投手ベストテンがベストテンでなくなる日
ハーイ、みんな席について~♪
講義はじめまーす。
本日のテーマは、
日本プロ野球――横文字で言うとNippon Professional Baseball、略してNPBについて。
特に、先生がちょいと由々しき問題やなぁ……とかねがね思ってる
「先発投 手の投球回数、なんかどんどん減ってね?問題」についてです。
あー、そこ、後ろの3人、静かにして。
そら興味ない人にはつまらんテーマやと思うし、ちょこちょこ細かい数字も出てくるから面白ないっちゃ面白ないのは認めるけど、せやったら、せめて静かに寝てるか、静か~にご退室してな。
このnote大学、オモロい講義は他にいくらでもあるから☆(⌒~⌒)☆
大丈夫、この講義は出席さえ押しとけば単位がもらえるガバガバのユルユルで有名だから(o^-')b♪
この先8000字近くもあるからねー( ̄∀ ̄)
覚悟ができた人だけ、ほな行きますよ。
本日の講義のメインテーマは
現在NPBで常識的に運用されている中6日ローテーションでは、規定投球回数に達するのにはごっつハードルが高い
ということ。
まず基本的に押さえといてほしいことの復習から。
規定投球回数てのは、投手が最優秀防御率のタイトルを争うのに際して、最低限クリアしなければならない投球回数のことね。具体的には「チームの試合数と同数」てことだから、近年では143ということになる。
ま、この数字は、ザックリ言えば、1年間しっかりとローテーションでまわって投げ続けましたよ、という証みたいなもんやね。
1チームに6人の先発ローテーション投手がいるなら、規定投球回数に達する投手も6人いるのが理想っちゃ理想。
とはいうても、もちろんそれはあくまで理想であって、
「表ローテーション、裏ローテーション」という言い回しがあるように、6人の先発投手の中でも、安定して1年間投げ続けられる投手とそうではない投手とがいるのがキビシイ現実ってものです。
とはいえね、「三本柱」や「四本柱」という言葉もあるように、安定して1年間投げ続けられる先発投手って、大体どのチームも最低3人や4人くらいはいるのが普通かな。
先生が地元球団ということで推している、投手事情が壊滅的(笑)なファイターズでさえ、
上沢直之、伊藤大海、加藤貴之という「三本柱」があるくらいですから。
となれば、規定投球回数に到達するリーグ全体の人数は、肌感覚としては
1チーム3人×6球団=18人。まぁ、最低そのくらいはいるだろうな、と予想されるわけだけど。
そこで、過去15年間(*1)の規定投球回数到達者 (と、ついでにその年の最優秀防御率投手もなんとなくあげてみた^m^) の人数がこちら。
こうしてみると、規定投球回数に到達する投手が存外に少ないのが分かるかと思う。
1チーム3人平均=リーグ全体で18人という、肌感覚で予想される人数に到達している年は、過去15年でたった1回 (2008年) しかなく、特に近年、2018~2020年の3年間については規定投球回数到達者は1ケタときてる。
今年のパ・リーグ投手部門ベストテン!…とか銘打っても、
「いやいや、ベストテンて、10人おらんやん!」
そうツッコまれるがオチという悲しい、てか由々しき事態ですなあ、これ。
そうはいっても10年前くらいまでは、リーグ全体で15人以上の規定投球回数到達者を出し、1チーム内で4人という球団もコンスタントに現れているのが見てとれるわけで。
つまり、規定投球回数達成者は、大まかな傾向として年々減少傾向にある(*2)ということになるかと。
では、規定投球回数到達者が年々減少している原因はなんやろか?――てことについて見ていくことにするよ。
① 単純に1年間ローテーションで回れる投手が少なくなっている
② ローテーション投手が故障で離脱するケースが多くなっている
③ 日本の少子化問題とリンクしている
さすがに最後の③は、理由としてあまりにスケール感デカすぎで頓珍漢やね……てか、あーと、先生渾身のボケですよー、ここ。
この講義の数少ない笑うトコですからねー、お世辞と忖度でいいから少しは笑ってくださいねー。じゃないと先生、泣いちゃうかもです(T_T)
ま、閑話休題。
①、②は、いずれも減少原因の一つだとは思う。
でも、より根本的な問題だと思われるのが
投手分業制の確立
ここだと私は考えています。
先発投手は先発完投こそが華だった昭和の時代から
江夏豊のようなリリーフ専門のクローザーが試合を締めるようになり、
その後、2000年代初頭の阪神タイガースのJFKのように、セットアッパーからクローザーまでが1セットになり、
今や、中継ぎ投手もクローザー同様に重要視されるにつれ、
先発投手は6回を投げれば最低限の仕事は完了
という風潮が形成されてきてるのが昨今。
確かに、野球のルール上は6回どころか、5回まで投げて味方がリードしていれば勝ち投手になれるわけだし、中継ぎ、抑えのピッチャーが安定して機能しているのならば、それで特に問題はないっちゃないんだよね。
そこで、この「6回投げればオケーイ」システムと規定投球回数との関係性をもう少しだけ深く掘り下げてみることにしますよー。
「規定投球回数=チーム試合数」だから、1週間に6試合あるとすれば、週イチで投げる先発投手は、6回を投げてトントン、
視点を変えると、6回投げてようやくギリという見方もできるわけだ。
次に、1シーズンで投げる試合数。これについては、
単純に6イニング平均で143イニングに到達するには、143÷6=23.8試合、
つまり最低24試合は登板する必要があるってことになる。
ただ、現実世界のプロ野球は「パワプロ」(*3)じゃないから。
どんなに優れたピッチャーでも、1シーズンまるまる最初から最後まで週イチでコンスタントに投げ続けられる野球マシーンのような投手なんてそうそういないわけで、
そら半年以上にわたる長いシーズンだからね、
調子が悪く敗戦続きでいったん二軍での調整期間を必要としたり、
不慮の故障や体調不良とかでチームを離脱したり、
うちんトコ、奥さんが出産するから立ち会うために一時帰国するやで~的な家庭の事情があったり(≧▽≦)♪(*3)
……等々、さまざまな理由でローテーションに穴をあけるケースがあるわけやな。
では、逆に言うたら規定投球回数に達するのに、どのくらいの休みなら許されるのか、てトコに注目してみる。
例として、ファイターズの2022年における週単位の試合数を示した表-4を見てみようか。
これを見ると、今年のファイターズの「試合週」は、3月4週目から9月5週目までの全部で28週、
シーズン頭、3月4週目の3試合が「金曜日~日曜日」の3試合で、
シーズン末、9月5週目の3試合が「火曜日~木曜日」の3試合だから、
中6日ローテーションを考える場合は、この2カードを実質1週と考えなければならない。
つまり、2022年のファイターズの「実質試合週」は、27週ということになるわけです。
というわけで、中6日ローテーションをガッチガチに厳守すると、先発登板できる最大数は27(*5)、
6イニング平均で投げ続けた場合に必要となる登板試合数は24なので、休める試合の上限は3試合 (3週間)だ。
つ・ま・り――
4週穴をあけたら基本的にはその時点で規定投球回数到達はアウトぉー!👍てことになるのだわ、これ。
勿論、これは登板した全試合で6イニング投げたという前提条件だけどね。
いやいや7イニング投げる日もありゃ8イニング投げる日もある、なんだったら完投すれば9イニングぢゃないか。そういう意見もある。
その通り(o^-')b♪
あー、先生、今めっちゃカッコつけて横文字使いましたよぉ♪
……シカトしないでー……(T_T)
でも、これって逆もまたあり得る話だよね。
つまり、6イニング保たずにノックアウトされる場合だってあるはず。
というわけでこう考えるとどうだろう。
6イニングを基準にして、
7回投げれば+1、8回投げれば+2、
逆に5回でマウンド降りたら-1、4回だったら-2。
こうして24回投げる中でトータルでプラマイゼロなら、無事、規定投球回数到達ということやね。
えーと、君たちの中でゴルフをされる方いる? あれ、いない?(・_・)
……まぁ、ここ大学だもんなー。高校でゴルフ部があるトコなんて一部の金持ちボンボン御用達校だけ(*6)やろし……
でも、シカトしてゴルフで例えちゃうよ~^m^♪💦
つまり、ゴルフでいうなら、
7回まで投げればバーディー、8回でイーグル、逆に5回ならボギー、4回ならダブルボギー、てカウントして、24ラウンドをイーブンパーで回ればOK、予選通過♪(≧▽≦)♪と考えると分かりやすいかもね。
なに?
かえって分かりづらい?……(・_・)
じゃあ、今度、この講義をとってる人たちで『みんなのゴルフ』大会しよっか。
さてと、
では次に、実際のところ、先発ローテーション投手というのは、どのくらいのペースでイニング数の出入りがあるのかを見てみることにするよ。
以下の表-5は、2021年のパ・リーグ規定投球回数到達者、即ち
🍀規定投球回数クラシック2021🍀を予選通過した14人の猛者たちの、先発した際のそれぞれの試合の投球回数を示したものだ。
……ちょっと細かくて後ろの方の諸君は見えないかな💦
そこはそれ、note大学では、図表はタップ (クリック) したら大きくなるから、随時やってみてくださいねー
そういう大っきくなっちゃった、じゃありませんよー
あと、小さくて数字までは見えなくても、
青マスが7回以上投げたプラスの試合
赤マスが5回以下しか投げられなかった試合
なので、大体の傾向的なものは掴めると思いますから、そんな感じで見てください。
じゃ、講義に戻ります。
まず、年間の先発登板数から見ていくと、
やはり期待値である24試合以上投げている投手が14人中11人、残りの3人――伊藤大海、田中将大、則本昂大も、期待値に1試合足りない23試合。
さすがに優秀やね。
平均すると24.29で、まあまあ24試合というところでよさそう。
次に「出入り」について見てみると、
「入り」の方、即ち7イニング以上投げて「貯金」が作れている試合数は、最高が山本由伸の20回(!)……まあ、コイツはちと別格やな(^^ゞ
最低が岸孝之と小島和哉の5回で、
平均すると11回
「出」の方、即ち5イニング以下しか投げられなかった試合数は、
最高が松本航の12回……逆にコイツ、よう規定投球回数に到達できたな(笑)
最低が山本由伸の1回で、
平均すると6回。
以上の数字から何が分かるのかというと、とりあえず
オリックス・山本由伸の
26先発で7イニング以上投げた試合数20 (うち完投6)、5イニング以下しか投げられなかった試合がたった1回、
という驚異的なスタッツ。やっぱ、スゲぇな、山本由伸( ̄o ̄)
……まぁ、こんな統計向きぢゃないスペシャルな人はひとまずおいといて、
大事なのはここから――
めっさハードルの高い規定投球回数143をクリアした、いわば
「選ばれた猛者」たちでさえ、
7イニング以上投げて「貯金」が作れている平均試合数は11、
つまり、24試合投げたうちの半分以下の試合数でしか「貯金」が作れていないということになる。
逆に、規定投球回数クリアのためにはマストである6イニングを投げられなかった試合数の平均が6。
これは、「選ばれし猛者」たちでさえ、4試合に1回(6/24)は5イニング以下しか投げられない日があるということを表している。
いはんや、選ばれし猛者でない般ピーたちにおいてをや、ってことやね。
親鸞もびっくりや (親鸞、NPBなんて知らんやろけど( ̄∀ ̄))
また、この🍀規定投球回数クラシック🍀、なにがキツいって、「貯金」できる幅が狭すぎるってトコが最大のネックなんですねー。
イーブンパーが6(回)として、プラスのアッパーは完投した場合の9なので、「+3」(*6)。
それに対して、マイナス側の方はというと、最悪は初回にワンアウトも取れずノックアウトされたら「-6」だもの。
まぁ、ここまで極端なマイナスはそうそうない(*7)とはいえ、「-3」に相当する3イニング以下でノックアウトというケースくらいまでなら、「選ばれた猛者」たちの平均ですら0.86、ざっくりいえばシーズンに1回くらいはそんな時もあるよね、くらいのペースでは起きうる事態だということが分かる。
つまりだ、
ひとたび「3回でノックアウト」なんて年イチレベルのポカをやらかしちゃった日には、そのマイナスを取り返すのはけっこうシンドいってこと。
単純な算数でも、1回完投するか、7イニングまで投げる試合を3回続けてようやくチャラだもんねぇ。
7イニング以上投げられる平均が2試合に1回以下なんだから、3試合連続7イニング以上なんて……ねえ。
そこで、次なる高いハードル「完投することの難しさ」についても触れておくよー。
そもそも、9回を投げきるだけのスタミナがない場合は、当然、完投することなんて夢また夢なんだけど、
実は、9回を投げきるだけの余力があっても降板するケース、近年はこのパターンもけっこう多かったりする。
具体的には
① 3点差以内のセーブシチュエーション
② あまりにも大量点のリードがある場合
まず①について。こっちは分かりやすいよね。
チームのクローザーが健在で、特に連投が重なっているとかいう状態でなければ、3点差以内での9回は、とりわけ点差が僅差であればあるほどクローザーが締めた方が無難だから、交代するのがむしろ普通セオリーですらある。
次に②について。
逆に7回や8回までに味方が大量点リードをもたらしてくれていた場合も、最近の風潮では先発投手は完投せずに降板するケースがしばしばあるということ。
大量点リードという心理的に負担の少ない場面で試してみたい若手投手やリハビリ登板させたい投手等がいたり、あと中継ぎ・抑えの投手で登板間隔が空きすぎている人の調整登板、なんてのが代表的なパターンやね。
また、「先発投手は完投してナンボ」とかいう時代と違い、昨今では、
そない大量リードがあるなら、わざわざ8回や9回は投げなくてもいいから(*8)、次回の先発に備えてあがってくれなーんて感じで降板、という風潮すらあるからねぇ。
実は、「規定投球回数クラシック」予選通過に関していえば、これがけっこう厄介なのだわ。
先発完投することが当たり前、と自分もチームも世間さまも認識している一部の投手を除けば、
それ以外の先発投手が完投させてもらえるのは、セーブシチュエーションではなく、大量点差でもない、4点~5点リードくらいのほどよき点差で8回9回を迎えた時限定、もしくは中継ぎ・抑えの投手が連投続きで、できれば使いたくないなぁ……というチーム事情を抱えている時、そのいずれかだけといっても過言ではない……かもしれない。
要するに、規定投球回数に達するために貴重な「貯金3」をゲットするのはそうとう高いハードルだということやね。
ちなみに、1人の投手が完投することにそこまで固執していないということが示されているのが、以下表-6の、2021年のパ・リーグ全体の完投数。
トップの山本由伸が突出してるけど、以下、複数回完投しているのも僅か4人で、完投試合の延べ数はわずか25。全試合の5.8%、
完投試合が見られるのはざっと20試合に1回程度でしかないってわけだ。
ファイターズ的なものの見方をするなら、パ・リーグで完投試合が見られるのは、王柏融がホームランを打つ試合と同じくらいの希少価値やねぇ~
( ̄∀ ̄)
さて、そろそろまとめになるけど、
昨今の完全投手分業制の中において中6日ローテーションで規定投球回数に達するためには
①シーズンの85% (具体的には24試合) 以上をローテーションで回れるタフさ
②登板した試合の半分程度は7イニング以上投げられるスタミナ
③早い回でのノックアウトというやらかしは5試合に1回以下という安定感
ザックリ言えば、このくらいのことがシーズン通してできないと規定投球回数に達することはできないということになっちゃうねー。
……キッつ(*´Д`)
ただ、この傾向は、あくまで投手個人にフォーカスした場合限定の不都合だということにも言及しなくちゃならない。
ドライな言い方をすれば、規定投球回数に達する投手が少ないということは、ペナントレースにおいては別に大したデメリットでもなかったりするからなのですよ( ̄∀ ̄)。
何でかっていうと、規定投球回数に達する投手の数とチームの順位には、実はたいした因果関係がないからなのよね。
改めて以下の表-3を見てもらうと――
各球団の規定投球回数到達者の多寡とチームの順位には、実は相関関係があまりないというのがわかる。
近年の傾向だけとってみても、
2021年では、規定投球回数達成者がリーグトップの3人いる埼玉西武と北海道日本ハムがそろって下位に沈んでいるし、逆に2019年の埼玉西武なんて規定投球達成者が一人もいないのに優勝しちゃってるんだもの^m^。
つまり、「ペナントレースを制して優勝する」というチームの目的にとって投手個人が規定投球回数に達するかどうかは、別にマストではないということになっちゃう。
これねぇ、個人的な意見としては非常に悲しいことなのだけど、
リーグ全体の投手ランキングでベストテンが組めなくたって、各チームにとっては、そんなことは大したことではない
ということかもしれないんだよねぇ( ̄∀ ̄)。
いっそあれだ、そろそろ
「規定投球回数=チームの試合数」
てルールを緩和する方がいいのかもしれない。
(チームの試合数×0.9の128回とか)
だってねぇ……重ねて言うけど
パ・リーグの投手ベストテン!…が10人いない
って、なんかカッコ悪くね?^m^💦💦
――ていう先生の浪漫と郷愁に満ちた愚痴を吐いたトコで、本日の講義はここまで。
後ろで素直に寝てる3人、来週までにレポートね。
※ この記事は、2022年6月に下書き保存したままお蔵入りしていたものを、別記事の参考データとして使う必要があったため、若干の加筆訂正をして改めて記事にしたものです。
そのため、扱っているデータ内容等が2023年の最新ではない記述になってたりしますが、総論として趣旨は変わらないので、あえてそのままにしてあります。
ご了承の上、ご理解いただけると幸いですm(__)m