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爽やかな初夏の朝 コーヒーショップの窓の外では スズメ達が噴水に集まって 小さな翼をシャンプーしている 音大行きのバス乗り場では 客はバスの屋上にハシゴで登り ピアノを楽譜初見で弾かないと 乗せて行ってもらえないそうだ ラヴェル先生が入試用に作曲した 『プレリュード』を上手く弾けない人は スズメの冠婚葬祭のための祝い歌や レクイエムを補習させられている 遠い昔 私も高校の体育館で ザ・ローリング・ストーンズの曲の イントロをトチったことがあるから 何処かで補習を受ければよかっ
毎日コーヒーショップに来ては テーブルにノートPCと書類を広げて 何やら書いたり考えたりしている メスのニワトリがいる 近くのオフィスに勤めているのだろう 品の良い赤いトサカがよく目立つから 来ていることがすぐにわかる 今日はトーストセットを注文したようだ ゆで卵が付いているけど スーツ姿のキャリアニワトリが 共食いになるゆで卵を食べるのかどうか 食べるならどんなふうに食べるのか 私は気になって仕方がない きょときょと動く眼やトサカを ついじっと見つめてしまいそうになる しか
お昼過ぎには スーツ姿のサラリーマンが多い コーヒーショップでほっと一息だね みんなノートパソコンを開いて 液晶画面を覗きながらコーヒーを飲む 私のはもっと小さいミニノートパソコン いいでしょ 仕事用じゃないもんね えっへん 詩を書いておるのだぞ なんてお仕事中ごめんなさいっ! 愚にも付かないことをコソコソと‥‥ ここまで書いてコーヒーを一口啜ると 隣りのテーブルのサラリーマンが覗き込んで 「きみ、それは違うよ」と言ってきた 「我々は現在はリーマンと呼ばれている。 ベルンハル
トーストセットを注文すると 今は春のキャンペーン期間中とのことで 赤い三角くじを引かされた 「お目出とうございます。当選です」 グラマラスなウェイトレスが言うには 姪っ子が一人当たったのだそうだ 長い間会ってないなぁ…… テーブルに着いて待っていると ずいぶん成長した姪っ子が現れた うんうん可愛くなったじゃないか ふふ 胸もふくらんできているな 私はなんだか気分を良くして 姪っ子の顔にマーガリンを塗りたくり ペタッ! 額にぽち袋を貼り付けてやった それはいいとして 今日はあの
コーヒーをひと口飲んで皿に戻し、窓の外を眺めていたら思い出したことがある。遠い昔、 私がまだ小学生だった頃に読んだ、『ばらいろの童話集』のこと。〈ラング世界童話全集〉の第二巻だった。この本に収録されていた、「トントラワルドの物語」というエストニアの民話が、成人してからもずっと忘れられなかった。 編著者のアンドルー・ラングは、オックスフォード大学では『指輪物語』のJ・R・R・トールキンや、『ナルニア国物語』のC・S・ルイスの先輩にあたり、民俗学者にして作家であり、また詩人で
(番外編「コーヒーショップの物語」/伏字あり) 午後のコーヒーショップで 私はひとり読書をしている 斜め前のテーブルでは 女子高生達がお喋りしている BGMは懐かしい曲 『 You Don't Know What Love Is 』 邦題は『 あなたは恋を知らない 』 ビリー・ホリディが歌った曲だ だけどネエちゃん達はキャアキャアうるさいな 向こうの席でステホスが客と騒いでるんだろう 遠い記憶の夜空にJR中央本線が走る 私は東小金井のキャバレー『火の鳥』に トラでギターを