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ドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied④

生のコンサートでは“今まさにここで生まれる音楽”を共有していただける喜びがあります。その時間を1曲1曲切り取って“今まさに”のひとかけらでもお届けできたら!とお送りするドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied…

4曲目もシューマンの歌曲集『ミルテの花』から♪…ひとかけら、届くかな?

R.シューマン R.Schumann:遠く、遠く Weit, weit Op.25-20
               ソプラノ 川田亜希子 ピアノ 松井 理恵 

どうやって明るく元気でいられるというの、
どう上手く、この苦悩をごまかせるというの?
私を愛してくれる素敵な若者は
あの山のむこうにいるのに、遠く、遠く!

冬の寒さが何だというの、
外が嵐であろうと雪が降ろうと、それが何だというの?
私の目には涙が光っている、
あの人のことを思って、遠く、遠く!

彼は私に手袋をくれたの、
綺麗なハンカチ、絹の服を。
でも、それを着て見せたい彼は
あの山のむこうにいるの、遠く、遠く!


スコットランドの国民的詩人バーンズRobert Burns (1759-1796) の詩をドイツの詩人ゲルハルト Wilhelm Gerhard(1780-1858)が独訳したもの。険しい山々や嵐に雪…。ドイツのそれではない厳しさや冷たさが行間に滲む詩。
歌曲集『ミルテの花』全26曲中8曲はバーンズの詩。

 重く胸にのしかかるような厚みのあるピアノのメロディが、乙女の嘆きの深さを物語っています。歌声部は極端な跳躍から始まり、半ばヒステリックな言葉運びを上手くメロディに乗せています。悲しみに暮れる…ではなく、キレる乙女の姿が浮かんでくる…。でもやっぱり可哀想な曲です。
 この曲のように、内容の変化にもかかわらず、どの節も同じメロディで歌われる有節歌曲は、ともすると工夫の押し売り(!)になりがちですが、詩が導く感情に添って歌うだけで十分なような気が私はします。勿論くっきりしたEmpfindung(感覚)を持つことが大前提なのですが…

 シューマンと歌曲集『ミルテの花』については前回のドイツ歌曲の楽しみ Freude am Lied③をご覧いただけたらと思います。曲の“生まれ”を知ると不思議なことに、ぐんっと音楽に奥行きが出て、身近に親密に響いてきます。これもリートの“たまらない”ところ…“ドイツ歌曲の楽しみFreude am Lied”の一つですね。

...4回目の投稿ですが、まだまだ慣れず、1つ1つドキドキしながらご案内しています。演奏も生のコンサートさながらの「今、まさにここで生まれる音楽」感満載! どうぞ寛容な♡で「ライブっぽいぞ」とお聴きいただけたら幸いです。

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