作曲の仕事
クライアントから、メッセージが届いた。
この仕事は少し変わった仕事で、
クライアントが昔、大切な人に贈ったポエムがあり、
今はその人と連絡は特に取らないらしいが、
ポエムを贈った時にその人に、
『毎年、異なる言語で曲をつけてその人にプレゼントする』
と約束したらしく、
今年は日本語、ということで、私の元に仕事の依頼がきた。
バジェットとしては、個人のプロジェクトなので
かなり小さかったけど、
素敵なプロジェクトだったので、引き受けることにした。
ところが、引き受けてからが結構大変だった。
まず、ポエムで、歌詞ではないので、
歌詞にむいていない言葉が並んでいた。
そして、音節なんてへったくれもない状態で、
言葉は変えないで欲しい、と言われた。
頑張ってみたが、
言葉と音楽は繋がっているし、言葉の色が違えば音の色も変わる訳で、
どうしても集中出来ない。
そして何より、渡された歌詞は、
英語の歌詞がちゃんと翻訳された訳ではなく、クライアントの言いたいこととは異なる歌詞だった。
なので、クライアントにもう一度相談して、クライアントの意図している意味の歌詞に変えても良いという承諾をもらって、
私の仕事ではなかった歌詞も結局はすることになり、
さらにようやく作曲にたどり着いた時には、
イギリスのコロナの状況が変わり始めて、
『仕事に行かないと行けなくなる?!』
みたいな、プレッシャーの中、毎日色々なリサーチや今後の生活をどうするかを考える日々になり、
作曲に集中するのが難しい精神状態の中、
とどめに37.7の熱が出た。笑
このプロジェクトを引き受ける時に
『設定されている提出日はとりあえずの物だから、難しかったら教えて』
と言われていたので、
提出日を一週間伸ばしてもらったが、プレゼントを渡す日が決まっているそうで一週間が限界だったので
結局熱が出ている中での作業になった。
かなーり精神的にも、身体的にも辛かったプロジェクトになったが、
提出も何とか出来、お礼を言われてギャラも支払われ、
プロジェクトが終わって2週間
クライアントからメールがあった。
『歌子、
今までクライアントがプレゼントを贈ってきた大切な人は、曲のプレゼントに対して、
(クライアントに希望を持たせないように)
曲のプレゼントに対してコメントすることは町で偶然会った時以外はなかったんだけど、
何と連絡があって、すごく感激されたの。嬉しかったわ。
コラボしてくれて、ありがとうね』
という内容だった。
めっちゃ嬉しい。
クライアントが一番気にしているのが、
大切な人だったので、
クライアントに曲を気に入ってもらえたのはもちろん嬉しかったが、
何より
『大切な人からお礼の返信がクライアントに来た』
というのがクライアントにとって一番嬉しい成功だと思うし、
そうなれば良いなと思っていたから、
本当に嬉しかった。
嬉しいな。
大変だったけど、引き受けて良かったな。
バジェットの大きい仕事はもちろん嬉しいけど、
自分を幸せにする仕事って
こういうものなんだろうな、と思った。
おやすみなさい。