【⑩デリ】菱田(中井)裕子さんとの対談
【1】はじめに
⑦デリ・⑩デリ代表の髙橋です。
先日、東大の先輩である菱田裕子さん(旧姓、中井さん)と対談させていただきましたので、その内容と感想を共有させていただきます。
(1)「女子学生 活躍推進Diligent(通称⑩デリ)」とは?
(2)対談者:菱田裕子さんのご経歴
菱田さんは、2004年東京大学文科三類に入学、2008年文学部を卒業されており、現在文学部にいる私にとっては大先輩にあたります。菱田さんは在学中、学生団体「UT Girls-Link」の設立や、ミス東大グランプリ獲得など、学業以外にも対外活動を精力的にされてきた方です。東大卒業後はLVMH傘下のLVJグループ(株)に就職され、転職や結婚などを経た現在は、アメリカで子育てをしながら、個人事業主として人事やライターなどの副業をされています。
【2】対談内容
(1)東大女子が社会貢献できる居場所
学生団体「UT Girls-Link」は、「東大女子が、夢を叶える力を身につけ、社会貢献できる居場所を作りたい」という理念のもと、東大女子限定の学生団体として発足したそうで、弊団体・⑩デリの発足理念にも通ずるものがありました。
当時の活動内容としては、東大女子を対象としたメイク講座や、女子学生と女性卒業生との交流会を開催したり、東大女子のリアルな日常をブログ(東大ガールズの夢叶日記 by UT Girls-Link)や冊子での発信、ファッションショーの開催に取り組んだりしていたそうです。
このような活動には、東大女子へのアンコンシャス・バイアスを取り払う効果もあったのではないかと推測できます。知る機会がないからこそ勝手に蔓延しまっている、東大女子に対する社会からの偏見を払拭するためには、アウトリーチしていく発信相手の「広がり」、そして表面的に自分を飾る浅薄な言葉ではない、等身大に自分を語るリアルな言葉の「深み」という二つが必要だと私は思います。たとえば「東大女子は結婚できない(から、東大に合格しうる学力があっても東大受験・進学をさせない)」といったアンコンシャス・バイアスも、今いる東大女子が、自身の実体験を発信し、社会の認識を地道に上書きしていくことで、東大女子という存在を、より多くの人に、より身近に感じてもらう必要があると改めて感じました。
(2)今にも生きている二つの成長
菱田さんは、「UT Girls-Link」の発足・運営を通して、大きく二つの成長を感じているそうです。
一つ目は、「前例のないことにも踏み出す開拓者精神」。東大女子、ひいては社会全体が持っている漠然とした課題感や、言葉にならない悩みや不安に、言葉を与え、行動を起こすという「UT Girls-Link」での経験は、社会人になった今でも、新しいことを始める時の行動力に繋がっているそうです。
二つ目は、「物怖じせず、交流・交渉に挑める度胸」。「UT Girls-Link」では、ファッションショーを開催するための協賛集めのために企業の方々と話す機会も多かったため、自分の理念や熱意を相手に届けた経験は、コミュニケーションスキルとして今に生きていることが窺えました。
(3)人の心に温かみを添える社会貢献
卒業してからも常に挑戦してきた菱田さん。職場や商材など、自分の興味や生活に合わせて働き方を変えながらも、そのキャリア形成の軸は「関わった人の心が少しでも前向きになるような、ポジティブな影響を与える仕事を通して、社会に貢献する」というもので一貫していました。
身近な商材・言葉から顧客の一人一人に関わり、人の心に温かみを添えるという社会貢献によって自分自身も幸せを感じていらっしゃる姿がとても素敵だなと私は思いました。
(4)女子学生に伝えたい二つのこと
前述の通り、菱田さんは、現在アメリカで生活されています。日本に比べてアメリカで「女性であること、母親であること」がキャリア形成の障害にならないのは、「女性は家事をするべき」といった性別役割分担意識がないからであり、公的支援などの表層的な制度を整備するよりも、まずは社会全体にあるアンコンシャス・バイアスを根本的に改革すべきと仰っていました。その上で、菱田さんは、私たち女子学生に伝えておきたいこととして、以下の二点をお話しくださいました。
一つ目は、「〈キャリア形成✖️フェムリテラシー〉という2軸のもとで、数々のライフステージを念頭におきながら、キャリアを形成していく」です。もちろん、若い頃から仕事で信頼・キャリアを築くのも大事ですが、仕事と両立するのが難しい出産・育児ができる時間・体力は有限です。だからこそ、フェムリテラシーを深めること(例えば卵子を凍結しておくなどのテクノロジーを知っておく)、そして逆算しつつ柔軟に様々な選択肢を検討することが大事です。菱田さんも、「仕事のキャリアを積む」という観点では、出産・育児はキャリアを中断・両立しなければならなくなるけれども、「人生の経験を積む」という観点で、生活の豊かさを与えてくれるかけがえのない素晴らしいものだと話されていました。目の前のキャリアに目を奪われて、その尊い経験を見逃してしまうことは残念なことだと私も思います。
二つ目は、「海外経験をして自分・日本の現状への解析度を高める」です。女性が活躍できる場所や機会が比較的少ない日本での事例に囚われ、自分の可能性を狭めて「無意識のリミット」をかけてしまうよりも、広い世界にも目を向けて外国の先行事例を調べることで、自分のロールモデルが見つかったり、自分の力を遺憾無く発揮できる場所を開拓できたりすることもあるはずです。働く女性が増えてきたとはいえ、管理職に就く女性のロールモデルがまだまだ少ない日本の現状は、これからの女性たちの選択にも影響を与えてしまいます。海外にも視野を向け、自分の可能性に無意識のリミットをかけずに、納得感と自信を持って選択できるよう、多くのロールモデルを見て、選択肢の幅を広げておくことが大切だと思いました。
【3】私たちにできることーー居場所として、プラットフォームとして
私たちは⑩デリを、女性がいま何に困っていて何を変えたいのかという声なき声に言葉を与えるための「居場所」として。そして、分散している個々の小さな声を拾い、集め、それを社会に届く大きな声に変えて、ムーブメントを巻き起こすための「プラットフォーム」として位置付けていきたいと考えています。
「⑩デリ(女子学生活躍推進会)」は、「⑦デリ(世代間共創会)」にて交流祭を運営する中で見えてきた課題感から、東大女子学生の悩みやニーズにより寄り添うべく、立ち上げました。男女を問わない東大生を対象に、卒業生との双方向の交流を通して、選択肢を増やし、より納得感と自信を伴うキャリア形成に繋げてもらうべく立ち上げた「⑦デリ」でも、女子を取り巻く問題により密に向き合うべく立ち上げた「⑩デリ」でも、今回のようなクローズドな対話の場や、交流祭などの大規模なオープンな交流の場を通して、自分に何ができるか、自分は何をしたいのかをこれからも考えていきたいと思いました。
文責:髙橋聖奈