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(考えてみたシリーズ)人員確保ができない地方自治体の公務員採用について

人員確保ができない地方自治体の存在

 年明けに、沖縄県の渡名喜村で職員の採用活動をおこなったものの、定数の半分が欠員になる可能性があるとの報道があった。

 渡名喜村は離島であり、首都圏の自治体と異なり近隣市町村の住民が職員となり通勤することは立地的に難しいだろう。一方で、全国を探せば仕事がなく移住してでも安定した仕事が欲しいという人がいるのではないだろうか。採用活動の方法を見直せば、人が集まる可能性はまだあるのではないかとも思った。

 そこで、今回は現在の渡名喜村の職員採用の手法から、改善できる点がないかどうかを検討してみた。

直近の渡名喜村の採用試験の内容について

 まずは、直近の渡名喜村の採用試験の内容について、村のホームページで確認をしてみた。

 受験案内によれば、試験は1次の職務基礎力試験と2次の面接試験の合計2回である。1次試験は全国のテストセンターで受けることが可能で、2次試験は那覇市内の会場での実施となっている。採用試験を受けるにあたって、渡名喜村へ行く必要はないということだ。ただ、2次試験は那覇市内で行われるため、試験を通過し採用されるために那覇市には行かねばならない。
 この試験会場の条件に一つの壁がありそうだ。就職活動中の人間がどこまで交通費を支払い、通過するかどうかの確証がない試験に挑むかということだ。
 沖縄本島の中で見ても、北端の国頭村から那覇市まで車で片道2時間ほど、公共交通機関を使用した場合は3時間ほどかかる(google map調べ)。いずれにしても1日がかりだ。
 沖縄県外から受験しようと思った場合、たとえば福岡から那覇までは格安航空会社の便を使用しても(時期にもよるだろうが)片道6000円前後はかかりそうだ。交通費だけで1万円以上の出費となる。
 最初の1次試験は全国のテストセンターで受けられるため居住地域によるハードルは低いが、2次試験のことを考えると一気にハードルが上がる。確実に採用されることが見込めない中で、そして他にも採用活動を行っている企業や自治体もある中で、わざわざお金と時間をかけて遠方から試験を受けにくる人はなかなかいないと思われるからだ。現在の採用試験のスタイルでは、渡名喜村の住民、そして那覇市か比較的那覇市へのアクセスのいい地域に居住している人以外からの応募は増えないだろう。

試験内容の改善案

 現在の採用試験のスタイル(1次は全国のテストセンター、2次は那覇市で実施)であっても、採用試験を受けにくる人間が、村が求める人材であるというのであれば、この採用方法を継続し、求める人材が現れるまで応援職員を頼みに何年でも待ち続けるしかない。しかし、必ずしも採用試験にお金と時間を費やせる人が自治体で活躍できる人材というわけではないだろう。
 より応募人数を増やし、さらには内定を出した中で実際に内定承諾をする者を増やそうとするのであれば、2次試験もまた全国どこに居住していても受験しやすい条件で実施するべきであろう。具体的にはzoomなどを用いたオンライン面接の実施である。
 内定までの全ての試験を、居住地による移動距離や移動費用の差を極力減らすことで応募者数をより増やすことができるのではないだろうか。
 また、渡名喜村は今回の職員の人員確保困難の件が報道されたことで、全国にその状況が知られた。まだ就職活動をしている学生をはじめ、転職先を探している人、仕事のない人の一部にも知られたのではないだろうか。しかし残念ながら直近の採用試験の受付は令和6年11月上旬に締め切られている。いつもよりも全国に名前が知られた今のうちに、もう一度募集をかければ、試験応募者が増えるのではないだろうか。運が良ければ採用活動を継続していることもまた全国に報道されるのではないだろうか。

まとめ

 今回は、渡名喜村の職員の人員確保に関する報道から、ちょっとした問題提起とその改善案について考えてみた。都市部とは異なり、離島という立地的に人員確保が難しい部分がある自治体だが、応募者側の目線に立った採用方法の見直しはまだまだ可能だろう。本記事では、見直せる点として、試験会場の場所についての改善案を述べた。
 応募者側に立った採用試験の方法については、全国のどの自治体も考えることである。まずは、採用日程だ。多くの市町村が、試験案内に記載されている試験日時どおりに試験を行う。指定された日時に都合が悪くなると受験者はその時点で辞退するほかない。特定の自治体を第一志望としていない人材は必要ないということであればこの方法でも良いだろう。しかし、本人の志望順位と入庁後に活躍できる人材であるかどうかということは必ずしもイコールではない。採用活動に苦慮する自治体ほど、この日程条件の緩和もまた必要なことではないだろうか。この件については記事を改めて検証していきたい。

(執筆:うたたん総研 研究員A)

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