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これぞ演劇!~テンペスト観劇録~(2024.01.12)

■初めまして少年社中。

 昨年5月。毛利演出の舞台で地獄を見た女が、ついに少年社中の本公演に足を踏み入れました。

 実のところ、毛利演出の舞台自体はその前にもう一つ見たことがあって、それはうまく私に刺さらなかった。
(それは御大と小林亮太くんが目当ての舞台だったことから察していただきたい)
 で、去年。期待もせずに、今度は本田礼生くん目当てに行った舞台で地獄に落ちた。

 いやあすげえ役者しかいない、すげえ舞台ってこんなになるんだ……と思いながら、普段穏やかな顔が険しくなったわだっくまの体調とメンタルの心配をした(完全に余計なお世話)

 それで今回である。


■ここでちょっと本田礼生を褒める。

 普段絶対に、本田礼生のことを「推し」と認めない私ですが、本田礼生のことは好きです。大好きです。というか、むしろ尊敬している
 私が「推し」という言葉で本田礼生を語らないのは、そんな簡単なくくりに本田礼生を入れられないから……だと思う。(後、板の上が崇高すぎて、板の上の本田礼生に興味があまりないという理由もあります。本当、板の上だけでお腹いっぱい……

 そんなわけで、私は本田礼生の舞台を積極的に摂取するようにしているんですが、いやあ……仕事の選び方が上手
 結構、舞台をいろいろ見ていると、「この演出家さんの舞台にはこの役者さんがよく出る」みたいなことって多いよなあ……と思っていて。
 まあそれは、自分が仕事をするという立場でも、「この人と仕事がしたい!」みたいなことは多々あるからそれはそれとしていいことだと思うんですが、いつも同じ人とばかり仕事をしていると可能性を狭めてしまうことにもつながるなあ……と思っていて、そのバランスってすごく大事だよなと思うんですよ。(※外野の意見です

 というわけで、私は本田礼生が出たから、「THE CONVOY SHOW」を見て、シアタークリエを知り、鴻上先生を認識し、松崎史也を知り、毛利先生を知った。(ついでに言うとつかこうへいも知ったけど、あれは合わないってことがわかった。それもまたよき。)
 それ以外にももっといろいろな経験をさせていただいているから、本田礼生まぢでありがとう。私の観劇ライフを充実させてくれてありがとう。
 おかげでお金足りないけど、ありがとう。

 というわけで、今日もまた私は新たな舞台の地獄の扉を開けた。いやっふー!


■ついでに鈴木拡樹御大の話もする。

 私が御大のことをちゃんと知ったのは、舞台 刀剣乱舞「悲伝 結の目の不如帰」であった。最悪である。
 当時、舞台刀剣乱舞のことなんてほとんど知らなくて(ゲームはやってた)、観劇初心者なのに多ステするバカなオタクは軽い気持ちで申し込んだ。ローチケ先行に

 今ならわかる。普通当たんねえからな、そんなもん。
 その後一切、ローチケ先行は私にチケットをくれたことがないんだけど、その時は当たった。それしか申し込んでないのに当たった。
 そして私は思った。
「案外とチケット取れるものだね」

 そんなわけNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!

 そして、ついうっかり当日大阪在住だったのに、明治座までホイホイ見に行った私は、地獄に落ちたのである。
 何が悲しくて、初めて行った舞台で、真っ白になって消えていなくなる三日月宗近を見せられなければならなかったのか……地獄だ……ここは地獄だ……
 私はあの地獄の光景を一生涯忘れないと思う。恐らく、私が見た表現の地獄の最高峰として、生涯忘れることはないだろう。私はあの地獄に落とされた日を忘れない。Never forget。(めっちゃ褒めてる)

 その。その時の三日月宗近を演じていたのが鈴木拡樹御大である。

 で、ですね。
 初見がそれだったんですよ。そうなったらどうなると思います?

 それを超えることが難しい っていう状況が発生します(私の中の話です)

 誰しもが初見を超えるインパクトってなかなか持てないと思うんですよ。
 創作物は最初の1回が一番面白い。先入観なく楽しめるのは、最初の1回だけである。

 なので、私の見る御大は、私の中の三日月宗近を超えられなかった。

 ところがどっこい。

 超えて来たよ! 超えて来たよおおおおおおおおおおおおテンペスト!!!!!!

 いやあ、正直、私の中の三日月宗近に対する信仰は、「舞台 刀剣乱舞」という世界観も相まって、ストーリーも相まって、作り上げた実態だけではない偶像だったと思う。真っ白な三日月宗近なんて、それだけで信仰の対象になったってしょうがない。あれを目の前に提示されたら拝むよ。

 でもテンペストは、特別なことは何も起こらない。(いや状況そのものが特殊だとは思うんですよ。シェイクスピアだし)人間と人間がぶつかりあう感情の物語である。
 そこに刀だとか折れるとか、真っ白な装束だとか、特殊なものは何もない。あるのは人間だけ。

 それで三日月宗近を超えて来た……。

 御大すげえ……。

 なお、私の初見のテンペストの感想は

「御大がジーニー……」

 でした。


■さて、物語の話をしよう

 全然関係ない話を延々とし続けたせいで思い切り長くなってしまっていますが、物語はとある25周年を迎えた(決して大きくはなさそうな)劇団の話で。才能のある主演役者を失って空中分解をしかけてなんとか持ち直した劇団に、昔追放された演出家が復讐をしかける……みたいな話です。(ものすごいざっくり)

 この復讐劇であるのが、シェイクスピアがシェイクスピアであるが所以なんだろうけど(ごめん、えらそうに言ったけどシェイクスピアよく知らない)、まあそんなことはいいんだ(え)。

 この舞台の本当にすごいのは役者のエネルギーのぶつけ合いにあって。
 そして、観客まで巻き込む芝居のカタルシス……!!!!

 まぢで舞台の上にうまい人しかいないってこういうことなんだよなあ……
 こういうことなんだよなあ……

 例えば、舞台で合唱する。
 そうすると会場中の空気が震えて、音(声)の圧を感じる。
 まさに圧。
 すべての役者がエネルギーを持って存在していて、そのエネルギーを存分に、舞台上でぶつけ合う。そして、それに客席を巻き込んでいく――

 ああ、これがシェイクスピア……
 そしてこれが、少年社中……

 という気持ちがすごくすごくすごくした。

 私の求めていた演劇はこれだ! という思いがある。
 オシャレなプロジェクションマッピングも何もないし。
 あるのは役者と人力で動くセットと素敵なお召し物。

 そういう舞台。

 今回、舞台はサンシャイン劇場だったけど。
 これこそ、もっと小さい舞台で見たら、めちゃくちゃ映える舞台だし。
 そんな距離で浴びたら死んでしまう舞台。

 そう、まさにカタルシス。
 観客を一緒に持ち上げていく力がその舞台にはあった。

 嵐に巻き込む力があった。
 そしてその「舞台」という世界で起こる「ツライ」も「嬉しい」も「悲しいも」「悔しい」も全部そこにあって。
 最後、「優しい」まであった。

 帝劇の後方の舞台から感じる圧。
 それと同じものを、帝劇よりぐっと近い距離で感じた。
 人数の少なさを距離でカバーした感じになってるけど。
 でも、圧の強さは決して負けていなかった。

 そんな舞台だった。

 人間がありとあらゆる感情を爆発させて、ぶつかり合う中に。
 御大だけが俯瞰で浮いている(妖精だから)。
 そんな不思議なバランスで成り立つ、芸達者しかいない舞台を是非、見るといいと思うよ。
 絶対に後悔しない。

 これは、箱のサイズとのバランスの取れた、最高にいいエンタメだった。
 もう1回見たい(チケットー)

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