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【自主ゼミ】産学官共創デリジェントゼミ第6回 2024/05/20

2024年Sセメスターから始まる東京大学教養学部自治会公認の自主ゼミ「産学官共創デリジェントゼミ〜将来の進路、人脈、価値観を広げるためのアクティブラーニング〜」の第6回を5/20に実施いたしました!
デリゼミは、「社会課題解決に資する人材・リーダーの育成」を理念に、「どの分野・どの職種でも活かすことができる能力である、課題解決能力を学び・実践する」ゼミです。
各分野のエキスパートの方がご講演してくださいますが、少しでも多くの東大生にキャリアの選択肢をが増える契機になったらという思いから運営されています!
初回ガイダンスに関する記事がnoteにあがっていますので、どんなゼミか詳しく知りたい方は是非ご覧ください!

今回はビジネスキャリアパートの最終回として、一般社団法人イノベーションハブの理事をされている井野孝紀先生が、ビジネスにおける重要な考え方を伝授してくださいました。
井野孝紀先生は東大法学部をご卒業後、NTTデータにご就職されたのち、18社もの会社を設立された起業のエキスパートです。


「逆説のスタートアップ思考」

まずは「逆説のスタートアップ思考」という書籍を参考に、スタートアップにおいて必要な考え方を学びました。

スタートアップとは?


起業を目指す方はまずはスタートアップとは何かを理解しましょう。スタートアップの定義は以下のようなものです。

スタートアップ=短期間で急成長を目指す一時的な組織体(ビジネスモデルを模索しながら成長)
≠スモールビジネス=着実な成長を目指す組織体(ビジネスモデルは既に確立している)
・市場
・サービスが市場成長に耐える拡張性を持つ

それではスタートアップとは何かを理解した上で、スタートアップを立ち上げるなら心得ておかなければならないことを考えましょう。

スタートアップをする上で、気をつけなければならないことのひとつは、「狙うはブルーオーシャ」ンということです。起業するとなるとみんなが既にやっている事業に手を出したくなりますが、そうした市場はすでにレッドオーシャンで、大体起業するには遅すぎます。
短期間での成長を目指すスタートアップにとっては不条理の方が合理的なのです。難しいアイディアの方が支援も受けやすく,結果的には簡単になるでしょう。
悪いように見えて実はいいアイディア!という、みんなが気づいていない「実は」を見つけるのが大事なんだそうです。

アイデアのチェックリスト
そんな時に役立つのが,次のアイディアのチェックリストです!
① 悪いように見えて、実は良いアイデアですか(サム・アルトマン)
②賛成する人のほとんどいない、自分だけが知っている大切な真実を前提としたアイデアですか(ピーター・ティール)
③自分しか知らない秘密を使ったアイデアですか(クリス・ディクソン)
④週末に頭の良い人達がやっているようなアイデアですか(クリス・ディクソン)
⑤「私はどんな問題を解決すべきなのか」を考える代わりに、「誰かが解決してくれるなら、どんな問題を片付けて欲しい?」と考えてみましたか(ポール・グレアム)
⑥誰も築いていない、価値ある企業はどんな企業でしょうか?(ピーター・ティール)
スタートアップにとっての価値は、とにかく自分がパイオニアであることです。

またそんなスタートアップには、次のような戦略があります!

戦略:小さな市場を独占せよ

スタートアップはまず「独占」を狙いましょう。スタートアップには「小さな市場」から始めて「素早く」独占し、その状態を「長く」維持する仕組みが必要です。最初から大きな市場を狙おうとすると大体失敗します。なぜなら、大きな市場では大企業と戦うことになるからです。大企業が見向きもしてない小さな市場を、素早く独占することが鉄則だそうです。
(あの誰もが知る大企業であるAmazonも最初は古本・本のECサイトからのスタートでした)
また、多数の好きよりも少数から本当に愛される商品を作ることも大切です!計画と開発に時間をかけすぎるのではなく、ローンチは完璧すぎなくてもよいのでとにかく早くサービスを出して市場のFBを受けましょう!(いかにお金をかけず需要をテストするかが大事)
そしてスタートアップの初期に大切なもう一つのことがあります。初期には「スケールしないこと」をすることです。会社が小さいときに、会社の実力以上の事業を行うと破綻します。最初は質の良いサービスを保証できる規模のことを行いましょう。それが急成長する時の支えになるのです。

井野先生は前半において、スタートアップを立ち上げる際に意識しておくことを教えてくださいました。確かに最初に事業を行う際に、大きなマーケットに参入したくなりますが、自分たちの武器を持つことが大切であることに気付かされるようなお話しでした。これは起業に限らず自分のバリューを出す際には必要な考え方だと思います。自分も胸に刻んでおきます。
起業を実際にされていた方からのアドバイスは非常にありがたかったです。起業家志望の方はたくさんいらっしゃるかと思うので、より細かく書いてみました…!

ジョブ理論

スタートアップに必要な考え方を知った上で、次は「ジョブ」についてのお話です!スタートアップが失敗する最たる事例として、「市場に必要とされていない」というものがあります。
「ジョブ理論」という書籍を参考に、顧客の必要とはどういうものかについて学んでみましょう。
ジョブ理論とは
「ジョブ」=「顧客が片付けなければいけないこと」(妻から頼まれて、庭の手入れをしなければならない、など)
「雇用」=専門の庭師を雇用
「解雇」=庭仕事が苦手な夫は解雇
と定義し,
「どんな『ジョブ』を片付けたくて、あなたはその商品・サービスを『雇用』するのか?」
と考える考え方のことです。
ジョブとニーズは混同しがちですが以下のような違いがあります。
ニーズ:「健康でありたい」「何か食べたい」というように漠然としている。
解決方法が様々。
ジョブ:顧客の具体的で切実な状況で生まれる。

ジョブ理論で考えることで、ライバルは同じ市場にいる競合他社だけではなくなるのです!
スタートアップはニーズではなくジョブにコミットするべきで、願望ではなく、顧客の必要を探りましょう。そうすることで、真の競合が見えてくるとのことです。
ジョブを見つける5つのポイントは以下のようなものです。
①身近な生活の中
②無消費:特定のジョブそのものにいまだに解決策が提供されていない顧客は、何も消費しない。
解決策がこの世にまだ存在していない時、当然顧客はそれにお金を出せない
それに対する解決策を自分達で作れるのであれば、それは大きなチャンスになりうる
(年金暮らしでも海外旅行に頻繁に行きたい→LCC、Airbnb)
③その場しのぎの対応:その解決策に満足していない状態の顧客
(車の価格情報の一覧を見たいが、無いため複数のサイトを検索して安い見積もりを探す→見積もり一括サイト)
④できれば避けたいこと:面倒なことを避けたい顧客
(いちいちログインするのは面倒→FaceID)
⑤意外な使われ方
(本来は調理用の重曹→掃除など企業が想定していない用途)

確かに顧客の立場からするとニーズにフォーカスしてしまうので、ジョブとニーズの違いは目から鱗でした…本当に継続的にサービスが利用されるのか?を考えて、ぜひジョブに目を向けてみましょう!

リボンモデル

続いては「リクルートすごい構"創"力」から、リクルートの成長を支えるリボンモデルについて学びました。
リクルートは数多くの新規事業を生み、スケールアップし、市場を作り上げた後も圧倒的な優位性で高シェア、高収益、長期的な成長を保つという、強い会社です。そんなリクルートでは「不の発見」、「リボンモデル」、「価値マネ」、「ぐるぐる図」、「型化」など独特な言葉が飛び交っています…
そんなリクルートは営業などに力を入れているのかと思われがちですが、リクルートの本当の強さは、確立された手法を緻密かつシステマティックに、
そして愚直に、しつこく実行している仕組みやフレームワーク=「構え」にあります。

リクルートのリボンモデルとは、世の中の「不」を発見を起点にリボンモデルを描き、リボンの両側の消費者や事業者・企業などを「集め」、「動かし」、「結ぶ」というリボンモデルでビジネスを設計する、というものです。
世の中の全てのことは、このリボンモデルに集約します。
このリボンモデルには3つのステージがあります。

ステージ①「不」を発見し、事業性を見極める

「不」とはニーズに似ていますが、これも厳密にいうとニーズとは異なります。リクルートの定義する「不」には以下の条件があります。
・誰もが目をつけていなかったもの​
・既存の産業構造を変えるほどの大きな可能性を秘めているもの
・収益につながるもの

ステージ②勝ち筋を見つける

勝ち筋を見つけることは経営において大変重要です!勝ち筋を見つけるためには以下のようなメソッドがあります…!

1.マネタイズ設計
まずマネタイズを設計しましょう!その際、以下を確認しましょう
・クライアントが明確であること
・「お財布」までが見えていること
・利益を生むオペレーションモデルが確立できていること
2.価値KPI: ゴールである最終的な目標値と最も強い因果関係があるのは何かを探っていく
KPIの設定は本当に重要です。KPIを改善するだけで利益が爆増するのは上場企業ですらあることです。どの指標を追い求めるのか?をまずは整理しましょう!
3.ぐるぐる図
現場と経営層を繋ぐ、縦の情報の行き来を「縦ぐるぐる図を回す」と呼びます!
(異なる役割の社員が一丸となって横方向にも情報をやりとりし、洞察を重ねていく「横ぐるぐる」もある)

ステージ③爆発的な拡大生産


ステージ②までを完遂したら生産を拡大させましょう、、!そのためには三つのメソッドがあります!
1.価値マネ
前のステージ2で発見した「価値KPI」を使ってPDSサイクルを回してマネジメントする。
2.型化とナレッジ共有
価値マネを実践するための基本的な行動を「型」に落とし込んで「型化」して広める。
3.小さなS字を積み重ねる
現場の情報からいち早く、成長の原則を捉え、次の一手へ進める。

リボンモデルのように、需要からゼロイチの価値を生み出すのとは起業において大変重要だとつくづく思いました…最後のパートはより実践的な起業ノウハウを学べ、教室からまたひとり起業家が誕生するのでは?という期待が膨らみました!

ケーススタディではスタディサプリの「不」についてグループごとに考えてみました!スタディサプリは次のように,しっかりと「不」の3条件を満たしています!

・誰もが目をつけていなかったものか​
→実際に調査をしてみるまでは、多くの高校生が「受験勉強の機会がない」と悩んでいることに気づかなかった=塾の費用が高くて通えない、近くに塾がない
・既存の産業構造を変えるほどの大きな可能性を秘めているものか​
→​学時間や場所を選ばずに学習ができ、従来の塾や予備校に依存しなくて良い
→多様な学習コンテンツを提供することで、受験勉強の質や効率が上がった。
・収益につながるものか​
→月額980円なので、塾に通っているようなハイエンド層以外のローエンド層も払うことができる。コンテンツの拡充に伴い、ハイエンド層も参入。

質疑応答では井野先生の起業の体験談について教えていただきました!

実際に連続起業された方から起業についての知識や考え方をアドバイスいただけるのは本当に貴重な経験でした。お忙しい中ご講演くださった井野先生、本当にありがとうございました!

ゼミは毎週月曜日6限に、駒場キャンパス1号館159教室にて行われます!

文理や学年、希望する進路問わずどんな方でも大歓迎です!第一線で活躍する著名な方々の話を聴き、将来の進路を広げてみませんか?ぜひ参加をお待ちしています。

東京大学Diligentの公式HPはこちらです!弊団体のゼミ以外の活動も見てみたいと思っていただけた方は、ぜひチェックしてみてくださいね!

文責:河合奏楽

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