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クリャービン演出『三人姉妹』@東京芸術劇場、日本側の受け入れ姿勢についての苦言
クラースヌイ・ファーケル劇場 クリャービン演出『三人姉妹』@東京芸術劇場、日本側の受け入れ姿勢についての苦言
クリャービン演出に対する批評と、東京芸術劇場の上演への対応を一緒に書きたくないので、まず芸術劇場の上演に関する問題についてだけこちらに書きます。
野田さんがこの作品を招聘してくれたことには感謝しかないのですが、あまりにも運営に問題があったので指摘します。
まず本来、この作品は舞台と最前列の客席が同じ高さから始まり次第に上へと上がっていく劇場で上演されているため、ある程度は上から見ることを想定している作品です。しかし、東京芸術劇場プレイハウスは1階席の前部分が劇場の舞台より低い位置にある作りのため、その部分からは舞台装置や舞台そのものが邪魔になり、見えない部分が数多くありました。特に第2幕、第3幕は演技エリアが奥になることが多いため、致命的でした。
前方両サイドに座った人はベンチや大きな食卓があり、視界が遮られてしまっていましたし、せっかく前列のチケットを購入したのに、見えない、もしくは後から移動を勧められるというのは、劇場側の制作の責任だと思います。また、両サイドだけでなく舞台より低い席は見にくいことを周知すべきだったのではないでしょうか? これも初日で制作側が確認して対策を取ろうと思えば取れたことだと思います。
今回は幸か不幸か、客席に空きがあったので後ろにずれることに問題はありませんでしたが、埋まっていた場合はどうしたのでしょうか? 2日目以降は左右の前列のお客さんへの案内があり、係員の方たちは対応していたと思いますが、係員に余計な負担をかけたことも間違いありません。観客に対してはもちろん、あるべき姿で見せることもできないので、招待する側にも極めて失礼な行為です。
2つ目の問題点は字幕です。チェーホフの翻訳者が明記されないことは多々あるのですが、字幕を使う作品で翻訳が明記されなかったのは、輪をかけて酷いと言えます。
さらに使用されたのは著作権が切れた神西清訳です。クリャービンが現代に移し替えた作品を、なぜ私たちは50年の著作権保護期間を過ぎた古い日本語で見なければならないのでしょうか? しかも、いくつかの打ち間違い、上演用に変更されている英語との不対応、誤字などがありました。
私の姓は三重なんです。と男爵の台詞に出たときは、なんで男爵が三重(ミエ)なんだよと突っ込んでしまいました。三重(さんじゅう)のこととはすぐにわかりますが、次々と変わる字幕への配慮などはなく、他にもツッコミどころは数え切れぬほどでした。
また、著作権が切れている=明記しなくてよい、ということでは決してありません。誰かの仕事を利用するのであれば、その仕事に対して敬意を払うのは当然のことです。3日目の最終日にようやく神西清訳よりと1枚パワポのスライドが増えましたが、本来はチラシやパンフレットにも明記されておくべきです。東京芸術劇場クラスがこういうことをすると心底ガッカリします。
最後はこの作品の扱いについてです。これはこの作品を招聘する際のある種の戦略だったのかもしれませんが、この作品を手話の作品として宣伝したのは明らかに誤解を招く行為だと思います。
見た人ならば分かりますが、この作品は音が非常に大きな意味を持つ演出になっています。むしろ聞こえなければ分からないことの方が多い作品です。
今回3日間にわたって多くの聴覚障害を持たれている方が観劇に来ていましたが、やはり前列のチケットを購入した方が多く、舞台も字幕も見にくい席であの作品を見たとしたら、かなりの部分が取りこぼされてしまったと思います。それでも感動を誘うほどの演出でしたが、今回の作品を手話の演劇として紹介したのは、私は何かを犯している気がしてなりません。
以上、客席について、字幕について、宣伝について
東京芸術劇場の対応について3つの問題点を指摘しました。
あ、今度チェーホフの作品呼ぶときは字幕作るのでぜひとも連絡ください。
写真は以下より拝借 本来はこういった形で客席が組まれる舞台です。
http://novosibirsk.bezformata.com/listnews/evrope-spektakl-tri-sestri/72653012/