ドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied㉝
生のコンサートでは“今まさにここで生まれる音楽”を共有していただける喜びがあります。その時間を1曲1曲切り取って“今まさに”のひとかけらでもお届けできたら!とお送りするドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied…
33曲目もツェムリンスキー!…ひとかけら、届くかな?
ツェムリンスキーZemlinsky(1871‐1942)作曲
トスカーナ地方の民謡によるワルツの歌 Walzer Gesänge nach toskanischen Volksliedern Op.6より
青い小さな星よBlaues Sternlein
ソプラノ 川田亜希子 ピアノ 松井 理恵
青い小さな星よ、黙っていてね
秘密を洩らさないでね
みんなに知らせることはないのよ
私たちの静かな心の結びつきを
他の人は苦しませておけばいい
みんな言いたいことを言えばいい
私たちの心は満ち足りていて
私たちは喜んで静かにしていよう
詩はイタリアのトスカーナ地方の民謡をドイツの歴史学者フェルディナンド・グレゴロヴィウスFerdinand Gregorovius(1821-1891)が独訳したもの。
星屑のかけらのような小さな小さな歌曲です。両想いの恋の始まりを歌っています。揺れ動く前奏は2人をとりまく幸せな空気…。その空気に守られて眠りにつく二人を真上から星が見守っています。歌声部は星への呼びかけから始まり、控えめなフレーズでお願いごとを歌います。ピアノパートはキラキラと歌声部に纏わりついて響き、星とのやり取りを音化しています。中盤の短調の場面では幸せであるが故の痛みを歌っていて、演奏していても胸がキュンッとなる音運びです。胸の想いはピアノの上行形とともに高鳴り、頂点に達したところで一瞬の静寂が訪れます。その後ゆっくりと最初のフレーズが再び響き、今度こそ二人は安心して眠りにつきます。何の解説も必要のない、ただただ幸せを歌った平和な曲です。
両想いの恋の始まりを全く逆に歌った曲があります。R.シュトラウスの「どうやって私たちは秘密にしておけるでしょうWir beiden Wie sollten wir geheim sie halten Op.19-4 」という曲です。
思いが通じ合った喜びを爆発させて歌われます。「世界中の人たちに知ってもらおうよ、私たち、恋人同士になっのよ!って。私たちの恋を祝福してもらおう!」
恋の始まり… 皆さんはどちらのタイプですか?