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コーヒーは科学である ~抽出器具による味の違い~ ペーパードリップ編

 コーヒーってなんか難しいと思いませんか。というか、難しいと思います。コーヒーの奥深さに魅せられて9年くらい経つのに、いまだに「なんなんだこれは」と思わされます。この"難しい"と印象付ける理由のひとつとしてコーヒー界隈の語彙の少なさがあると考えています。「ブルーベリーのような風味」とか「チョコレートのような後味」とか比喩ばっかり。「は?」って感じですよね。
 コーヒーというのは、要するにただの焦げ豆水なんですけど、美味しいんです。美味しい焦げ豆水なんです。そこで今回は、焦げたお豆からコーヒーというお水を取り出す抽出器具について、できるだけ具体的に説明しようと試みました。

 この記事はFeedforce Advent Calendar 2019の14日目にあたります。前日は冨田さんによる「Feedforce のエンジニア行動指針作りをファシリテートした話」でした。この話は、FFLTと呼ばれる社内のプレゼン大会でも発表されていました。発表が面白かったのでプレゼン大会後の二次会でも小一時間、どうやってファシリテートしたのか、それにまつわるジレンマや、マインドセットの話、絶対曲げないルール、、、そんなことを質問攻めさせていただき、「素敵だなぁ、かっこいいなぁ」と思っていました。富田さんのようなファシリテーションが出来るようになりたいですね。この記事では、普段のファシリテーターが、どんなことを考えながらワークに取り組んでいるのかなど、詳細に書かれているため、グループでワークされる機会のある方は一見の価値ありです。是非!

 本題に戻ります。なぜ今回、抽出器具について話すのか。
"なんかよくわからない"コーヒーの世界でも、理屈でイメージしやすいのが抽出器具による味の違いだと考えているからです。(あと、コーヒーを自分で淹れ初めたい人を最初に悩ませるのは、抽出器具の種類の多さのような気もするから・・・)
 本記事は、「コーヒーを淹れてみたい人」「既に自分で淹れてる方で次に買う器具に悩んでる人」には、今後に買う時の参考となってほしい。「コーヒーって難しいなって感じてる人」には、少しでもわかった気分になってほしい。そんな記事です。

 さて、ここで但し書きタイムです。
※1 筆者はコーヒーの専門家でもなく、趣味でいろんな抽出器具を集めている人です。以下に書かれていることは、ほとんどがフィーリングと妄想で書かれています。実際の計測値とは乖離しているかもしれませんので、あしからず。
※2 今回紹介する抽出器具は、筆者が実際に所持し、使用した経験を元に書いています。

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 コーヒーの味を左右する要素はたくさんあります。豆の産地・品種・質・新鮮さ・煎りの深さ、お湯の温度・硬度、豆の挽き方、抽出器具の種類等々...キリがなさすぎで、レーダーチャートで表したらただのダーツ盤になってしまうんじゃないかというほどです。
 そんな中でも、抽出器具は種類を変えるだけで味の変化を実感でき、その要因も目で見て感じることができるため、理解しやすいのではないかと思います。

そもそも抽出って?

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 コーヒーが如何にしてコーヒーになるのか、ドリップ形式の抽出過程を参考にしてみます。お湯を上から注ぐと、コーヒー豆の層を通り、豆の成分がお湯に溶け出して、一緒に出てきます。これがコーヒーです。
 コーヒーの味を構成する成分である旨味、苦み、甘み、酸味、渋み、えぐみ、雑味の順番でお湯に溶けて出てくると言われています。後半の渋み・えぐみ・雑味がコーヒーをまずくさせる要因だと言われています。いかに、好きな成分が出ているうちに抽出を止めることができるか。それが味を左右する鍵となりそうです。この基本を押さえた上で、好みの味を出せそうな抽出器具はあるのか、見ていきましょう。

ペーパードリップ

 本記事では、日本で最も一般的な抽出方法だと言われているペーパードリップ器具(ドリッパー)を紹介します。各ドリッパーに共通してある要素は「溝の具合」「穴の数・大きさ」です。他にも様々な要素がありますが、まずはこの二つの違いを押さえておくといいでしょう。

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 ドリッパーを上から見ると、内側に様々な模様のがついているのに気づくと思います。この溝(リブとも呼ばれる)は紙フィルターとドリッパーの間に隙間を作る役割を果たします。隙間がコーヒーの通り道となり、ドリッパーの中に留まる(液だまり)のを防ぎます。お湯がドリッパー内に留まりすぎると雑味などの要らない部分まで溶け出してしまうので、非常に大事な要素だと言えます。また、コーヒー豆にお湯がなじむ工程でガスが発生し、フィルターは膨らみます。その余地をどれくらい用意するかも溝の構造に懸かっています。
 そして、ドリッパーの真ん中にある黒い点が抽出穴です。ここからコーヒーが下に落ちていきます。穴の数や大きさによってお湯が下に落ちる速度が変わります。早ければ溶け出す成分の種類も少ないので、スッキリした味になります。遅ければまたその逆も然りです。

それではドリッパーの紹介をしていきます。

ペーパードリップ:メリタ式陶器ドリッパー

特徴:
・溝は真ん中あたりまで
・穴は中央に一つ
・まず買うならこれかカリタ式

 メリタ式のドリッパーは穴が一つのため、どんなにお湯を注いでも一定のスピードでお湯が落ちていきます。そのため、抽出スピードは遅めになります。淹れる人の技術に左右されないため、毎回安定した味のコーヒーを抽出できます。初めてコーヒーを淹れる方で「失敗したくない」「できるだけ楽にいい感じのコーヒーを淹れたい」と言う方には、オススメのドリッパーです。
 ただ、私見ではやや過抽出(雑味なども抽出される)になる傾向があると思います。昔ながらのコクを感じる、日本的な喫茶店テイストをお好みの方は雑味も含めて楽しめると思います。

 ちなみに、今回紹介した陶器フィルターだけでなく、メリタはアロマフィルターというドリッパーも出しています。抽出穴を底面からやや高い位置に移動させることで、抽出の最後に出る雑味を意図的に液だまりさせる仕組みになっています。良いとこドリップですね。

ペーパードリップ:カリタ式三つ穴ドリッパー

特徴:
・溝は壁の上部まであり
・穴は三つ穴
・メリタ式に比べてスッキリだけど、それでもコクのある味

 カリタ式のドリッパーは穴が三つあります。先ほど紹介したドリッパーを上から見た図の左側ですね。三つ穴なので、メリタ式に比べるとお湯の落下速度は早めです。こちらも、お湯のスピードが一定なので、ある程度は安定した味のコーヒーを淹れることができます。また、溝も上部まであるので、フィルターからの空気抜けも良いです。こうして、液だまりの発生を防いでいることが、味のスッキリさを生んでいる気がします。
 こちらも初めての方にオススメで、コーヒーがコクのあるものが好き(メリタ式)かスッキリめの物が好き(カリタ式)かで選ぶと良さそうです。

 カリタ式もメリタ式も台形型ドリッパーと呼ばれており、ドリッパーにセットする紙フィルターが同じ台形をしているため、どちらか一方を既に持っている人は、共通の紙フィルターを使用できる点も評価高いですね。

ペーパードリップ:ハリオ V60ドリッパー

特徴:
・溝は壁の上部までスパイラル状に入っている
・底面に大きい一つの穴
・自分で味をコントロールし始めたい人向け

 ハリオのV60ドリッパーには底面に大きな穴が空いています。穴の大きさによる、湯落としのスピード調整はできないため、お湯を注いだ分だけそのままのスピードで落ちいていきます。裏返してみれば、自分で湯落とし速度をコントロールできます。
 溝も深めです。これは先述したように空気抜けする隙間の役目を果たしています。それ以外にも、お湯を注いだ時に豆から発生するガスによって粉全体が膨らんだ時の膨らむ余地にもなります。

 コーヒーに拘り始めると、様々な種類のコーヒー豆を買って試すようになるかもしれません。そうなると豆の種類や煎り度に合わせたドリップをしたくなりますよね。そんなときにハリオのV60ドリッパーはオススメです。
 さらに、ハリオV60は上であげたカリタ式、メリタ式に比べてスッキリした味が出ます。このスッキリの部分に豆の味の違いが出ることが多いです。先日、サードウェーブ(注1)系のコーヒー屋が多数出店しているイベントに行った時、9割以上のお店がこのハリオV60ドリッパーを使用していました。豆によって淹れ方を調整できること豆の特徴が味に出ることが支持される理由なのかもしれません。

注1:サードウェーブとは?
・・・コーヒーの味を楽しむことを日常にもたらしたスターバックスなどのセカンドウェーブ系に次ぐコーヒーショップの流れ。
   コーヒー豆農家や豆の種類、品質に重きを置いた、豆本来の味を楽しむことを目的とした文化の流れ。
   様々な豆をブレンドしない、単一種だけを使用するシングルオリジンと呼ばれるスタイルであることが多い。

 ちなみに、私も日常的に飲むコーヒーにはハリオV60を使うことが多いです。良くも悪くも飲みやすい味なので沢山のコーヒーを飲みたい人にもぴったりなのかもしれません。

ペーパードリップ:カリタ ウェーブドリッパー

特徴:
・専用の紙フィルターに大きな溝
・カリタ式三つ穴
・スッキリした味を安定的に淹れたい方に

 商品写真では写ってないので分かりづらいですが、ウェーブドリッパーの特徴は、その名にもあるようにセットする紙フィルターの側面が波打っていることです。穴はカリタ式にならって三つ穴ですが、ドリッパーとフィルターの間に大きなスペースがあるため、お湯の落下速度は早めです。

 このドリッパーでいれたコーヒーの味には丸みがあると言われています。そう言われる所以としては、ドリッパー内のお湯がウェーブをつたって底面に落ちて、三つ穴から出るまで、液だまりの時間があるからです(筆者は目視で液だまりを確認しました)。同じく底に溜まる台形ドリッパーと、味に違いが出るのは、底面の形が(台形ドリッパーのように)細長い四角形ではなく、平たい円形をしているため、溜まった液の触れる豆の量が多いからだと思います。そんな特徴からも、ウェーブドリッパーでは抽出に用いる豆の挽き方も少し粗めが推奨されています。

 ウェーブドリッパーは「台形ドリッパーのようにガツンとした味ではなく、スッキリ目が良くて、安定した味を出したい人」にオススメです。

ペーパードリップ:ケメックス コーヒーメーカー

特徴:
・おしゃれ
・溝はほとんどない
・穴という概念もあまりない
・おしゃれ

 ケメックスです。「なんか、ええやん?」の代表格です。注ぎ口兼湯通し用の湯捨て口が側面にあるのみで、溝のようなものはありませんし、抽出穴もないようなものです。フィルターの先端一箇所に集中して抽出されるため、こちらも安定した味が出る気がします。抽出されたコーヒーは透き通っています。専用フィルターが厚紙でできてるのですが、注意しないといけないのは、このフィルターに紙独特の香りが付いているためしっかり湯通しをしないと紙の香りが残ってしまうということです。

 ネットや本での評判を見るにしても、やはり見た目の話が先行していることから、味以上に求められているものがあるのだと思います。アメリカで誕生した背景を加味して、アメリカのコーヒーショップのブログなどからケメックスの使い方を調べてみたのですが、
・お湯の一投目が終わったらマドラーでかき混ぜる
・お湯はフチのギリギリまで入れてお湯を落とす
最後の一滴までお湯が落ちるのを見届ける
・まず、フィルターへの湯通しはしない
などなど、破茶滅茶な内容で統一性もなかったため、やっぱり「なんか、ええやん?」なのだと思います。

 コーヒーは嗜好品なので、コーヒーに何を求めるかは人それぞれです。「目から豊かになりたくて、一定のケメックステイストを出したい方」にはオススメです。かくいう私も、たまにケメックスを使っては粋に浸っているので、コーヒーの世界ってわからないですよね。

ペーパードリップ:三洋産業 CAFEC フラワードリッパー

そんな顔しないでください。まだ紹介は続きますよ。

特徴:
・溝の形が花びらのよう
・抽出穴はハリオ同様大きな一つ穴
・ネルドリップ(後述します)に寄せた味を出したい方に

  フラワードリッパーの形は先述のハリオV60とあまり変わりませんが、特筆すべきは内側の溝。花びらのように形作ることで、ネルドリップのような、"コーヒー豆にお湯を注いだ時の膨らみ"再現しています。そのような構造を持ちながらも、ハリオV60同様に液だまりしない抽出穴なので、湯落としのスピードをコントロールできます。ハリオV60で抽出した際、お湯が溝をつたって落ちるところが見られましたが、フラワードリッパーではそのような光景が見られなかったため、こちらの方がしっかりフィルターの中を通ってお湯が出てくるようです。私はハリオV60よりもフラワードリッパーの方が味のコントロールがしやすいように感じています。

 私は、来客がある際はネルドリップでコーヒーを淹れるのですが、急な来客の場合はフラワードリッパーでサッと淹れています。それくらいの手軽さと味のコントロールの出来具合がCAFEC フラワードリッパーのオススメポイントです。

番外編:ネルドリッパー

特徴:
・紙フィルターよりも目の粗い布フィルター
・布の膨らみにより、コーヒー豆の蒸らしを最大限にできる
・ゆっくり時間をかけて他にはないコーヒーを楽しみたい方に

 今回はペーパードリップ編なのでイレギュラーですが、フラワードリッパーで触れたので紹介します、ネルドリッパーです。名前の通り、フィルターにフランネル素材を利用しています。コーヒーの望ましい成分だけを抽出するのに大事な"蒸らし"を全体的に行えます。
 また、布フィルターは紙フィルターに比べて目が粗いです。そのため、紙フィルターではカットされていた油分(コーヒーオイル)や微粒子を通すと言われています。それによって、香り高くまろやかな口当たりのコーヒーが抽出できるのです。

 しかし、ネルフィルターは管理が少し面倒なため、普段使いに適しているとは言えません。使い終わったフィルターは煮沸してコーヒー粉を取り除き、臭いが残らないように濡れたまま水を入れた容器で、冷蔵庫に保存する。そんなことをしなれければなりません。
 一度、ネルドリップを体験すると、その工程すら愛おしくなってくるのですが、敷居が高いのはもちろんなので、少しの覚悟が必要です。

さいごに

 嗜好品には、どれにでも言えることなのですが、”自分で自信を持って納得すること”が一番だと思っています。だから、ケメックスだってアリだし、楽チンなお手軽ドリッパーでもアリなんです。コーヒー界で言われる「美味しくない」は「まずい」という意味ではなく「自分の口には合わない」という意味合いの方が多いです。だから、隣の人と"好きな味"が違っていても「あなたはそういうのが好きなんですね、私はこういうの。」そんな優しい世界が広がっています。6000文字以上にもなるこの記事を読み終えたあなたは、既にコーヒーの世界に片足踏み込んだようなものです、もう一歩、勇気を持って踏み出してみませんか。

続くよ

 今回はペーパードリップ(とネル)に絞って抽出器具を紹介しました。それ以外にも「モカエキスプレス」「フレンチプレス」「水出し」「インド式コーヒー(僕はコーヒー版レッドブルと呼んでいます)」「サイフォン式」「セラミック」等々、まだまだ紹介したいものは沢山あるので、また続編へと続きたいと思います。

Feedforce Advent Calendar 2019、明日は佐藤さんが「個人でgemを作る流れについて」話してくださるそうです!Rails関連は一切触ったこともないのですが、Rubyのライブラリを自分で作るってことなのかな🤔?それってすごくないか!?と今からワクワクしています。明日を楽しみに待ちましょう。

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