小さな住宅で大きな空間を提案する



1.小さな住宅でも建築計画次第で空間の豊かさを享受できるか


近年の物価高が住宅に与える影響

住宅の設計をしていると、ここ数年の物価高の影響を非常に大きく感じます。
私自身、日々の設計業務の中で室の床面積を小さくすることで建物全体を小さく計画し、建築コストを調整していくことが多いですが、単にそのような後ろ向きな理由で面積を小さくするのではなく、空間と居住者の生活スタイルを合わせて考え、居住者の豊かな暮らしにつながるような建築を提案したいという思いがあります。

地方の郊外における個室の大きさ

岡山県のような地方の県において郊外の一般住宅を想定すると、寝室の大きさは8畳程、子ども部屋などの個室の大きさは6畳程が一般的なクライアントの要望として出てくる大きさです。(建築計画の観点から考えても一般的な大きさです。)

しかし、現在の一般住宅価格とクライアントの予算を考えた時、建物全体の延床面積を25坪〜30坪程にまとめる必要が出てくる中で、個室に対して上記の大きさを確保してしまうと、リビング、ダイニング、キッチンのような家族がメインで使用する共用部の面積が小さくなってしまいがちです。

共用部を広く計画し、個室は半オープンとする

上記の課題に対して、私の事務所では居住者が最も長い時間使用する共用部の面積を大きく計画し、その分個室を小さくします。
特に、寝室は寝る場所、子どもが使用する個室は子どもが寝るもしくは勉強する場所として想定し、それに必要な面積を確保します。
個室はただ小さくするだけでなく、空間的に扉を設けず開放的にするか、可動式の間仕切りで可変性を高くする等の計画を採用し、室の小ささを感じにくい計画となるよう配慮します。

個室を明確に仕切らず半オープンとすることは、明確な〇〇室という1通りだけの使い方ではなく、空間として居住者の生活スタイルに合った様々な使い方ができるのが最大の利点であると考えています。
最も具体的にイメージしやすいのは、子どもが居る家庭ではその成長に合わせて空間の使い方が変わっていくので、それに対応しやすい計画です。

住宅においては、個室が広ければ何となく安心しますが、自分たちの生活スタイルを見直して、空間の使い方を変えることで、こだわりたい部分にコストを集約できるとともに、自分たちの暮らしを豊かにする事ができると考えます。


2.提案住宅の紹介(岡山県岡山市南区芳泉4丁目)

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