tacica 20th anniversary tour “AFTER GOLD” at 仙台ROCKATERIA 感想
tacica、9枚目のフルアルバム「AFTER GOLD」リリースワンマンツアー。
全17公演中の8本目。年内ラストライブ。
12月終わりとあってかなり冷え込んでいた。昼頃に到着すると雪が降っており師走らしさを肌で感じた。
感想① まさかのミス
昨年ぶりの仙台ROCKATERIA。地下にあるこぢんまりとしたハコでステージとの距離はだいぶ近め。今回は猪狩さん側の方で観覧。
登場前のSEはどうやら各会場ごとに違うようで東京、岡山の時のものとは違ったような気がする。
ほぼ定刻通りにメンバーが登場。
遊戯のSEが鳴りつつ緑色の照明がステージを照らしだしており、さながら森のような雰囲気をまとっていた。そんなところに優しげな音色から始まる倒木。サビへ向かっての盛り上がりが絶妙でここから始まるんだなという決意のようにも思える。タイトルこそ倒木、つまり倒れてしまった木だけど倒れたから終わりではないということを彼等なりに伝えてくれる。
猪狩さんがギターチェンジすると、ドラム先行で始められる日進月歩は先ほどとは打って変わって「動」の曲。演奏はもちろんだが、猪狩さんの歌唱力に圧倒される曲。あとここの会場は低音がもの凄く響く。それこそ地面を揺らすくらいに。間奏の小西さんの鳴らすズンズンした音が身体で感じられて、ライブに来ているなという実感が最高に気持ち良かった。
そんな小西さんベース主導で始まるミカラデタサビだったのだが、何やら音が外れていて会場も少しざわついていた。ライブアレンジかと思いきや、「すいません」と小西さんが謝って、リスタート。小西さんがミスるのは珍しい気がする。
攻撃してくるようなそんな音が会場内へと響き渡っていた。聴くたびにこの曲はカッコよく進化していっている気がする。中畑さんのドラムも序盤だというのにフルスロットルで叩いていて、それに呼応するように小西さんのベースが会場を揺らす。そして何と言っても猪狩さんの声。目を見開いて歌うそれは恐ろしさすらある迫力だった。一曲目、二曲目とは打って変わった歌声。魔性の声だとつくづく思わされる。
少し間を置いてから今度はギターから始まるまぼろし。
私的にはjacarandaにも入っていてもおかしくないようなそんな雰囲気を纏った曲。いわゆるちょっと暗めなイメージがある気がする。
ここでも猪狩さんの魔性の声が炸裂する。妖しげにAメロを歌ってからのサビでは美しい高音が響く。その声こそまさしくまぼろしのように思える。
そしてお次は既存曲Empty Dumpty。
特徴的なドラムのリズムで思わず体を揺らされる。前にいた方がこのリズムが聴こえた瞬間に息を呑んでいてそこからずっと楽しそうに嬉しそうにしているのを見て、思わず握手をしたくなった。8月から9月に行われたTIMELINE for HOMELAND 11 bluesでも私は当然聴いているけれど、いつ見ても間奏の猪狩さんのギター捌きには痺れる。頭を降って掻き鳴らすあのシーンは目に焼きついている。そしてそれからのアカペラ。力強さを持つ声が会場にいる観客の心臓を掴むかのようだった。
また少しの間を置く。開演前に鹿の仔と話していたが tacicaの観客たちはこの間に決して声を上げない。他のバンドならメンバーの名前を呼んだり、掛け声をあげるなんてこともあるがここではそんなことはない。ただひたすらに彼等の邪魔をしないようにじっとまさしく鹿のように落ち着いて見守る。
中畑さんのカウントからメリーゴーランド、そして地続きにSOUPとアルバムの曲順通りに進んだ。メリーゴーランドのどこか気怠げな歌声と"待ち合わせの地下の喫茶店"のリズムが大好き。東京、岡山では七色に照明がステージを照らしていたが今回は控えめ。しかしミラーボールが客席の上で回っていて適度な華やかさがあった。
SOUPは一つひとつの言葉、音が特にはっきりと聴こえた気がした。ギター、ベース、ドラム、そして歌。当たり前だけどそのどれもが全く邪魔をしておらず、お互いがなくてはならないものだと感じられるような心地よいサウンド。お互いの成分が混ざり合って一つの味になるまさしくスープのよう。
猪狩さんが"大人になれればの話"なんて歌っているけれどあんなに落ち着いてみえる猪狩さんが大人ではないのなら私は一体何なのだろうと思わされる。
感想② バーバパパクッションと何でも入るトレー
猪「ありがとう。グッズを今回も作ってきたので小西が紹介します」
狭いハコだったからか今日はあらかじめ小西さんのアンプの裏手に先に用意されていたパネルを自ら持ってきて紹介。今回現物を持ってきていたのはクッションとトレー。
小「じゃあグッズ紹介をします。あっ、先にすいません。さっきの三曲目すみませんでした」
とミカラデタサビのミスをまず謝罪。
再開しますとグッズ紹介にもどる。
小「Tシャツは前にツアーのロゴが入ってて後ろには日程が入っています」
自身が着ている実物を見せようとするものの相変わらずのオーバーオールで胸部分のロゴが見えない。後ろを向いてみるものの結局オーバーオールのせいで見えない。しかし当の本人は観客の反応を見てただ無言で頷いていた。
床に置いたパネルを持ち次の紹介をしようとするもパネルが上下逆さになっていて観客に突っ込まれる。
中「落ち着いて」
小「少し動揺してます」
「パーカーも今回作ってきてて。寒い時期に羽織れるように。今日って寒い方ですよね?」
観客たちの反応を伺う。さすが道民。これくらいの寒さはなんともないのか。
「フロントなのでいいかなと」
フロント?という言葉に違和感を覚えていたが特に言及なくそのまま実物を持ってきていたクッションの紹介へ。
「今回の個人的推しなのがクッションなんですけど。良いですよね? なんか昨日も思っていたんですけど形がバーバパパとそっくりだなと思っていて。おすすめです」
小「トレーも今回作ってきていて」
こちらも実物を見せつける。
「こうなると金色の円盤にしか見えない気もするですけど。あの……何でも入ります!」
中畑さん大笑い。猪狩さんも近くにいたスタッフさんに何でも入るはやばいよねと話しているのが聞こえた。
小「ポーチも作ってきていて、パカっと開くタイプなんですけど。ペンケースとかにも使えるかなと。元はメガネケースなのでクロスがついてきます。メガネ使わない方はスマホとかの液晶拭きに使ってください。
ストラップも作ってきまして、スマホ用なんですけど今回持ってきているサコッシュの紐とも付け替えが出来ます。長さも調整できるようになっているので」
「最後に、今回の目玉のアルバムを仙台に持ってきました。是非」
これにてグッズ紹介終了。
猪「ありがとう。……なんか終始怖かったよね。ラ行が全部巻いてるんだよね」
中「巻いてた?」
猪「クロスとかクrrrロスみたいな感じで」
中「あぁ巻き舌ね」
猪「バーバパパに似てますとかだから何だよっていうね。昨日も言ってたけど……。
さっき2024年ラストだねって話してたのにその話もしてない」
小「あっ、そうだ。言ってないや」
猪「なんかもういろいろ置き忘れてきちゃったんだね。
ドラム中畑大樹!」
恒例の突然の中畑さん紹介。
中「よろしくお願いしまーす!
トレーにさ、何でも入ります! っていいよね。あとパーカーって言ってた?」
小「はい」
中「パネルにもちゃんと書かれてる?」
小「はい。書いてありました」
中「じゃあ大丈夫。フーディーとかじゃないなら。前にスウェットなのにトレーナーっえずっと言ってたから。名前結構変わるじゃん」
猪「あぁ。僕パンツからもう無理です」
小「あっ、フード付きだからフーディーってことですか?」
中「それはそうだと思うけど」
猪「あとパーカーの時のさ、フロントですってあれ何? ジップアップのことでしょ」
小「あれ? そんなこと言ってたっけ?」
中「覚えてないんだ!」
以上、小西劇場でした。。。
感想③ 既存曲の安定感
後半戦はアコースティックセットのネバーランドそしてordinary dayの2曲。
どちらもノスタルジーを感じられる曲。特にネバーランドは今の tacica、猪狩さんだからこそ表現できる曲だと思う。そして、それが突き刺さるのは自分も同じように歳を重ねていっているからだろう。こうやって歌詞が自分のなかにストンと心地よく落ちてくるのがtacicaの魅力だと思う。
今回は赤ではなく青い照明でステージが照らされていた。
ordinary dayもネバーランド同様に聴けば聴くほどに五臓六腑に染み渡るような曲。曲としてはアコギという事もあり「静」のイメージが強く、テンポも比較的緩やか。それがまさしく日常を表している。毎日同じ事を繰り返し、でもそうやって繰り返すだけでも十分に素晴らしい。そんなふうにただ生きていることを熱量のある演奏と優しげな歌声で讃えてくれる。
ここからは再びエレキギターに持ち替えて、花束と音楽隊から既存曲たちへと繋げていく。
先ほどまでのゆったりとした雰囲気をいい意味でぶち壊す激しめなイントロ。ドラムとギターがいっせーので入ってくる。何度か書いてるような気がするけど tacicaはスイッチの切り替えが凄い。MCからの曲の入りとかアップテンポ曲からスローテンポ曲、グッズ紹介の小西さんと演奏中の小西さん。雰囲気がその時々で変わる。中でも今回の花束と音楽隊は緩急がかなりついていてあっという間に演奏が終わった印象だった。
そして間をさほど置かずに群青、人鳥哀歌、LEO、アロンの既存曲へ。ここの曲たちはどうやら各会場で若干ずつ変わっているらしい。ちなみに今回は東京と全く同じだった。
人鳥哀歌は観客ほぼすべての人がノリノリになるのでこちらから見ていても楽しい。こういうライブで盛り上がれる定番曲というものがあると新曲ばかりのリリースツアーでは妙な安心感がある。新曲は新曲の楽しみはあるけど既存曲を蔑ろにしない感じがして嬉しい。
アロンもここ最近のライブ定番曲。LEOからアロンまでに猪狩さんが水分補給してタオルで汗を拭いたり、長めの間が空いた。一時休息というのももちろんだと思われるが、まだまだここからやっていくぞという気概にも思えた。
そして始まった演奏は予想を超える迫力あるサウンドで会場を盛り上げた。中畑さんのドラムソロはいつでも釘付けになる。
ここで少しトーンダウンしてアルバム曲の夢中の演奏。先ほどまでのエレキギターで演奏された曲は激しめの曲が多かったけれど、テイスト的にはネバーランドやordinary dayのアコースティックスタイルに近い。なので身体を揺らして聴くというよりもじっとしながら聴き惚れていた。
猪「2024年最後のライブで。今日で8本目でまだ折り返しでもないんだけど2025年もやっていきます。またアルバムなのか何なのかは分からないけど音源作ってまた来ます」
そうして演奏された物云わぬ物怪で本編は締められた。
開演前に会った鹿の仔の方が先行リリースの時に聴いた時はそこまでだったのにアルバムで聴いてライブで聴いてみたらめちゃくちゃ良い曲過ぎたというようなことをおっしゃっていて、心の底から同意できた。ひとつの曲として聴くことや流れの中で聴くこと、至近距離で生の音と声を聴くことで捉え方や感じ方は変わる。3人が奏でるこの曲はまさしく"やるしかないのさ"という気分にさせられる。
そして静かに彼らの演奏は終わりを告げた。
ありがとうと猪狩さんが呟くと各々こちらにお辞儀をしながらステージを降りていった。
感想④ 2024年ラストもいつも通り
ありがとうーと出てきた猪狩さんはCDを手にして登場。
猪「今日は小西が盛大な間違いをしてくれたから俺的には良いライブ納めだったな」
小「まあ2024年はこんな感じだったってことかな」
猪「開き直り、立ち直り早っ!」
小「来年にね。プラスプラスに」
中「今だって大事だよ!」
ここで猪狩さんがCD紹介。
猪「CDいる? 現物いる? みたいな事を最近よく言われるけど、新曲配信します、CDは出しませんってやっぱり寂しい。でもそういうのが無くなる時がいつかは来るのかなと思ったりしてます。なのでそれが来るまでは作り続けます。
会場で買ってくれた方にはジャケットのステッカーがついてきます。あと前からそうなんだけど手渡ししたいなっていうのがあるのでこの後物販に立ちますのでよかったら覗いてってください」
曲やっていくのかなと思いきや、あー、この話したっけと猪狩さんが急に話し始める。
猪「泊まったホテルのフロントとかに連絡する電話あるでしょ? あれが実家の電話と全く同じだったの。だから何か既視感あって居心地が良かった。小学生の頃の友達の家の電話番号とか今でも覚えてるから思わずかけそうになった」
猪狩さんわりとホテルでの話よくするなー。
猪「来年結成20周年で4/6に東京で水母の骨というホールでのライブをします。東京であれなんですけど……。今日寒いっすよね。新潟から夜走って仙台向かったんだけど道中結構雪で。でも仙台着いたら晴れていた。よしと思っていたらホテル出る時間には結局雪降ってた。
でも、また今日これから東京戻るんですけど。あのそれくらいの距離感なので」
と静かに圧をかけていた。
猪「それでポスターも作ったんですけど今日も会場に何枚か貼ってあるんですけど良い出来で。なので販売しようかなと。ただどれくらいの数量作ればいいのか分からなかったので、FC会員限定にはなるんですけど販売してます。
鹿の仔に入ろうとしている人の背中を押せたらいいかなと思っているので」
CDと資料を片付けたので今度こそ演奏かなと思いきや、再び猪狩さんが口を開く。しかも意外な言葉を発した。
猪「有馬記念なんですよね、今日」
中「えっ! 意外! 買ったの?」
猪「いや買ってないです。もう売っていないんだろうけど。買い方知らないんですよね」
中「ネットで買えるよ」
猪「今年厄年なんですよ。なので実際行ったほうがいいのかなとか。あと馬が走っているのを見たいんですよ。見たくない?」
小「じゃあみんなで行こうか」
猪「鹿の仔たちと競馬場行こうか。
大当たりしたらその時点で終了だよね。もしかしたら次のライブで服装が派手になってるかも。MCとかも一切ないし、基本的に当日入りになってるかも」
中「まぁまぁその辺で」
鹿の仔たちと競馬場は面白そうなので企画してくれたら行ってみたい。小西さんはミラクルでめちゃくちゃ勝ちそう。
アンコールはCo.starとアースコードという東京と全く同じセトリ。
アースコードはアウトロがいつも以上に長め。猪狩さんがステージギリギリまで近づいてオフマイクでありがとうと生でその声を聞かせてくれた。観客の方を見るとうんうんと頷いた。
改めてマイクを通してありがとうございましたとギターの音がまだ鳴り止んでいない中のステージを後にしていった。
セットリスト
1.倒木
2.日進月歩
3.ミカラデタサビ
4.まぼろし
5.Empty Dumpty
6.メリーゴーランド
7.SOUP
8.ネバーランド
9.ordinary day
10.花束と音楽隊
11.群青
12.人鳥哀歌
13.LEO
14.アロン
15.夢中
16.物云わぬ物怪
17. en. Co.star
18. en. アースコード
東京と同じセトリ。
後半戦はまた変わるのかなと期待。
おわりに
2024年ラストとなったライブ。メンバーもおっしゃっていたが一旦終わりだけどまだまだ来年も続いていくし、結成20周年というめでたい年を迎える。現時点で4月6日までのライブが発表されている。まだこれから4ヶ月先の予定まで埋まっている。しかし20周年イヤーということなのでその先もおそらくライブなりイベントなり弾き語りなどたくさんやってくれると期待している。
仙台は雪も降るような師走らしい寒さだったけど、ありがたいことに鹿の仔と交流する機会があって開場ギリギリまで飲みながら待つことが出来た。これも今までのぼっち参戦では考えられなかったことだ。今年は鹿の仔との交流を深めることが出来た年になったと思う。
2025年の20周年イヤーでは鹿の仔との交流をさらに深めたい所存。
今年も最高でした。ありがとうtacica。関わってくださった鹿の仔の皆様ありがとう。こんな文でも読んでくださった方ありがとう。
来年も性懲りも無くライブに参加して、お便り書いて、レポ書いていくと思います。
仙台で鹿の仔といただいたイタリアンを最後に添えて。
(決してクリスマスを意識したわけでも、何かの宗教あるいは儀式でもない)
では。