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核兵器禁止条約は無用の長物

2021(令和3)年8月6日広島は76年目の歴史を迎えた。第二次世界大戦は史上初原子爆弾が実戦投入された戦争であった。アメリカはアジア差別と対ソ抑制のために落としたとも言われている。こんにちアメリカの世論は徐々に原爆投下への考えが変化してきているが、未だに戦争終結の投下という認識があるのも事実。さて、その原爆の日を迎える度に言われるのが核兵器禁止条約。今回の話は核兵器禁止条約について述べようと思う。


核兵器禁止条約

(緑が締結国 黄が批准国 wikiより)

2017年に国連にて採択され、2021年1月に発効された核兵器禁止条約。この条約は史上初核兵器そのものを包括的に禁止した条約である。しかし、私は核兵器禁止条約は無意味な存在だと断言する。それは何故か?核兵器禁止条約は理想論に基づく条約であり、国際社会の現実に沿わない条約だからだ

(毎日より)

まず問題なのが、核保有国及び核の傘にいる国が批准及び締結しておらず、非核保有国しか条約に加盟してないという点。もしも核兵器禁止を国際社会から無くしたいのであれば、核保有国及び核の傘にいる国をも巻き込んで条約を発効すべきであったが、理想論者は早急な発効を急いだために、このような結果となった。非核保有国のみしか加盟してない核兵器禁止条約があったところで、核兵器廃止への道は全くないのは明らか。

その次の問題点として、核兵器をめぐる闇ルートへの対処だ。その代表例として言われているのがパキスタンである。パキスタンはインドと全面戦争を何度も行った国である。インドは中国やパキスタンによる脅威から守るため核開発を行ったが、パキスタンも同様への道を歩んだ。その中心的人物が「核開発の父」と言われ原子核物理学者のカーン博士である。

(画像はParsTodayより)

カーン博士は核の闇ルートを構築したと言われており、1998年のパキスタン初核実験を成功させた。カーン博士の証言によれば、イランや北朝鮮などに核を売ったという。もしそれが事実ならば、核兵器は闇ルートにおいて国家同士が繋がっており、いづれテロリストへ渡る危険性があるということだ。また北朝鮮による核開発とイランによる核開発は闇ルートで取引されているという。この闇ルートを国際社会が取り締まる法的な枠組みをやらなければ、テロリストや今でも核兵器を保有したい国々が闇ルートを利用するだろう。

そして最大の問題が

NPT条約(核拡散防止条約)

(画像はShareAmerica)

である。以降の表記はNPT条約とする。
この条約は東西冷戦時代の1968年に当時のアメリカ・ソ連・イギリスによって署名され、1970年発効された。この条約の特徴は以下の通りである。

1.アメリカ・ソ連(現ロシア)・フランス・イギリス・中国の核保有国以外は核兵器保有禁止

2.核保有国による核兵器の他国への譲渡禁止

3.誠実に核軍縮交渉を行う義務

4.非核保有国の核兵器の製造と取得の禁止

5.国際原子力機関(IAEA)による保証措置を受け入れる義務

6.平和のための原子力については、条約締結国の権利として認められる。

7.5年毎に会議を開き、条約の運営状況を検討

このNPT条約についての問題点は先ず核保有国以外か核兵器保有禁止を明記してることである。では何故それが核兵器禁止条約の問題点にもなるのか。核兵器禁止条約は包括的に核兵器そのものを禁止した。しかしNPT条約は核保有国は核保有を認められ、非核保有国の核兵器保有は禁止されている。つまり、核兵器禁止条約とNPT条約の双方の存在は矛盾しているのである。左派は一方的に核兵器禁止条約批准を叫ぶが、NPT条約の問題点を論さずに無視。これでは核なき世界が来るわけがない。
一方でNPT条約が核軍縮への道を開いたかと言えばそうでもない。先述したように、インドとパキスタンは核兵器を保有し、北朝鮮もNPT条約に批准していたが脱退し核兵器を保有。またイランは核開発への道を進む。NPT条約で認められた核保有国以外が、核兵器禁止されているのは国際社会の現実を無視し、国連常任理事国の大国の論理が蠢くものであった。
もしも核兵器禁止条約を有効的なものにしたいならば、先ずやらなければならないのはNPT条約を廃止するか、見直す必要がある。


最後は日本政府の立場をとりあげる。左派及び世論が全く理解していないからだ。きちんと触れることによって日本政府の考えが明瞭するだろう。
日本政府はNPT条約に1970(昭和45)年署名し、1976(昭和51)年批准した。日本政府の「核なき世界」はこのNPT条約を基準にしている。では核兵器禁止条約への認識どうかといえば、外務省が公式に日本政府の立場を言及している。

(外務省の公式サイトより引用)

「日本は唯一の戦争被爆国であり、政府は、核兵器禁止条約が目指す核兵器廃絶という目標を共有しています。一方、北朝鮮の核・ミサイル開発は、日本及び国際社会の平和と安定に対するこれまでにない、重大かつ差し迫った脅威です。北朝鮮のように核兵器の使用をほのめかす相手に対しては通常兵器だけでは抑止を効かせることは困難であるため、日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要です。

核軍縮に取り組む上では、この人道と安全保障の二つの観点を考慮することが重要ですが、核兵器禁止条約では、安全保障の観点が踏まえられていません。核兵器を直ちに違法化する条約に参加すれば、米国による核抑止力の正当性を損ない、国民の生命・財産を危険に晒(さら)すことを容認することになりかねず、日本の安全保障にとっての問題を惹起(じゃっき)します。また、核兵器禁止条約は、現実に核兵器を保有する核兵器国のみならず、日本と同様に核の脅威に晒(さら)されている非核兵器国からも支持を得られておらず、核軍縮に取り組む国際社会に分断をもたらしている点も懸念されます。

日本政府としては、国民の生命と財産を守る責任を有する立場から、現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら、地道に、現実的な核軍縮を前進させる道筋を追求することが必要であり、核兵器保有国や核兵器禁止条約支持国を含む国際社会における橋渡し役を果たし、現実的かつ実践的な取組を粘り強く進めていく考えです。」

とある。つまり日本政府は安全保障も踏まえれば核軍縮こそ現実な路線という認識だ。よく左派は核兵器禁止条約に批准することこそ被爆国としての重要な認識であると主張するが、しかし核保有国と非核保有国との交渉の橋渡しとしては意味をなさないものであり、現実の社会状況を踏まえていない。ましてや日本政府はNPT条約において積極的に核軍縮への取り組みを行っている。左派はそれを理解することすらしない。

国際情勢やNPT条約の議論を無視して理想論を振りかざすのは愚か。核兵器禁止条約は理想論の塊であり無用の長物。包括的に禁止しただけでは何も変わらない。闇ルートをどうするか、NPT条約の有無をどうするか、核保有国を非核保有国へ移行するための交渉をどうするかを真っ先に議論すべきである。左派は現実的なモノの見方をして欲しい。

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