鋳巣(す)の修理
頭部管の擦り合わせと製作の為にお預かりしているムラマツの1280番台の古い楽器(M1)
通称"バッタ"と呼ばれる左手親指(C)キーにある亀裂のような部分が当初から気になっていた。
おそらく鋳物の巣だと思うが、何かのきっかけで破断してしまいそうな気がして放っておけなかった。
昔私が工場に入った当時は、鋳物のパーツを削って成形する専門の部署(課)があった。
その後下請けに出すようになったり、鍛造に移行していき、その課はなくなった。
鋳物の巣は作業工程の途中で現れることも多く、非常に厄介である。
歌口の台座(ライザー)でも、仕上げ間近に現れて悩まされることが多々あった。
管にハンダ付けされた状態なので最悪お釈迦になることもあった。
その後鍛造に代わってからはロウ付けの際のロウ目の巣に悩まされるのだが・・・
当初は巣の中に銀箔でも詰め込んで・・と考えていたのだが、0.3mm厚の薄板の小片をさらに二つ折りにして押し込むことができた。
鎬の方には極薄の小片を被せて、それぞれロウ付けすることにした。
本来は銀の含有量の多い二分ロウとかせめて五分ロウを使った方が目立たないのだが、ちょっとリスクがあるのと見栄えより補修が目的なので、早ロウで行った。
ヤスリ掛けし、磨いて完了。
今現在でも十分に古い楽器であるが、これから先も更に末永く安心して使えるようになったのでは・・・