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手賀沼の藤姫伝説
東京大学情報基盤センターの最近のスパコンには、Reedbush、Oakforest、Oakbridgeなど、植物にちなんだ名前が付けられてきました。2021年から運用している最新機は、藤(wisteria)のツタが絡み合う様子を計算ノード間のネットワークに見立てて、Wisteria/BDEC-01と名づけられました。また、このスパコンが設置されている東大柏IIキャンパスからほど近い手賀沼に伝わる「藤姫伝説」にもちなんだとされます。
そこで、ここでは、手賀沼の湖畔に置かれた石碑を巡りながら、藤姫伝説についてご紹介してゆきたいと思います。
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手賀沼について
千葉県柏市と我孫子市(と白井市と印西市)にまたがる手賀沼は、常磐線の北柏駅や我孫子駅にも近く、住宅地がすぐ近くまで広がっているのですが、大変風光明媚なところで、湖畔にはぐるりとサイクリングロードや遊歩道、公園などが整備され、地域住民の憩いの場所ともなっています。
手賀沼の柏市側の湖畔、手賀沼緑道の柏ふるさと公園から大津川の河口にかけて、手賀沼に伝わる藤姫伝説の石碑が点在しています。これを順番に見てゆきましょう。なお、所々に挿入しているイラストは、最近話題の画像生成AI、StableDiffusionに描いてもらいました。
藤姫伝説(其の壱)
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むかし、手賀沼のほとりに我孫子五郎の館があり、ここに藤姫というそれはそれは美しい姫がいました。沼の反対側に戸張彈正の館がありその息子の一人に若狭之介というりりしい若者がいて、両方の親が将来は一緒にしようと決めた仲でした。だれもがうらやむそんな二人を藤姫のまま母だけがよろこばずに強くきらっていました。
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美しい姫とりりしい若者、そして継母という、物語のお約束の面子が揃って登場しました。そして、いきなり波乱の予感がただよっています…
藤姫伝説(其の弐)
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二人の仲のよいことをきらっていた藤姫のまま母は若狭之介が藤姫に会いにやってくる道に待ちぶせをしてとうとう殺してしまいました。その亡きがらを沼に捨てさせて、藤姫に「若狭之介の亡きがらを沼で見たものがいるそうだよ」と耳うちすると「せめて亡きがらなりとこの手でお墓に入れてさしあげたい」と一も二もなく探しにゆくことにしました。
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おーっといきなり若者を殺してしまう早い展開です。継母、若狭之助の親兄弟によく返り討ちに合わなかったですねえ。
藤姫伝説(其の参)
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「よくないことが起きそうだ」と心配する姫のお付き人たちの止めるのを振切って、ただ一人若狭之介の亡きがらが浮いていたとまま母が教えたあたりに、舟をこぎだしたところ恐ろしいまま母は、ひそかに舟の底に穴を開けさせておいたため姫の舟は沼の一番深いところで沈み始めました。助けを求める姫にまま母は「おろかな姫よ死ぬがいい」と笑いました。
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継母、情け容赦ないです。話がサクサク進んでゆきます。
藤姫伝説(其の四)
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うたがうことを知らなかった姫も、これですべてがわかり、「おぼえているがいい」と叫んで沼に舟とともにきえていきました心にけがれのない姫だけにだまされて殺されたことにそのうらみも大きく、姫の体は沼の底に着くと、みるまに三丈余りもある大蛇の姿に変化し水柱とともに水面に浮かび上がるとまだ岸にいたまま母を一飲みで殺してしまいました。
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おぉぉぉ、藤姫の恨み、つよいです。
藤姫伝説(其の伍)
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姫のうらみから生まれた大蛇が、沼に近づく者すべてを沼に引き込んでしまうことに漁師たちが困っていると、旅の山伏が通りかかって「大蛇ののろいをときましょう」といって祈ったところ、大蛇が沼から現れお経を投げつけると、のたうちながら沼に逃げ込んでいきました。山伏は藤姫ののろいを封ずるために柱を一本沼に向ってなげこみました。
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旅の山伏さま、どうか漁師さんたちのために藤姫の呪いを鎮めてください。
藤姫伝説(其の六)
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ふしぎなことに、水しぶきをあげた柱が一瞬のうちに大きなウナギに変わってしまいました。大ウナギはひとはねすると沼の底深くもぐって、それから大蛇はもちろん藤姫のおん念は一切現れなくなり。漁師たちは安心して魚をとることができるようになりました。それからは、手賀沼の大ウナギは守り神なので捕らえたり追ったりしてはなんねいぞ、と言い伝えてきました
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藤姫の呪いはおさまり、めでたしめでたし、なのでしょうか??藤姫も、若狭之介も、かわいそうなままだし、漁師さんたちも迷惑かけられただけの、悲しいお話でした。
手賀沼は、江戸時代から昭和の初め頃にかけてはうなぎの名産地だったそうで、周辺には今でもうなぎ屋さんをたくさん見つけることができます。手賀沼の主とも言える大うなぎを大切にする、というのはこういったところからも来ているのでしょう。しかし、住宅地の急発展による水質汚染などで漁獲量は急減してしまいました。さらに原発事故の影響もあり、2022年10月現在、手賀沼産のうなぎは放射能検査の結果は基準値以下ですが、出荷自粛が続いていて食べることができないそうです。藤姫さんも、きっとまた悲しんでいるのかもしれません。
番外編(忙しい人向け)
手賀沼の遊歩道には、ここまでに紹介した6つの石碑のほかに、ダイジェスト版とも言える石碑も設置されています。
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手賀沼の主(むかし話「藤姫」より)
むかし、藤姫という美しい姫がだまし討ちにあい、その怨念から大蛇が生まれ沼に近づく人をおそっていました。
ある日、旅の山伏が、祈祷を行って大蛇ののろいを鎮め、祈祷に使った柱を沼へ投げ込むと、柱は水しぶきをあげて大きなウナギに変わりました。
その後、藤姫の怨念は一切現れず、この大ウナギは沼の主として語り継がれてきました。
ー千葉県ー
千葉県公認の昔話のようです。手賀沼の大うなぎ、まだいらっしゃるのでしょうか。ぜひぜひ大切にしてゆきたいと思いました。