ぎていった。
まずは花束と音楽隊。正統派のロックテイストソング。サビへの盛り上げ方が非常に上手いので自然にノれてしまう。猪狩さんが差し出そうと歌うので、この一回きりの人生を私はtacicaに差し出せる。
花束と音楽隊が終わるとありがとうと猪狩さんが言ってからの某鬣犬。演奏もさることながらライティングも素晴らしかった。この曲も分かりやすくノれる曲。個人的見所は2番終わりの猪狩さんが遠吠えのように声を荒げている中、小西さんが動き回りながら演奏している場面が強烈に印象に残っている。
そしてさらにお次は彼らの代表的な曲の一つでもある人鳥哀歌が始められる。会場のボルテージは最高潮に。
また、ここでいつも猪狩さんのアンプに載せられているペンギンの人形をステージ中央、猪狩さんと小西さんのちょうど間に置いていた。アンコールとかで置くことはあるけどこのタイミングではおそらく初。しかもその後もずっとセンターに置いてあった。
大阪でもやっていたが、cメロの小西さんのベースソロの時に中畑さんがドラムスティックで小西さんの方を指して視線を集めさせていた。
ラストはTL1同様に中畑さんの雄叫びもあった。
人鳥哀歌終わりから中畑さんのキックドラムがリズムを刻み、観客たちはそれに合わせて手拍子をする中でそのままジャッカロープの演奏になる。年明け静岡からどうやら演奏のあるこの曲もライブで聴くのは久しぶりな気がする。ハイエナ→人鳥→ジャッカロープと動物曲続きかつjacaranda繋がり、TL1と同じ流れ。
ライブアレンジ版といった具合に猪狩さんのギターが暴れ回っていた。
このメドレーの締めくくりはアロンだった。
言わずもがな、お三方それぞれに見せ場があってその全てがカッコいい。そんなステージをサイケデリックなライトで照らされるので、これは実は夢なのではないかと思うような現実感がなく、地に足をつけていないような気分になっていた。
中畑さんのカウントから始まっていく夢中は聴くたびに変わっていく印象がある。初日キネマではもっとゆったりと演奏をしていたと思っていたが、猪狩さんがビブラートを効かせるためにギターを身体ごと揺らしているように頭を振りながら動かして、ステップを踏んでいる姿を見られた。
猪「今日は来てくれてありがとう。2月のね、こんな忙しい時にね。
コロナ禍以降、音楽を聴いてライブへ行くことって結構なことだと思っていて。
だから、身体が心が脳味噌が動く限りはtacicaを続けていたいと思ってます」
これだからtacicaというバンドから離れられない。彼らは、彼らだけでもないが、この数年バンドにとっては活動をするのは難しい環境であったと思う。でもtacicaはそんな中でもやり続けてきた実績がある。だからきっとその言葉に嘘はないと思えるし、これからもついていこうと思える。
最後に一曲と宣言してから始まった物云わぬ物怪で締め括られた。
あんなMCの後、すぐに、もう瀕死の〜と始められる。この切り替えの早さにいつもながら脱帽する。インタビューでも語られていたが、CDの音源とライブでの音源の差異がほとんどない。それが良い事なのかどうかは分からないけれど、演奏力の高さを窺い知れることは確かだ。最後までしっとりとした曲調で進んで行き、一瞬の静寂があった後にそれぞれが挨拶をしてステージを去っていった。小西さんは去り際に中央に置かれたペンギンの頭を撫でてから去っていった。
感想④ 小山悠
猪「ありがとうございます。
CDを作ってきて、昨日大阪公演でライブ会場まで来てくれる人たちに宣伝する必要あるのかなっていう話をしたんだけど。昨日の物販で新しいアルバムってどれですか? って聞かれ、これはちゃんとやらないとなと思った。
心底買って欲しいものです。よろしくお願いします」
ちょっとジャパネットを意識したかのような話し方だった。
猪「ドラム中畑大樹」
いつものように中畑さんを紹介。
中畑さんは立ち上がると
「ギター、ボーカル猪狩翔一」とまさかの逆紹介をしてくれた。
猪狩さんも意外だったようで目を開いて頷いていた。
「ベース小西悠太」
もちろん小西さんも中畑さんが紹介してくれた。小西さんは丁寧にお辞儀していた。
曲へ行くかなと思ったらここでまた猪狩さんが話し始める。
猪「最近、迷惑メールって中々凝っている気がして。個人の名前で来たりするでしょ。それでこの間小山悠っていうどこかで聞いたような名前から連絡来ててさ。悠も悠太の悠と同じでさ、小西かなって思っちゃったんだよね。
……やってる?」
小「いや、まだギリやってない」
ギリって何だよと笑ってしまった。
猪「こういうの送るのって意外となかはたさんだったりしますよね」
中「うん。俺が大体送ってるよ」
こういうくだらないノリが好き。
そんな緩い雰囲気を壊すようにギターソロからCo.starが始められる。この曲も人鳥哀歌の時のように手拍子を送るのが恒例のようになっている。こういうことって強制のようにも思えるけど、実際その場にいると不思議と体がつられてしまう。
そしてラストはアースコードだった。
本編ラストだった物云わぬ物怪とは反対にアウトロで目一杯音を鳴らして最後の最後の一音まで会場に響き渡るように全身を使いながら、懸命に演奏していた。
ここからも同じように何時でも奏でる
アースコードを
20年近く前のデビューしたてで発表されたこの曲は今でも変わらない決意が込められている気がする。
汗だくになりながら、ありがとうございましたと言ってからステージを去って、今度は小西さんがペンギンの頭を撫でていった。
その後、瞬間移動でもしたのかと思うくらいの早さで猪狩さんが物販に立っていた。
本当に誠実だし、熱意が伝わってくる。
セットリスト
倒木
日進月歩
ミカラデタサビ
まぼろし
Empty Dumpty
メリーゴーランド
SOUP
ネバーランド
ハイライト
花束と音楽隊
某鬣犬
人鳥哀歌
ジャッカロープ
アロン
夢中
物云わぬ物怪
en.Co.star
en.アースコード
大阪から
ordinary day→ハイライト
命の更新→ジャッカロープ
HERO→アースコード
と変化していた。
おわりに
セミファイナルとなった名古屋。今回意外にも連日のライブ参加は初だった。2日続けてしかもセトリが変わるというのは中々珍しい機会だったかもしれない。それと猪狩さんの決意を聞くことができてまた命が更新された。
とはいえ、残すところあと一公演とは寂しいものだ。
開演前に鹿の仔とお会いしてどこでもドアの話をしたり、先日参加した米津玄師のライブの話をしたり、また別の鹿の仔に帰り際に会って北海道よろしくお願いしますなんて挨拶をしたり。数年前の私では考えられない交流ができている。今一度、皆様には多大なる感謝を。
鹿の仔オフ会も現在計画中なので、ほんの少しでも興味がある方がいれば是非ご一報をいただければ。