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爽やかな初夏の朝 コーヒーショップの窓の外では スズメ達が噴水に集まって 小さな翼をシャンプーしている 音大行きのバス乗り場では 客はバスの屋上にハシゴで登り ピアノを楽譜初見で弾かないと 乗せて行ってもらえないそうだ ラヴェル先生が入試用に作曲した 『プレリュード』を上手く弾けない人は スズメの冠婚葬祭のための祝い歌や レクイエムを補習させられている 遠い昔 私も高校の体育館で ザ・ローリング・ストーンズの曲の イントロをトチったことがあるから 何処かで補習を受ければよかっ
ベビーカーを押すお母さんが コーヒーショップに入ってきた 乗っている赤ん坊は周囲への目配りが鋭い スマホで大声で話している人がいたが 赤ん坊はまるでカメレオンみたいに 眼にも止まらぬ速さで舌を伸ばし スマホを取り上げてしまった 取り戻そうと詰め寄った人は 赤ん坊の眼から照射された光線で アヒルに変えられてしまった ほわふらっくぅ~と唸っている お母さんは「まあダメよ」と言って 乳頭から解除液を噴射して人間に戻すと 「すいませんねぇ」 謝りながらスマホを返していた こないだテレ
コーヒーを飲みながら 窓の外をぼんやり眺めていると 巨大な金バエの王様が 家臣とウジ虫の軍隊を引き連れて 大通りを行進しているような気配がする あるいは推定138億年振りに 太乙金華が隣りの噴飯宇宙から タンスの奥のヘソの緒経由でワープして 帰還祝賀パレードをしているのか? 私のモジャモジャ頭に巣を作って 卵を温めているカラスに聞いてみると 全長三百メートルの黄金の百足が 大通りを這って行くところだと言う それはスゴいやらキモいやら 席を立って見に行こうとすると 「動くな!