過去のお話とMIU404

MIU404が面白い。とてもとても面白い。

1話1話感動して、心をえぐられて、ないて、ハラハラして、わーー!!ってなる。アンナチュラルのときも思ったけど、もう脚本も演出も監督も演者も音楽もすごい。最高!!!!

そんなドラマだけど、いちいちわりと心にくる事が多い。脚本の野木さんの根底にある感情がとてもとても、刺さる。言いたいこと風刺したいこと、言いたいけど言えないことをうまく綺麗に昇華して、毒にならない程度に問いかけてくる。それが、とても心にしみたりえぐられたりする。

今回の9話「或る一人の死」で、色々思い出してもやもやしたので、整理するために書こうと思った。

誰に対してのつぶやきでもない。これは、私の心の整理のお話。

生き急いだ夢の話

昔々私はだいぶ生き急いでいた。何かをなし得なきゃという気持ちもあったし、何者かになりたかった。いわゆる氷河期世代。学校の就職あっせんの場所は人で溢れていたが、行く先がない。

先生に「お前は絶対に硬い職業も向いてる」と言われて、デザイン学校なのに、一般事務の就職先を持ってこられたときにはなんとも言えない気持ちになった。

(ただし私は夢は看護師、銀行員、公務員だったので、あながち先生の目線は間違ってはいないのもなんとも言えない)

ただ私はどうしてもゲーム会社に行きたかったから、自分でバイト先を見つけて、学生のうちにゲーム会社に入った。正社員が良かったけど、今は枠がいっぱいだからとりあえず準社員として入って、プロジェクトが1つできたら正社員にするという契約で、会社の一員になった。

うれしかった。夢がかなった。私の夢は高校あたりからゲーム会社で働きたいという夢に変わっていたので、自分の力で夢を叶えたわけだ。

まあ、でも結論からいうとその会社がとんだ会社だった。

精神も体もボロボロになって、もうゲーム会社は無理だなと思ってから職業を変えた。ゲーム会社にいた頃は友人とほぼ連絡も取れない幽霊と化していたから、なんとか連絡を折り返したときには驚かれた。一部の人には死んだと思われてた。

まあ、疲れすぎて歩行をうまくできなくて終電電車の線路に落ちかけた事があるので一概に間違っていないかもしれない。そう、ホームに飛び降りたいとかではない。気づいたら目の前が線路だっただけ。

あの頃は「1つの会社に入ったら3年は働け」が基本だった。履歴書で落とされるから。なにせ氷河期買い手市場、ケチがつくと揚げ足取りのように上から目線でパワハラ面接を受けて落とされる時代。

だから病んだ。だからもう自分に価値はないと思った。

ちなみに今は特にそんなことは思ってもいないけれど、昔からの自信のなさに相まって、この会社トラウマで割と拍車かかったな感はある。(笑)

会社というもの

インフルエンザなのに休むことを許されず、家にかえしてもらえず、朝の9時から朝の5時頃まで仕事して床で気絶。近くにネカフェもなくてトイレで泣きながら下着洗ってほして、体を水やシートで拭いて、ご飯は近くのコンビニで買って食べた。コンビニ3社のおでんの種を全部ローテできる程度におでん食ってた。あの頃異様にコンビニに詳しくなってた。コンビニしかなかったから。

でも新人だから、仕事ができないから「自分が悪いから」仕方がないと思ってた。先輩は忙しくろくに教えてもらえない。教えてほしいと言ったら本を投げられて怪我をした。

自分が悪いと思った。

眠眠打破がきかなくて強強打破になってモカをすすりながらハバネロ食ってそれでも駄目ならフリスクガブ食いしてた。下着がなくなって100均で買った。だって近くにデパートがない。当時はユニクロや無印もなかった。

ああ、着替え持ってきてればよかったなと、思った。

タイムカードは数ヶ月前から押さなくなった。帰ってないから。家に帰れなさすぎて現金が尽きて母に泣く泣く電話してゆうちょにお金を入れてもらった。働いているはずなのに、お金がない。意味がわからない。クレカや電子マネーも普及しはじめの時代だったからそもそも加盟店が近くにないのだ。現金バンザイ時代。

もっと現金持っておいたらよかったと、思った。

会社の人に好意を勝手に持たれて襲われかけて、泣きながらトイレに鍵かけてガタガタ震えながら寝た。床で寝ることもできなくなった。上司に相談したら「そのひと腕のいい人だから」という理由でうやむやにされた。新人より腕のいい男を取るということだ。

そいつは会社のシステムから個人情報を盗み見ていた。私の家を住所なども知ったようで、個人メールにまで連絡をよこしてきた。セキュリティがユルイにもほどがある。「○○に住んでるんだ!」と言われて吐いた。

怖かった。幸い一人暮らしをしていなかったから自宅までは来なかったけど、ひとり暮らしをしていたらこいつは来ただろうなと思った。男性不審になった。ちなみに上司の女性には「気のせいじゃない?」と鼻で笑われた。「服が悪いんじゃない?」とも言われた。

20才の新人に当時30オーバーの男が「プロジェクト終わったらどっか旅行行かない?」などと仕事中に言い出し、体を触ってくることの何が気のせいなのかしれない。

それでも待ってるユーザーがいるから、仕事は最後まで頑張らなきゃ社会人じゃないから、だからプロジェクトが終わるまでなんとか頑張ろう。

そんな気力だけで生きてた。

それでも本当に本当に最後の数ヶ月はどうしようもなくて、私は一人の友人にヘルプでバイトをしてくれないかと言った。

彼女はゲームに興味がなかったのに、きてくれた。

私が本気でやばいと思ったのかもしれない。というか多分そうだと思う。全然記憶が飛んでいるので、彼女にどんなふうに言ったのかも覚えていない。泣いていたかもしれない。

いつも遊ぶような間柄ではなく、なんならお互い別の学校に行ってからはやや疎遠気味だったというのに、だ。彼女のいる数ヶ月は本当に、本当に救われた。今も付き合いがあるけれど、本当に優しい人なので私は大好きだ。というか彼女がいなかったら多分くじけてた。

そんなこんなでなんとかおわって、続編も続投してほしいと、お願いしたいと言われた。

嬉しかった。

でも結局、私はこの会社で正社員にしてもらえなかった。このプロジェクトが終わったら正社員にするという契約で入ったのに。

そう、結果を出しても、喜んでもらえたとしても、意味がないのだ。

正社員には私にセクハラをしていたやつがなると聞かされた。年齢的にも経歴的にもという返答だった。確かに歴は長い、ただそれは私の契約とは別の話なのに。

ただ、当時の私にはそれに反撃する気力も体力も何一つ残っていなかった。

ただ、思ってしまった。精神がきれてしまった。

仕事なんて頑張っても、正当に評価はされない。結果を出しても意味がない。年功序列。新人だから次でいいよねと言われた。家族からは帰ってこいと言われ続けてた。そんな会社おかしいと言われて、心配だといわれて。


でも私が選んだ。「大丈夫」だと言い続けた。


笑えなくなって、病気がちになって、歩行があやしくなって、漫画もゲームも趣味すべてなげうって得た結果がボロボロの精神と体。毎日頭痛薬を飲んでた。数日前の記憶もおぼろげで宗教勧誘なんかにも声をかけられる程度にやばかった。友人から死んだと思われる程度に音信不通になった。

最後はやめたいですって言ったら、話し合いという名の脅迫めいた言葉を数時間にわたり投げかけられた。(クライアントから私を使って続投の話が出ていたから)タイムカードはなぜか消えていた。

最後の言葉は「お前は中途半端な人間だ」「他のところで仕事ができるとおもうな」など、テンプレートのような罵声をたくさん頂戴した。

MIU404をみていて、ふと、思い出したのがこの会社だった。

私の負のいちぶが詰まっている。この会社を。

手取り15万以下の恐怖と会社

私は手取り15万だった。ちなみに会社が保険に入ってないし年金や住民税も給与からの引き落としじゃないからそこから諸々差し引かれて手元に残るのはもっと少なかった。バイトのほうがまだ人らしい生き方ができるなと思った。

まあ、思ったのはだいぶ先で、この頃の私はまだ気づけていなかったのだ。必要とされなくなる恐怖に怯えていた。

会社をやめて、まる二日寝て、普通の暮らしをし始めてやっと頭が回ったときには私は求人広告を片っ端から見続けていた。やめてから1ヶ月も経っていない。「こいつ、全然あかんやん」と思った人は正解。(でもここでも私は気づけなかったので割愛します。)

だいぶ病んでたんです、私。

今ではわかるけれど。当時は全くわからなかった。

MIU404の世界

女性だから、耐えなきゃいけないのか。相談しても見向きもされないのか。我慢しなければいけないのか。そんな投げかけに、辛くなった。

正しいことをした人が正当に評価される表の世界。

そんなものがあったら、良かったのになって言葉が切なくてふと、思い出したのがそんな会社話でした。

会社の非常階段から見る朝日は、いつも綺麗だった。なんでこんなところでこんなことしてるんだろうって、でも頑張れば報われるって祈ってた。

祈ったってなんにもなりゃしない。正当な評価なんてない。

それでも、それでも、MIU404では少しでも光が指して良かったと思った。理不尽な世の中でそれでも優しくあろうとしたのは、できたのは、彼女の本質と、支えてくれた人がいたから。

会社って

仕事先は、私のことなんてただの働くでくのぼうくらいにしか思っていない。社員がボロボロになったって頭を下げれば日常に戻れる。サンドバックがいなくなったところで次がくる。ユーザーだって別に他の数多のプロがいるのだからぶっちゃけ痛くも痒くもないのだ。

そう、別に私が一人で「大丈夫」でいる必要なんて一つもなかった。

今の現状と私

そんなにすぐに性格なんてかわりはしないとは思えど、だいぶ色々許せるようになってしまいゆるーーい人になった。ただ今の時勢が昔を思い出させて「使えないと言われる恐怖」(仕事切り)「仕事をやめたときの先」(再就職しづらい)「値踏みばかりされる不安」(買い手市場)は私をじわじわと侵食してきているように思える。

だからなんとなく今しんどいな、と思うのだ。トラウマって払拭なんてすぐにできるわけじゃないし何年経ったとしても残るものだから。罵倒が蘇ったりするのだ。自分は使えない、能力がない、できない、どうしよう、しんどい、つらい、相手からそう思われてたらどうしよう。

なんて、そうやってぐるぐる考えては自分を潰す。

まあそれでも、昔よりはだいぶマシになった。焦りからエナジードリンクがぶ飲みして仕事を何個も抱えることはなくなった。

それは何があっても少しは耐えられるように色々知識を得て、お金もためたからかもしれないし、身近な人たちが「大丈夫だよ」って言ってくれるからかもしれない。

ただ、いろいろな人が「仕事」を真摯に見つめて羽ばたいているのを見るたびに眩しくて羨ましいと思う自分もいるのだ。昔のようにがむしゃらに仕事をしていた自分を思い出す。

MIU404の話で「分岐点」という話があった。私も思うのだ。

私が折れずに頑張っていたら、今は違っていたのだろうか? なんて。

ただ昔の私は今の私よりもかなりキレキレだったし不安定だったから、どっちがいいかは分からない。私はただ仕事を選べなかった弱い人間で、実力もなかったから「仕事に選ばれなかった」人間なのかもしれないし「仕事以外の何かを捨てられなかった人間」というだけかもしれない。

ただ言えるのは今の自分は嫌いではないということだけだ。

そして多分遠くない未来、私は自分で自分を「大丈夫」と言い続けて死んだだろうな、とも思うので、「休むという行為」と「大丈夫ではない」、ということを学ぶことができて良かったなとは、思うのだ。

支えてくれるのは、身近にいる人達で、家族で、お友達で、例えば趣味で、そういうもののために私は生きたいと思えた。私にとっての仕事の立ち位置が変わった。

自分は劣っている、駄目な人間だ、そんなふうに卑下することは今でもある。でも、当時のようにギリギリまで自分の手持ちにするようなことはない。「しんどいんだけど、どう思う?」と聞いたら返してくれる人たちがいる。相談できる時間と、相手がいてくれるのはとても幸せなことだ。

MIU404でも、最後に吐き出して、それを受け止めてくれる人がいてよかった。あの子にも。分岐点から、やっと、出会えて、良かった。

そんなことを、つらつらと思いだすこともあるよねっていう戯言。






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