ドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied⑪
生のコンサートでは“今まさにここで生まれる音楽”を共有していただける喜びがあります。その時間を1曲1曲切り取って“今まさに”のひとかけらでもお届けできたら!とお送りするドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied…
11曲目はヴォルフのイタリア歌曲集の中から♪ …ひとかけら、届くかな?
ヴォルフ Wolf:恋人が食事に招いてくれたMein Liebster hat zu Tische mich geladen
ソプラノ 川田亜希子 ピアノ 松井 理恵
恋人が食事に招いてくれたの
私を招く家なんて持ってないくせに
お料理するかまどや薪もなく
壺なんて二つに割れちゃってるのよ
樽にはワインはないし
彼ったらグラスを使ったためしがないの
テーブルは狭いし、テーブルクロスなんて酷いの
パンはカチコチだし、ナイフの切れないことといったら!
「ドイツ歌曲の楽しみFreude am Lied⑦&⑧&⑨」と同じく、詩はドイツの詩人パウル・ハイゼ Paul Heyse(1830-1914)独訳のイタリアの世俗詩。
「恋人が食事に招いてくれたんだけどぉ、こんなだったのよー」「えー、マジそれウケるぅ」といったケラケラと笑い合う女の子たちの会話が浮かんできませんか?
ドイツ歌曲というとシューベルト、シューマン、ブラームス…。ヴォルフも代表的な存在なのですが、でもこの前奏!ドイツ歌曲が始まるようにはきこえませんよね。ある意味、「ドイツ歌曲」という枠なんて関係なく、純粋に詩を音にしたらこうなりましたが何か?といった、ヴォルフのスケールの大きさを感じずにいられない曲、そしてイタリア歌曲集です。(よろしければ「ドイツ歌曲の楽しみFreude am Lied⑦&⑧&⑨&⑩」も覗いていただけると嬉しいです♪)
前奏は「ねえねえ、ちょっと聞いてよ」と女友達を呼び寄せるようなモチーフから始まり、“ニヤリ”と笑って「じゃあ、話すわよ」のアルペジオが印象的。歌が始まると前奏のモチーフは「それでそれで?」という合いの手に変わり、時にはケラケラ響く笑い声になり、歌声部と楽しい掛け合いを繰り広げます。最後は「まったくひどいでしょう?」と少々ふくれて締めくくるのですが、結局はのろけているのがバレバレですよね。
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ヴォルフについてはドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied⑦の最後の部分を参照にしてください。作曲家について知ることは、曲の“生まれ”を知る一つの手段。“生まれ”を知ると、その曲との距離がぐんっと縮まって仲良くなれるのです。
https://note.com/utauakiko/n/n6d24566c60d1