曲紹介『いないいないばあ』
オリジナル曲の『いないいないばあ』について紹介します。
おおまかな話
『虹を描く』の紹介でも書きましたが、この曲は2021年に、約5年ぶりにできた曲です。
路上ライブの後、ギターをつま弾いていたときにふとサビのメロディが浮かんだんですね。
久々にちゃんと作りきろうかな、今日のうちにできるだけ進めちゃおう、というかこれ良い曲じゃない?
とか思いながら勢いで完成させました。5/29着手→6/2完成。
体調不良真っ只中、音楽の面白さを再認識し始めた頃だったので、僕は本当にこの曲に救われたと思っています。
この曲を作りきろうと決めた理由の一つに、8ビートの明るい曲というのもありました。
僕はPopsにおいて8ビートの明るい(&跳ねない)曲って最強かつ作るのがめちゃめちゃムズイと思っています。いや、適当な曲はいくらでも作れるんだけど。
リズムでフックを作れない分、純粋なメロディ勝負になる。けど世の中8ビートの曲は溢れてるのですぐに埋もれる、つまらんなーってなりやすい(と僕は思ってる)。
実のところこの曲は軽く跳ねてるので完全には当てはまらないんだけど、それでも僕にとっては貴重な8ビートなので、やるゾとなったワケですね。
作る話
詞の話
僕はメロディが思いついたとき、なるべく仮の詞を入れるようにしています。
で、最初にサビ冒頭のフレーズができたとき、パッと頭に浮かんだ仮詞が「ねぇ君はどんな顔を」でした。
君の顔を知りたいってどういう状況やねんなんですが、顔を知りたいってことは顔を隠しているということです。そこから「いないいないばあ」という言葉が浮かびました。
言葉として遊び心があるし(遊びだし)、逆に曲のテーマをちゃんとすればギャップを出すこともできます。
というところから、まず曲名を「いないいないばあ」にしよう、と決めました。
そこから、いないいないばあとは?と考え始めます。
「"いないいないばあ"は顔を隠して、かけ声でお互いの顔を見せる遊び」
「実際の生活で物理的に顔を隠すことはそんなにない。でも誰だって何かしら"自分自身"を隠してるものだよな」
「自分を見せるのが1番怖いのって、1番大切な人だったりするよな」
「いないいないばあは互いに向き合ってないと出来ない」
ならこの曲は、
「お互いに自分をさらけ出せない2人が、向き合って、勇気を出して素顔を見せ合う」
という物語にしたいと思いました。
お互いの素顔に不安を持ちながらも、心のどこかでは「僕らは似ている」と分かっている。そんな気持ちを"せーの!"という前向きさと、"答えあわせ"というフレーズに込めました。
答えあわせが⚪︎ってことは、お互いの素顔が同じだってことだから。
さてAメロです。
"自分をさらけ出せない2人"を極端に言うと、相当ひねくれた奴らってことです。笑
それをサラッと表現したい。状況説明を簡単に伝えるには比喩が1番です。
「本来シンプルなのに、失敗するとすぐ絡まっちゃうもの」
「自信がない自分を客観的に評価してるから、自分を人間じゃなくてモノのように表現してしまう」
また、サビの詞ができた時点でもう確定だったんですがこの曲には"いないいないばあ"というフレーズは登場しない。
だってサビに入れられなかったんだもん。
なので、いないいないばあに繋がる表現を、情景の補強とともに入れておかないとなぁ。顔を見せ合うためには、その前に顔を隠してないといけません。
Bメロ、転換です。
ここはサビに繋げつつ、言葉遊びをしたいと思いました。
思いついたのは同じ言葉を繰り返すこと。ただの繰り返しだとつまらないから、ちゃんと文脈の中で使ってみよう。言葉のリフレインって、聴いてる人の耳に残りやすいしね。
で、サビを経て2番に行くんですがここで唐突に知り合いに登場していただきます。オサムさーん。
柏の音楽仲間、オサムサバトさんです。
毎週土曜、22時ごろから歌っている通称「終電おじさん」。
オサムさんは通りすがりの2秒でメッセージが伝わる曲を歌う、ド直球マンです。
僕のひねくれた詞曲とは真逆でござる。
オサムさんとよくオリジナル曲について言葉を交わすんですが、この曲を作ってる時にオサムさんが通りかかったんです。
で、作詞のコツとして、いくつかの観点を会話したんですがその中に色を使うってのがあったんですね。
ちょうど2番の書き始めで、何を描写するか悩んでたんですが、色を使うっていう縛りを入れることで視界がスッキリしました。
「勇気を出す決心ができるということは、それなりの時間を2人で過ごしてきたということ」
「その時間の中で、素顔を見せたいと思えるほど相手を大切に思っていること」
を表現したくて、空の色の移り変わりを描こうと思いました。
景色が変わるということは、その間の時間を2人で歩んできたことを意味します。
また、音や大きな動きもない風景の移ろいをともに過ごすということは、穏やかに、丁寧な時間を紡いできたことを示唆します。
けど群青色と茜色って順番逆かもね?って思ったのは内緒です。
さて、色々経てラスサビです。
比較的スッとできたんですが、ここにこの曲を集約した1行が書けたと思っています。
前述の通り、それまで長い時間を過ごしてきたものの、素顔を見せあうのは初めてなわけです。
"はじめまして"というフレーズには、緊張と期待が詰まっています。
Bメロと同じ言葉遊びもすることで、より空気を軽やかにしています。
また、それまでのサビでは「君はどんな顔をしているの?」と相手のことをうかがっていたものが、「僕らはどうしようか?」と二人事に変わっていて、より2人の距離を近づけることができました。
総じて、ナチュラルで前向き、憂いを2人で乗りこえる(ことを期待させられる)物語にできたと思っています。
曲の話
この曲のポイントは⑴サビ、⑵間奏、⑶ラスサビです。
⑴サビ
前奏の方が分かりやすいかな?
コード譜には表してないのですが、進行の中で毎回ベース音を動かしています。
これはサビの詞を考えてるときに思いついたんだけど、こうすることで曲のノリ/楽しさを倍増できるんですよね。
ここで"音の動きを多くする"って手法を取ったので、1行目後半も早めのコードチェンジとF→Gのスライドを入れることで、音の変化と"ノリ"を維持することにしました。
また、逆にサビの終わりではFmをジャーンと伸ばすことでノリのギャップを出しています。ココ聴キドコだよ〜って。
このアレンジで、意図的にベース音を動かすことに味を占めたかもしれません。
⑵間奏
もうね、ここはね、ギターソロやりたかったの。コード弾きしながらギュンギュン入ってくるやつ。「なんかスゲー!」って思われるヤツ。憧れ。
自分で言うのもアレですが、僕コード弾きはできますが、ギターテクニックは無いんですよ。
デュオ曲のギターソロとか10以上年経っても弾けてない。真面目に練習もしたのに。
この時はデュオの時間もなかなか取れなくなってたので、この曲は一人で歌うことが多いだろうな。
一人でドヤァってするにはどうすっか→ギターソロや!
という自己顕示欲のカタマリです。
⑶ラスサビ
ここのポイントは2行目ですね。
ラスサビが静かに始まって、爆発までのパワーをぐぐ〜っと溜めるところです。
コード進行パターンが他と違うのが分かりますか?
これはクリシェ進行といって、コードの構成音の一部を少しずつずらす手法です。
少しずつ上げれば高揚感を演出できるし、下げれば不安や切なさを表現できます。
糸/中島みゆきの「織り成す布は〜」のとことか、One more time, One more chance/山崎まさよしの「向かいのホーム〜」のとことか。
ここでは"心配"というフレーズに重ねて音を下げることで、"君"が持ってるであろう不安を演出しています。
これによって3行目のラスサビの爆発/解放感やギャップをうまく出せたかなと思います。
しめくくり
書き始めるとこのくらいのボリュームになっちゃうな、、楽しいけど。
この『いないいないばあ』と前回書いた『虹を描く』はコロナ禍以降の僕の活動の中で、自分を支えてくれているとても大切な曲です。
音楽の面白さを再認識するだけでなく、技術的なチャレンジによってまだまだ自分にできることは広げられるんだなぁと思えました。
けどまぁ後から振り返ると、色々考えてるんだな、自分。がんばってるよ。ヨシヨシ。
よう分からんまとめですが、これくらいで。
では。