66年経っても「生きているファインダー」
フィルムカメラで撮影して、暗室でモノクローム写真をプリントして楽しんでいる、うたろうです。
今回は、1958年発売の「コニカⅢA」のお話しです。
質感は素晴らしい
カメラを買うとき、一番大事なのは見た目のデザインと触った時の質感です。何しろ、一緒に大切な時間を過ごす道具です。見た目と感触ほど優先すべきことはありません。
レンズの描写とかは、しばらく使ってみないと分からないですし、そもそも明らかに画質に問題がありそうなものには最初から手を出しません。画質は不満がなければそれでいいのです。このカメラは単焦点レンズですし、その点は問題ないでしょう。
デザインは、黒色の貼り革としっかりとしたクロームメッキが「ザ・クラシックカメラ」という雰囲気を醸し出しています。ずっしりとした重さが、金属とガラスの塊であることがよく伝わってきます。この重さが安定感をもたらし、レンズシャッターと相まって、低速シャッターを使ってもブレにくくなります。
また、ボディ剛性が高いため、巻き上げ操作を行ったとき等のフィーリングがとても心地が良いです。チープ感は微塵も感じないカメラです。
コニカというメーカー
僕が写真趣味を始めたのは1985年でした。その当時、マニュアルフォーカスのレンズ交換式フォーカルプレーンシャッターの一眼レフが隆盛を極めていた時代で、ニコンのFAやFE2、キヤノンのA-1やAE-1、ミノルタのX-700、ペンタックスのスーパーA、オリンパスのOM-4等、マニュアルフォーカス一眼レフカメラの最終進化モデルたちで溢れていました。
もちろん、コニカ、リコー、コシナ、フジ、マミヤも、そういったカメラを製造していましたが、カメラの歴史を知らない高校生だった僕は、コニカはフィルムメーカーであって、カメラはプラスチックで出来たチープなコンパクトカメラを作っている会社というイメージしかなく、フィルムでさえコダックやフジを使っていたため、まったく無縁なメーカーでした。その後、しばらくして、ヘキサーやヘキサーRFが発売されてイメージが少し変わりましたけどね。
1950年代のコニカはコストをかけた高級機を作っていたことを、コニカⅢAを使ってみて、ひしひしと感じました。コニカさん、誤解していてごめんなさい。コニカⅢAは、それくらいのインパクトがあるカメラです。
レンズは固定式で「48mmF2」と「50mmF1.8」
コニカⅢAは、レンズ交換が出来ませんが、二種類のレンズが用意されていますので、購入する場合は、いずれかが搭載されたボディを選ぶ必要があります。
それにしても、何て悩ましい二択なのでしょう。50mmの方が後発らしいのですが、焦点距離に違いがなさすぎます。どっちを選んでも、撮れる写真に大差はないでしょう。じゃあ、選ぶ決め手は何かというと、見た目と重量がポイントになると思います。これくらい古いカメラになってくると、半年ほど遅れて発売された50mmモデルの方が中古の程度いいものが多いということにはなりません。実際、僕の所有している固体は48mmモデルの方が、微妙に程度がいいような気がします。
同じコニカⅢAでも、レンズの口径が違うと見た目が異なりますので、お好みで選びましょう。もちろん、微妙な焦点距離の差や、開放F値に着目して選んでもいいかと思います。どっちを選んでも後悔はありませんし、二台そろえる必要もないと思います。
じゃあ、何で二台も持っているんだよ~
ということですが、僕は、始めは48mmモデルを購入しました。しかし、間違えて50mmモデル用のフードを購入してしまいました。48mmモデルの質感の高さに驚き50mmモデルにも興味が出てきて、フードに合わせて50mmモデルも購入しました。もちろん48mmモデル用のフードも購入しました。
先ほども書いたように、二台持つ必要はまったくありません。物を所有するということは、それにまつわる厄介事も同時に抱え込むことにもなりますからね。と言っても、かなり丈夫なカメラのような気がするのでずっと使えそうです。
この二台、どう使い分けているかというと、ズバリ、その日の気分です。今日はコンパクトな48mmモデルを使おう。とか、夕方撮影するので少しでも明るい50mmモデルを使おうとか、そんな感じです。
レンズシャッター
コニカⅢAは、レンズシャッターです。そのため、最高速シャッタースピードは、500分の1秒となっていますが、僕はこれで充分ですね。ただ、この時代によくみられる大陸系列の並び(1秒、1/2秒、1/5秒、1/10秒、1/25秒、1/50秒、1/100秒、1/200秒、1/500秒)なので、ちょっとだけ頭の中で変換しなくてはいけませんが、それほど問題はありません。
僕はレンズシャッター、好きですね。フォーカルプレーンシャッターのように、「パシャッ」とか「カシャッ」ではなく、「チャッ」という感じです。クイックリターンミラーのないカメラなので反動もなく、低速シャッターでも手振れしにくいです。
フォーカルプレーンシャッターの場合、シャッターチャンスに備えて撮影したらすぐに巻き上げていますが、このカメラはレンズシャッターなので、撮影する前に巻き上げるようにしています。テンションをかけたままにしておかない方がいいような気がするので。
“生きているファインダー”
発売された当時、コニカⅢAは、「生きているファインダー」というキャッチコピーで売り出されたらしいです。確かにね、等倍ファインダーは迫力あるし、ピントリングを回すとそれに伴い、黄色いブライトフレームも一緒に動きます。これが生きているということですかね。
二重像の見え方はそれなりです。僕のミノルタハイマチックE(1971)やライカM6TTL(1998)と比べると、見え方はシャープではないけど、そんなことはどうでもいいのです。今年で66歳になるんですよ。このカメラは。ロマンがあるじゃないですか。
露出計
この時代のカメラですから、露出計は内蔵されていません。でも、それがいいのです。だって、ないものは壊れることもないでしょ?露出計内蔵のカメラなのに、露出計が壊れた状態で修理不能な場合は、不完全で気分が良くないですからね。そういうのは、もう少し時代を下ったカメラに任せしましょう。
そんなわけで、お好みで単体露出計等を使うか、勘で露出決定することになります。僕は小さくて軽いセコニックのオートリーダーを使っています。
ライトバリュー方式
この時代に多く採用された方式で、シャッタースピードを一段早くすれば絞りを一段開けるという動作を、シャッタースピード調整リングと絞り調整リングを固定することで、実現しています。プログラムシフトみたいなものですね。
しかしこれ、僕にとっては使いにくいです。僕は黒白フィルムを使っているのですが、わりと頻繁に露出計測を行いますし、順光や逆光、日陰と、撮影時の光線状態は様々です。シャッタースピードと絞りは分離して素早く設定したいのです。ライトバリューの解除にひと手間かかるのは少し面倒です。うすうすこのことは予想していましたし、ライトバリュー方式のカメラを買うのは避けてきました。
でも、いいのです。ライトバリューがどういうものか分かりましたし、50年代はそういう時代だったことが理解できましたからね。ちょっと面倒なだけですから。クラシックカメラを買うということは、その時代を知ることでもあります。
巻き上げについて(招き猫方式)
多くのカメラの巻き上げレバーは、軍艦部に装備されていることが多いですが、このカメラは、レンズ左側に装備されています。ダブルストロークなので、一枚巻き上げるのに招き猫の手の動きみたいな動作を二回する必要があります。
巻き上げレバーの指をかける部分と、ストラップのアイレットがとても近い距離にあります。ストラップのリングを大きなものにしてしまうと、巻き上げる時にストラップに干渉して動かしづらいので注意が必要です。
この巻き上げレバーが性に合わない人もいますが、僕は違った気分が味わえていいかなと思います。
面倒くさいことが多いカメラは、撮影者を育ててくれる場合が多分にありますからね。
アクセサリー
レンズキャップ
被せ式の純正レンズキャップがあります。金属製のレンズキャップは、クラシックカメラらしくていいですね。時代的に、バヨネット機構のレンズキャップがまだなかったのでしょうね。持ち歩いているときに、知らない間に外れて紛失してしまう可能性があるので、カメラを持ち出すときは、フードを装着してレンズキャップは装着せずに自宅で保管しています。
フード
金属製のしっかりしたフードです。実用面を満たすのであればプラスチックでいいのでしょうけど、やはりクラシックカメラは金属製です。フードも被せ式ですが、ネジで絞めて鏡筒に固定できるので、レンズキャップのように外れやすくはありません。
フィルター
装着レンズが50mmモデルのフィルター径は、43mmです。バヨネットのレンズキャップを別途買う場合も、43mmです。この口径は汎用性があって、入手も簡単です。保護フィルターはアマゾンのノンブランドのものを、イエローフィルターは、ワルツの中古品を買いました。この時代のフィルター枠は恰好いいですね。
装着レンズが48mmモデルのフィルター径は、35.5㎜です。あまり一般的ではない口径のため、ちょっと苦労するかも。バヨネットのレンズキャップを探してみましたが、ないようですね。保護フィルターはマルミのものを買いましたが、イエローフィルターは、中古品を探しました。
黒白フィルムで撮影する場合は、フィルターは必需品です。あとで、暗室で何とかなるようなものではありません。
まとめ
このカメラのデザイン、操作性をどう評価するかですが、僕は実にいい買い物が出来たと思っています。1958年当時、初任給の三倍近くしていた価格のカメラです。この当時、筐体を樹脂成型する技術はまだなかったのでしょう。それゆえに、金属を多用し、きれいなメッキが施されています。樹脂製であったら66年もこの姿を留めていることは出来ないでしょう。
手元に置いておき、自分と一緒に歳を重ねることが出来るカメラだと思っています。