TIMELINE for HOMELAND 11 bluesが待ちきれない!
tacicaが来年迎える結成20周年に向けた2024年2度目のTL企画。
今回は2013年にリリースされた4枚目のアルバム「Homeland 11 blues」を再現する。
「jacaranda」の動の雰囲気もありながら「sheeptown ALASCA」の静の雰囲気もある。
2枚目、3枚目を経たからこそ生み出されたアルバムである。
bluesは音楽ジャンルとしてのブルースではなく、「憂鬱」という意味合いとのこと。
そんな11曲の憂鬱な曲たちを好きなフレーズと共に振り返ってみる。
①barefoot
自ら舞台に立って逃げるなんて許される筈ないから相当な痛手にも藻搔いて堪えて
アコースティックで演奏される2分ほどの短い曲となっている。短いからこそ歌詞がギュッと濃縮されて普段よりもだいぶストレートで分かりやすい歌詞になっている。
タイトルは「裸足」であり、始まりを感じさせるプロローグのように思える。
②vase
いつか独りで泣いた場所は
いつか誰かと笑う場所
小西さんのゴリゴリのベースから始まるアップテンポなノリの良い楽曲。
ただ歌詞には、特にBメロ部分は孤独感や不安さが垣間見える。しかし、気持ち良くメロディと歌が流れていくので心地良く聴くことが出来る。メリーゴーランドを回転木馬と表記するのは猪狩さんらしい。
プツンとテレビが消えるようなノイズで曲は終わりを迎える。
③newsong
夜が恐いなら泣いたらいい
朝を迎えて笑えたらいい
どれだけ今日に疲れても
まだ見ぬ今日は美しいんだ
初のタイアップソングとしてリリースされたシングルのアルバムver. 聴き比べると最初のドラムの音がこもっているような、低くなっているような、ギターの音量が絞られているような若干の違いがある。
タイアップということもあり、その作品に寄せているのももちろんあると思うが、これを機に聴く人に対して、またドラムの坂井さんが復帰してからの新たなtacicaを紹介しているような楽曲にも思える。そういう意味でのnewsongな気がする。
もしかしたら"ニュースが他人事の様な"という歌詞から"news"とも掛けているのかも。
④Co.star
大層な仕掛けはない物語と
何も要らない世界へ
mvも作られているアルバムのリード曲。シンプルに格好良い。
"天井と床だけで出来た家に住みたいんだよ"
という衝撃的なフレーズから始まる。
cメロの"王様の耳元 女王の歌 生きる意味なんてそれだけでいいのに"
というフレーズからは御伽話を感じさせ、それは空想に想いを馳せるようでもある。
Co.starとピリオドで分けられているのは"star"つまり、星という意味もあるのかもしれない。
⑤大陸
ここだけが唯一の安心で
僕自身が僕の恩人で
激しいロックサウンドから一転、優しく穏やかなミディアムテンポの一曲。アルバム唯一の漢字表記のタイトル。
tacicaの音楽は文学的などと称されるが、まさしくそれが分かるかのような歌詞。正直歌詞の意味を噛み砕けていないが、孤独感や虚無感といった憂鬱な要素が漂う。ただ、また朝が迎えに来ると言う歌詞からは、また明日がやってくるというほんの少しの光が見える。(あるいは絶望なのかもしれないが)
吠えるの、という部分はまさしく吠えるような猪狩さんの歌声が響く。
⑥Empty Dumpty
若しかしたらだけで今日も
嘘みたいに笑いながら
ドラムから始まり、随所にその力強く大きく無骨な音が響き渡る。しかし、鏡の国のアリスに出てくる卵男のHumpty Dumptyをもじったかのような可愛らしいタイトル。しかも始まりが
"遠足の帰り道からもう泣かなかった"
という妙に子供らしいような歌詞にギャップを感じる。また卵を想起させるような言葉が並べられているが内容は哲学的にも思える。卵を割らなくては中身は分からない。そしてHumpty Dumptyには覆水盆に返らずという意味も持つ。割ってしまったが最期、元には戻らない。
空っぽの中身のない卵にはなにがあるのだろうか。
ちなみにDump(s)には憂鬱という意味もあるらしい。
⑦bearfoot
白旗を振りたいけど
左手で右手押さえてでも
生き抜いていく
"ヘイヘイどうだい? 旅の途中" というフレーズから始まる幕間の曲。
疾走感あるサウンドで1分19秒をあっという間に駆け抜けていく。 一曲目のbarefootとは対になっており、こちらはアコースティックではなくエレキ。リズム隊も増え、サビではコーラスもあり。
"観たことのない景色を観たくて走りだした"
主人公が道中で仲間を見つけて今までの苦しい道のりとこれからの決して楽ではない道のりを演奏しているように思える。
⑧From the Gekoo
晩年僕は開花して
それの行き着く先は大団円
こちらのフレーズから始まる楽曲。人生にいつ花を開くのかなんて誰にも分からない。それこそ老いてから大成するなんてことだってあるかもしれない。終わりよければ全て良しなんて言葉があるように。そしてただ少しの寂しさがこの歌には詰まっている。
サビのフレーズといい、Co.starにも書いたがどこか御伽話を思わせる。
イントロのメロディは月明かりが照らす夜道のような情景を感じさせる。それにしてもどうしてこうも「夜」と「月」とtacicaは合うのだろうか。
⑨Fool's Gold
生活には波風立ってて欲しくないのに
あれもないこれもないと嘆いている
特徴的なギターとベースのメロディが際立つこの楽曲。流れるように、それこそ船に乗っているかのように曲が進行していく。
タイトルは和訳すれば黄鉄鉱。その色形から金と勘違いされやすいために愚者の金という呼び名がついたという。また転じて見かけ倒しのものという意味もある。
見掛け倒しの金だと分かってもそれを求める人はいる。悲しいことも愛おしく、悔しいことを誇らしいとさえ思えるようなそんな日々がきっといつしか訪れる。
ラストサビ前の輪唱のように響く声は特に聴きどころ。
⑩Mr.
孤独なんて やがて来る
その日までの遊び
色々挑戦的な楽曲。Mr.という言葉の連発から様々なミックスがなされた猪狩さんの声、そして最後はオーケストラのような荘厳的な雰囲気が漂うような不思議な楽曲。
音楽家という歌詞やイメージロゴが蓄音機などから猪狩さんの曲作りへの姿勢が表れている楽曲なのかもしれない。
上にあげた歌詞のやがて来るその日とは恐らく死のことだろう。孤独だと思っているのだってそれは生きている証なのかもしれない。死んでしまうと孤独さえもなくなってしまうのかもしれない。生きているからこそ分かることなのかもしれない。
11 DAN
残り全部の命を使え
ラストを飾るのに相応しい壮大なサウンドと歌詞。ライブでも最後に演奏されることが多い曲。
タイトルのDANはアーティストのダニエルジョンストンから。
猪狩さんの息遣いや小西さんの重厚なベース、坂井さんの力のあるドラム。バンドの音楽が生々しく、全生命力を使ったかのような演奏が耳に届く。そして力強い歌詞は心を掻き立てられる。
単純な応援ソングとはまた違う。
日々を生きることはつまり、死に向かっていることと同義だと思う。命を削りながら生きている。そんな文字通りに必死になって生き抜いていく。
そうしたら出来ないことなんてないのかもしれない。
おわりに
リリースから10年以上経っているにも関わらず、色褪せない名曲たち。良い曲はいつ聴いても良い曲だし、年月を経ると何か違った意味合いを感じることもできる。
この長い年月を経た曲たちを今のtacicaで演奏されるというのはまた新しい発見にもつながるかもしれない。