鬼の豆ちょうだい《Dream Diary 番外01》
xxxx年02月03日(x)
鬼の豆ちょうだ~い!と言いながら、お子供衆がやって来た。あいにく鬼の豆はないと言って追い返そうとしたのだが帰らない。仕方がないからたまごボーロやプルーンミックス果汁グミをやって、帰れと言ったのだが帰らない。どうしても鬼の豆じゃないといやだとみな駄々をこねている。私はその場に土下座して、「ひとえに私の不徳のいたすところであります」と謝った。
鬼の豆ちょうだ~い!と言いながら、
またお子供衆がやって来た。
鬼の豆はここには無いから、
ナナフシの足の豆を鬼の豆と偽って、
お子供衆に渡したのだが帰らない。
それではとインパラの耳の豆を渡したが、
やっぱり帰らない。
それどころか鬼農園産のウズラ豆をくれとか、
鬼スタンプくじ付きの豆をくれとか、
鬼カードポイント5倍デーの豆をくれとか、
どだいムリ筋の要求をしだす始末。
私はその場に土下座して、
「かさねがさね私の不徳のいたすところであります」
と謝った。
鬼の豆ちょうだ~い!と言いながら、またまたお子供衆がやってきた。すかさずその場に土下座して、ひとえに私の不徳の‥‥と謝ろうとすると、お子供衆の代表(みのり幼稚園)が言うには、「どうもこれはぼくたちの言い方にも問題があるようです。節分に「オニはソト、フクはウチ」といってまく炒り大豆ください、とお願いするのならよい。しかし鬼のマメちょうだ~い!では、あたかも鬼の手のひらにできたマメや、足指にできたマメや、果ては顔面やお尻にできたイボまでくれと要求しているかのようです。市場に流通しておらず入手困難なものを要求されるのは、まったくもって理不尽な話。ぼくたちはごく普通の炒り大豆をちょうだいすればいいのです。それに付随するたまごボーロやプルーンミックス果汁グミ、駄菓子の人気No.1(ネット調査)のうまい棒や、No.2のベビースターラーメンなども大いに歓迎したい。したがってこの曖昧な言い方について、今後は是正していくことにやぶさかではありません」。
これを聞いた私は、
土下座姿勢で床をじっと睨みつつ、
「まことに行き届いたご配慮をいただき、わたくし感涙あいムセぶ思いでございます」と謝辞を述べた。
夢から目覚めたら、
私の目頭は本当に感涙で滲んでいた。
いや、ただの目ヤニだった。
(注)私の住む街では、節分の日とされる二月三日に、子どもが「鬼の豆ちょうだ~い」と言って店先などを巡り、菓子などをもらう『鬼の豆』という伝統行事があります。