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窓越しの世界・総集編 2016年9月の世界
9/1【長い一日】
モーニングからランチタイムまで、旅のことを振り返り筆をとる。どっと駆け抜けた九日間がなんだか夢のようだ。旅の後にいつも感じる、ちょっとした時空の歪み。
駆け足で過ぎて行ったが、もっと長い時間のように感じられ、つい最近のことであるが、もう随分前のことのようにも思える。
夜のリハーサルまでの、今日はとても長い一日。
9/2【朝の記憶】
良い目覚めだった。自然と散歩へ行こうという気分の自分に驚き、うれしくなる。コンビニで珈琲とクロワッサンを買い、蓮の咲き乱れる池のある公園まで。
気分に任せて歩きすぎたので、結局帰宅後、もう一度寝てしまう。
おかしなもので、もう一度起き上がった時、今朝の散歩がまるで昨日の記憶のよう。
9/3【良い目覚め】
本日も良い目覚め。昨日の教訓を生かし、歩く距離を減らす。珈琲と、今日はフィッシュサンド。帰宅後は読書をしながらゴロゴロする。19:00の開演まで、穏やかに過ごそうと思う。
涼しい風が窓から入ってくる。蒼蒼とした空に、小振りなゴーヤが2つぶら下がっている。何となく写真を撮る。
今夜は喧騒の街と、地下のステージ。スポットライトをイメージすると身震いするが、よい歌が歌えればすべて巧く行くということだけは、違いない。
9/4【何でも無い一日】
本を一冊だけを持って、ぶらぶらと歩く。ポケットには携帯と財布。バスに乗り、なんとなく隣町まで。
夕方になると電話が鳴り、駅の方へ向かう。待ち合わせ食事をして、今日の何でも無い一日を話すだけ。
9/5【guzuriまでの道のり】
guzuriへの客人を駅に迎えに行く事が少なくなった。何となく私から切り出さないからだ。
20分程の、ここまでの道のりを楽しんでもらいたい。そんな気持ちがある。
遠回りしてしまった人。以外と近いですね、と言う者。いろいろなタイプがある。
今日は前者。
9/6【ループトーク】
タクシーを使って、お気に入りの店まで。
今夜もなかなかオーダーの声が届かない。ふと、店主の耳が遠いのではなく、厨房内の音環境が想像以上に悪いのだと思い当たる。大型の冷蔵庫にエアコン、換気扇、油の跳ねる音。想像力を巡らすと外の音などほとんど聴こえそうにない。
そんなことも頭をよぎりながら、同郷のよしみと久しぶりの食事。
音楽家という共通項は、延々なループトークとなる。
9/7【時々レーダー】
今夜から明日にかけての台風13号の接近を、スーパーマーケットのアナウンスが延々と繰り返す。今日のうちに買っておけ、とのとこ。
妙な天候がつづく。マイブームである雨雲レーダーからますます目が離せない。
一日ギターを弾く。時々レーダー。
9/8【今、ここでは】
朝の散歩。アスファルトのところどころに、昨晩の雨の痕。いつもの木陰のベンチは濡れていて座れないが、この時間で既に日に晒されているベンチは問題なし。腰を下ろして朝食をとる。
一羽のカルガモが葦の茂みに消えていったり、鯉のウロコが水面に触れて波紋が広がる。そんな眺め。
急に陰ったなと思い、見上げると、この先暫くは日陰が続きそうな分厚い雲が広がっていた。
ここでは、世界は穏やかに流れている。
たった今、ここでは。
9/9【私を取り戻す行為】
はいつくばって床を拭くことの、なんと気持ちのよいことか。
清掃の大切さ。わかってはいるけれど、毎日は難しい。
日々に追われ、日々に流され、日々に犯され。静かに乱れてゆく。
清掃に始まり、清掃に辿り着く。
清掃とは、私と向き合うこと。
清掃とは、私を取り戻す行為。
9/10【たっぷりと】
綿飴みたいになった古い蜘蛛の巣は、一体いつごろからこんな姿になるのだろうか。天井の隅に浮かんでいたり、椅子の裏側にぶら下がっていたりする。
ずいぶん時間のたったであろうそれを、ところどころに見つけては毎度「綿飴みたいな蜘蛛の巣」だな。と思う。
時間もするべきこともたっぷりとある。
9/11【ぐずついている】
相変わらず体調がぐずついている。
ところで、2001年のこの日のことはよく覚えている。テレビの中での映像に、想像力を巡らせることは難しかった。
私にとっては世界平和よりも考えなければならない問題は山積みなのだが、どういうわけか次期大統領を占う本に取り付かれている。アメリカが日本に及ぼす影響を知ることは面白い。実際私の体験している日本史は、アメリカとともに歩んできた日本だ。それを否定することは出来ない。
ただ、これ以上戦火にまみれた世界は困る。渦中の国になってしまったら尚更。
世界平和も私も、依然としてぐずついている。
9/12【大掃除】
「あー」と声を出す。
物の無くなった部屋は響く。隣の部屋は家具だらけだ。
同じ場所の行ったり来たりを何度も繰り返す。
大掃除は続く。
9/13【心地よくなってゆく部屋】
朝からの雨も、もしかしたら大掃除には良かったのかもしれない。程よく湿った空気で、いくらかは埃の立ち方がマシだったのだろうか。
午後には雨が上がり、はかどった。順調に進む作業、快調に疲労を重ねて行く私たち。
比例して心地よくなってゆく部屋。
完全な土足禁止状態はおよそ3年ぶり。
9/14【あれから18年】
蔵前、馴染みの無い街。
余白の見当たらないほどに密集するビル群。そして古い建物が多い。夜の隅田川の向こうにはスカイツリーがシックなライトアップでそびえている。屋形船の電飾の方はとっても艶やか。
上京したての頃、東京と言えばこの辺りを想像していた。
あれから18年の歳月。
9/15【切りをつけながら】
ゆっくりと身支度。なにもかもゆっくりな一日。
guzuriのリニューアルも佳境に入っている。今度の月曜に大きな下駄箱が届くまで、作業はもう一山。
居心地は格段に良くなっている。まだまだ切りがないけれど、切りをつけながら、繋げていく。
9/16【年に一度の参拝】
午前中の雨も上がり、湖畔には穏やかな波が打ち寄せている。
山を越えて、年に一度の参拝をする。
私がどこにいて、何をしていようが、変わらずに待っていてくれる人や場所がある。そんな存在を感じられる瞬間、そういうものが私を立たせてくれている。
9/17【塗り時々ギター】
ゆっくりと床を塗る。二度塗りまでの時間は、ギターを弾く。
三度塗りまでの時間も同じ。
今月は、とにかくゆっくりとしている。
9/18【同じような顔で】
大渋滞の国道を避けて茶畑の道を走っていると、大気の中に水分が充満しているのがわかる。
隣町の大型ホームセンターは休日の顔で、家族連れが多い。スターバックスのドライブスルーに行列する車や、レンタルのトラックに荷物を積み込むお父さん。
程なくして、ぱらつく雨。誰もが予感していたのだろうから、皆同じような顔で空を見上げる。
9/19【手を取り合う必要】
大きな下駄箱が届く朝。品物の良さを確認して満足しているが、とても一人では動かせない。たった、数センチ移動したいだけなのだが、引きずることもままならず諦める。
一人では出来ないという現実を目の当たりにすると、いよいよ手を取り合う必要がありそうだ。他の様々な事においても。
9/20【台風の夜】
よく降る。台風が迫る。風はまだそこそこ。
夜になると、激しい雨と風。雨粒が織り成す音楽が聴こえてきたから、少しの間だけ耳を澄ました。いつかのカリンバのようだ。
スーパーで買った豚タンをつまみにビールを傾けながら、鮭のクリームソースパスタを作る。そんな台風の夜。
9/21【ジャンク】
台風一過の青空とはほど遠く、秋雨前線が停滞している。明日も雨らしく、遠出や行楽には向かなそうな陽気らしい。
早朝のロイヤルホストで、昼食は取らなかった。夜はマクドナルドのドライブスルー。ポテトとコーラ。なかなか餃子が巧く焼けない夜。
9/22【クレマチスの丘】
芝生の美しい庭園。雨は上がっているが、曇り空。夕暮れも、夜になる経過も、曖昧な空。
野鳥のさえずりが拡声器でも使ってるのではないかと思うくらい良く響き、もしも晴れていたならば、駿河湾が望めるに違いない丘の上。
9/23【良くなっているはず】
時間を置いた方が良い事がある。時間をかけてはいけない事もある。
そのどちらとも、何度も誤っているのかも知れないが、少しずつ良くなってきているはず。
9/24【襟を正す】
人と上手くやって行くには、妥協をすること。
それは時に正しく、時に大きな過ちとなる。
曲げてはいけないところを、随分曲げてきてしまったので、今一度襟を正そうと思う。
9/25【隙の無い空間へ】
久しぶりの太陽。昨日から取り掛かっていたテラスのペンキ塗りを仕上げる。
この頃は、もう何年も手を付けていなかった場所に手を入れている。少しずつ、隙の無い空間へ向かって。
一度に沢山やろうとしてはいけない。そうしたいが、そうしてしまうと、結局続かない。
9/26【或る食堂】
白く重い扉の向こうは、想像よりも奥行きがあり、明るく澄んだ空間だった。
目に映るものに、行き届いた人の気配を感じる時、私はとても嬉しい贈り物をもらった気持ちになる。
私の糧になるものだ。
9/27【交差するメロディー】
真夜中に目が覚める。夜明けまでは3時間ばかりあるだろうか。眠れないので、映画を見始める。
白みだす空と、私のギターの音色と、アクションシーンが交差する。
早朝の公園からはラジヲ体操のメロディー。
9/28【19時に就寝】
片付けをしたつもりが、結局これは移動しただけだと気がつく場合が多い。もう随分とそのスパイラルの渦中だがそろそろ終わりにしたい。
この一ヶ月はその為にあったのだと、片付いてゆくguzuriを見ながら思う。
昨日の睡眠不足からか、目蓋が重たくなり、19時に就寝。
9/29【午前5時から】
5時に目覚める。外へ出ると朝の匂い。ギターを手に、あれよあれよと11時だ。
引き続きテラスの片付けを行い、新しい両開き扉の蝶番つける。
またギターを手に取って、理想的な声を探す旅。
9/30【幸せな夜】
100円の焼き鳥を片手に、ビールを呑みながら参道を歩く。明日が雨だというから、スケジュールを変更して祭りへ繰り出した。
近代化の波は、的屋の出し物には全く影響せず、射的や金魚すくい、バナナチョコにりんご飴、屋台の作りも昔のままだ。ピカチュウさえも飴細工士の手にかかれば、何となく昭和の雰囲気を纏ってしまう。的屋の若いお姉ちゃんはスマートフォンをいじりながら煙草を噴かしているが、昭和のヤンキーそのもの。
一軒の屋台に腰を下ろして辺りを見渡す。幸せな夜。