【カシミヤの『染め』の話③】色で違う微妙な風合い
微妙な肌触り
カシミヤ山羊の色は個体差があり、白、グレイ、ブラウンなどの色のカシミヤがいます。これらの毛を生成りのまま使うこともありますがほとんどは何らかの色に染めることになります。
羊毛のように色を抜けられれば都合がいいのですが、カシミヤの毛は繊細すぎて色を抜いて染色をすると傷んで風合いが落ちてしまいます。白やサックス、ピンクなどの薄い色に使えるのはホワイトカシミアの毛だけを使用します。
カシミヤはまた繊細ゆえに色によって微妙な風合いの違いが生じます。ほとんどの人が気づかないぐらいですが、染の時間が短い明度の高い色に比べて、明度の低い濃い色は微妙に堅く感じます。
明度の低い色はブラウンやグレイの原毛から染めますが、濃い色ほど長時間煮つめることになって黒や紺など明度の低い色は淡い色に比べると柔らかさに微妙な差が出てしまいます。色落ちがしないように堅牢度を高くすると風合いが落ちるというように堅牢度と風合いは相反します。
風合いが落ちないように染める為に、日本の紡績会社は世界に先駆けて低温で染めるなどの特殊な方法をあみ出しています。この様な高度な技術をもってしてもいまだに色によって微妙に違いがでるのです。それを意識しながら最高の技術を持った染めの匠たちが日々努力しています。
全く同じカシミヤ原料の商品でも、色の違いによって微妙に風合いの違いが出るのも繊細なカシミヤならではと言えます。