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五十肩かと思ったら腱板断裂かも?チェックすべき病気3選

「間違っても、コレが痛いからと言って「あなたはインピンジメントですね」と安易に診断することはありません。」

今回は「インピンジメントと安易に診断しない!」がテーマです。
「五十肩かと思ったら腱板断裂かも?チェックすべき病気3選」をお届けします。

※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。
ときどき出てくる「ふんぞり男」とは、その名の通り、ふんぞり返って態度がデカい患者さんです。


五十肩と思ったら腱板断裂かも?

動画の表紙では「コレが痛くてできなければ」とありましたよね。

せっかくなんでまず試してみましょう。
痛みが出たら、その時点でやめていいですからね。

まず肘を90度に曲げて腕を90度上げていきます。

そこから、このように腕を回していきましょう。

痛みが出ますか?
もしくはかたくて、ここまで動きませんか?

となると、今回のお話が大事になってきます。

意外と大丈夫だぞっていう人も、少しずつ角度を変えて様々な速度でやってみてください。

全部痛みなくスムーズだったら、今日のお話は2倍速で聞いていただいてもいいかもしれません。
逆に、痛かった人はじっくり2回聞いてください。

ふんぞり男「お前、ウザいな。聴き方なんて視聴者さんの自由だろうが」

うわ、珍しく正論。
おっしゃるとおり、ご自由にご覧くださいね。

で、上の動きって整形外科でとっても有名な診断テストに近い動きをしてもらっているんです。

それは「Hawkins-Kennedyテスト」っていうんですけど、主に肩峰下インピンジメントかどうかをチェックするテストなんですね。

でも、タイトルにある通り、五十肩でも痛くなるし、腱板断裂でも痛くなるんですよ。

ふんぞり男「はぁ?テストの意味あるのか?

ですよね。

僕もそう思いますが、逆に言うとこれが痛くないってなると、
逆に絞られてくるっていう意味で僕はよく使っています。

間違ってもコレが痛いからと言って

「あなたはインピンジメントですね」

と安易に診断することはありません。

そこで、この動きで痛いあなたの肩の中で実際どういうことが起こってしまっているかもしれないのか?っていうことを徹底解説してみようと思っています。

インピンジって何だよって人も含め、わかりやすく解説していきますので、ぜひぜひ最後までご覧ください。

放置しちゃうと悪くなるリスクが高い順にTOP3を解説します。
ではいきましょう。 

第3位 石灰沈着性腱板炎

 ふんぞり男「おいおい、いきなり、インピンジメントとかでもなく、五十肩でもないんかい!」

そうなんです。
でも、インピンジメントとは大いに関係があるんです。

「石灰沈着性腱板炎」ってその名の通り、石灰っていうカルシウムの結晶が腱板という肩のスジに沈着しちゃうんですけど、その沈着部位や大きさによってはインピンジメントの原因になるんです。

これ自体はレントゲンを注意深く見れば、ほとんどは診断できます。

詳しくはこちらの動画をご覧ください。

ふんぞり男「おーい、まてまてぇ!そもそもだぞ、インピンジってなんなんだよ。それが説明されてねぇと、はい、石灰ねって納得できねぇだろうが!」

まさに、ということで、次に解説します。

第2位 肩峰下インピンジメント症候群

ということで、肩峰下インピンジメント症候群を診断するためのテストではありますからね。

しっかり解説していきますね。
それで先ほどの石灰との関連もよくわかると思います。

肩の模型を使って、まず「インピンジメント」っていうことを解説していきますね。

調べてみてもらうとわかると思いますが、インピンジメントっていうのは「衝突」っていう意味です。

じゃあ、何と何が衝突するのか?っていうことなんですが、この動きによって上と下が衝突します。

まず上から説明していきますね。

上っていうのは肩甲骨の骨とその骨にくっついている靭帯です。

具体的には「肩峰」っていう骨の部分と、その肩峰の前にくっついている「烏口肩峰靱帯」っていう靭帯です。

名前は覚えなくてもいいかと思います。
「骨と靭帯というスジが上にあるんだな」くらいの感じで覚えておいてください。

次にその下。
「腱板」やその表面にある「肩峰下滑液包」という袋みたいな膜があります。
この膜の構成成分は「滑膜」と言います。

ふんぞり男「うわぁ、説明しろとは言ったが、やっぱりもう無理だ。専門用語、怖い・・・」

怖いんですか、なんか昔あったんですかね。
でも、そうなんです、別に覚えなくてもいいんです。

ざっくり言うと、下にあるのは腱板とその周りって感じでいいと思います。

ふんぞり男「なら、最初からそう言え」

いや、最初から言ったら、誤解を生みかねないので、ちゃんと説明しつつ、わかりやすさも大事にするというスタンスは変えません。

で、この上下がインピンジメント、つまり衝突するから痛い。

もしくは、それを繰り返すから炎症が起こり、痛みが出るという話なんです。

ですから、このインピンジメントが起こることによって症状が出る状態を「肩峰下インピンジメント症候群」って言うんです。

肩峰下の意味もわかりましたよね。

ふんぞり男「お、おお、肩峰って骨が上で下が腱板とかだったな。そこが衝突するから肩峰の下でのインピンジメントか。」

驚きの理解力!ありがとうございます。

そういうことです。
そして、石灰との関係もわかりますよね。

ふんぞり男「おお、わかるぞ、石灰が腱板にくっつけば、そこと肩峰がぶつかるんだな」

気持ち悪いくらいに理解してますね‥‥

そういうことです。

例えば、石灰がこの部位に沈着してしまい、上に出っ張ってしまったら、絶対ぶつかりますよね。

ただ、場所やサイズによっては全然インピンジメントを起こさないこともありますので、石灰=インピンジメントというわけでもありません。

第1位 腱板断裂

このケースはよくあるんですよ。

「ああ、インピンジメントだね」ってレントゲンだけで安易に診断されて、ヒアルロン酸やステロイドの注射を延々打たれたあげく、腱板断裂だった・・・みたいなケース。

特にステロイドは腱板断裂に対してたくさん打ってしまうと、
手術をした時の再断裂率が上がってしまうというデータ(*1)もあるので、
まず診断をちゃんとつけるっていうのが大事だと思っています。

腱板断裂でなんでコレが痛いかっていうと、一番多いケースはやっぱりインピンジメントが起こっているってことですね。

一番断裂が多い「棘上筋腱」というのがここにあります。

ここが切れて、この周りに炎症が起こると、その炎症した場所が衝突するわけですから痛いですよね。

また、腱板断裂して何が困るかと言うと、腱板と言うのはインナーマッスルのスジなんです。

インナーマッスルっていうのは肩を安定的に動かしてくれる役割があったり、肩を捻る回旋運動を担当してくれているんですが、それが切れてしまうとどうなりますか?

ふんぞり男「おお、その反対を考えると、肩が不安定になったり、回旋運動ができなくなったりするのか?」

そうなんです。

不安定になると、余計に肩を上げるときにグラグラして、インピンジメントが起こりやすくなったりしますよね。

また、まさに回旋運動ですから、腱板断裂では痛みが出たり、スムーズに動かないのも当然っちゃ当然です。

ふんぞり男「やべぇな!コレが痛い俺は、すぐに大きな病院でMRIを撮ってもらわないとダメってことだな!」

ん〜、そうとも限らなくて、例えば、超音波でも腱板断裂はある程度判定できますし、石灰もレントゲンでわかります。

だから、大きな病院にこだわらず、ちゃんと診察してくれる先生に出会うことが大事かなって思います。

ふんぞり男「それが見つからねぇから困ってんじゃねぇか。」

ふんぞり男さんは、受診態度も悪いそうですけどね。

さて、番外編として、最初にお伝えした五十肩。
この五十肩も全然、コレで痛くなります。

五十肩っていろんなところが炎症するので、腱板や滑液包という、先ほどのインピンジメントが起こる場所に炎症が起これば、インピンジメントが起こります。

しかし、こちらの論文(*2)をご覧いただくと、肩峰下インピンジメントの診断の精度について調べてくれています。

Hawkins - Kennedyテストの特異度という値が注目なんですが、特異度が59%なんですよ。

ふんぞり男「は?特異度って何だよ、ちゃんと説明しろ!」

はい、お待ちください。

「特異度」って言うのは、これが高いと確定診断に繋がりやすく、これが低いと誤診に繋がりやすいんです。

例えば、今回の59%、つまり約6割っていう意味は、逆に4割はコレで痛くてもインピンジメント症候群じゃないってことなんですね。

なかなかの確率じゃないですか?

ふんぞり男「なるほどな、だから、安易にコレだけじゃ診断しないって話か」

すばらしい、そういうことです。

一方で五十肩でもしコレだけが痛いということなら、あんまり重症ではありません。
この動きを避けながら、炎症がおさまるのを待つだけでも良いかも知れません。

この動き以外にも肩が上がらない、回らないとなると、
より重症な「凍結肩」になっている可能性が高いので、
これまた肩専門医にかかることをお勧めしたいです。

また、こちらの動画をまずご覧いただくことをお願いしたいです。

じゃあ、そろそろ、締めますか・・・。

ふんぞり男「いや、待て待て!インピンジメントがあったら、結局治療やセルフケアはどうしたらいいんだよ。対策について何も言ってないだろ!」

え、ここから、そこまで聞く元気ありますか?

ふんぞり男「うう。。サラッと言え、サラッと」

ワガママですね。

でも、ご要望にお応えして、こちらの論文(*3)をご紹介します。

こちらは肩を外旋すると、肩峰下の圧力が下がり、内旋すると上がったという研究結果なんです。

圧力が上がるって言うのはインピンジメントに近い状態ですね。

そのため「肩峰下の圧力はできるだけ下げたい」
これは肩の夜間痛の原因にも関係があると言われたりもしています。

ですから、「外旋」っていうのがポイントの動きなんですね。
ちなみにこの状態で言うと、

コレが内旋。

これが外旋。

わかりますよね。
インピンジメントは肩を上げて内旋すると起こりやすいんです。

ということは「腕を挙げるときは外旋気味で上げる」って言うのもコツになってきます。

また、この論文では「外旋の筋力が高い方が肩峰下の圧力が低かった」とも報告してくれています。

インナーマッスルトレーニングで、特に外旋筋力を高めるエクササイズを重点的にやると効果的かもしれません。

インナーマッスルトレーニングについては、こちらの動画が大好評です。
ぜひご覧ください。

ふんぞり男「おお、ナイスだな。それそれ。でも、診断テストって言っても当てになんねぇんだなぁ」

いやいや、いろんなテストがあって、僕らも組み合わせて診断していますから、とっても大切なものなんですよ。

本日の一言

コレで痛い時は診断をちゃんと受けよう!

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参考論文

(*1)Vishal S Desai et al. Arthroscopy. 2019 Increasing Numbers of Shoulder Corticosteroid Injections Within a Year Preoperatively May Be Associated With a Higher Rate of Subsequent Revision Rotator Cuff Surgery

(*2)Eric J Hegedus et al. Br J Sports Med. 2012 Which physical examination tests provide clinicians with the most value when examining the shoulder? Update of a systematic review with meta-analysis of individual tests

(*3)Clément M L Werner et al. J Shoulder Elbow Surg. 2006 Subacromial pressures in vivo and effects of selective experimental suprascapular nerve block


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