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窓越しの世界 2022.7.2~31
7/2【鮮度】
薄く切るか、厚く切るか。
鰹のたたきを切り分けるときの選択肢は鮮度に委ねる。
薄く切って、薬味を沢山かけた今夜の鮮度はまずまず。
7/3【強制終了】
サウナの効果は、逃避と回復のミクスチャー。
ガラス越しのネットワークから切断する強制終了。
7/4【のみぞ知る】
それとなしに、もう一テイクを促す。
明らかに違うという実感は、現場にいた者のみぞ知る。
7/5【スーパー】
あっちのスーパーの特売品は、こっちのスーパーの高利益品。
数十円のために渡り歩く気が起きないが、積み重ねは時給ほどになるかもしれない。
スーパーを梯子する家計を任された者の気持ちが少しよぎる。
7/6【経理】
経理、経理、経理。
想像力と同じ領域のエネルギーが消費されていく決算。
7/7【健康とは】
運動は心に良い。
筋肉疲労が一番の精神安定剤ではないだろうか。
健康とは、肉体と心のバランス。
7/8【悲劇はきっと終わらない】
悲劇と日常が交錯する。
サウナ室の中でテレビ画面に釘付けの裸の男たち。
この狭い空間の中でさえ、何かに腹を立てた人が隣の男に睨みを効かせているのを見ると、この悲劇はきっと終わらない。
終わらないとだけ、胸に留める。
7/9【もうすぐ朝】
20時半にはと思っていた帰宅時間だが、閉店間際のスーパーマーケットを彷徨いている。
キッチンの蛍光灯だけの灯りで食事を済ませ、なかなかクールダウンしない思考回路に任せて作曲をしていると、もうすぐ朝。
7/10【今朝から】
今朝から影が濃い。
強い光ほど濃い影が生まれる。
蝉の鳴き声も板についてきたが、夜にはまるで盆を過ぎたような気配。
7/11【無理なことなどない】
無理なことなどない。
そんなことは本気で思っていない。
でも、そう歌うと、そんな気もしてくるのだ。
7/12【言葉と心】
真夜中のスコールで、言葉に力が宿る。
言葉と心が親密になる瞬間。
7/13【STAR】
リズムからメロディーを浮かび上がらせる。
ずっとやりたかったことが、始まった。
7/14【little Bug、Stay Morning】
既存曲の録音を始めたはずが、それ自体が別の曲になった。
これまでには無い曲作りに、手応え。
7/15【火種】
例えば僕は、くべられた薪をたくさん抱えている。
火種さえあれば、いつでも燃え上がるだろう。
今夜は雨上がりの路地へ辿り着き、知っている場所の、知らなかった価値観に触れた。
激しい火種がそこにあった。
7/16【やり直した方が早い】
1分進むのに1時間以上かかる音の編集。
そうだな、やり直した方が早い。
7/17【年末】
あまり行かない街の小さなホール。
年末に、新しいレコードを持ってライブをする。
作り始めた曲たちの手応えに後押しされて。
7/18【久しぶりの夏らしさ】
ドラムの練習を始めた。
昼間のバスに揺られながら新曲の構想を練っていると、あっという間に目的地へ着いた。
集中力は時間の消費速度が早い。
久しぶりの夏らしさ。
7/19【covid day1】
少し喉に違和感。熱は無い。
この2年、風邪すら引いたことがないので不安がよぎる。
明日の朝には治ってくれと祈りながら眠る。
7/20【covid day2】
スタジオ作業中に悪寒、急激に熱が上がり38℃を超える。
動くこともしんどくなり始める。
区や東京都の発熱外来コールセンターには一度も電話が繋がらない状況。
7/21【covid day3】
なんとか繋がったクリニックにて、PCR検査。
夕方処方された薬が届く。
寒気と発熱38℃以上をキープ。
7/22【covid day4】
悪寒と全身の痛み。たまに頭痛。最高38.5℃。
唾を飲み込むたびに激痛で眠れない。
ロキソニンを追加服用しなんとか眠る。
7/23【covid day5】
クリニックから電話があり、陽性判定とのこと。
熱は37度弱に落ち着いたが、それとは見合わない喉の激痛。
いつまた寒気と発熱が来てもおかしくない感覚。
7/24【day6】
熱は下がるも、喉を見ると膨れ上がった扁桃腺。
これでよく熱が無いなと、得体の知れないウイルスの行いを眺めた。
7/25【day7】
喉の痛みだけが増す。眠れないほど。
7/26【day8】
熱は36℃台だが、相変わらず喉だけは焼けるように痛む。
夜になって、嗅覚が失われていることに気が付く。味覚はある。
7/27【day9】
久しぶりに目覚めがよく、喉の痛みも減ったが、嗅覚が麻痺。
起きてしばらくすると頭痛。
次から次に聞き覚えのある症状。
7/28【day10】
喉の痛みも気が付けば忘れているくらいまでに減り、薬の服用も昨晩からやめている。
しかしながら、嗅覚が無いこと、そして今日は偏頭痛。
時々むせる。ふと痛み、口内炎ができている。
こんな状態でも、曲作りができるくらいには回復している。
声は、最低の状態。
7/29【day11】
禁酒、禁煙。目覚めの良さは感染前よりも良いのではと思うくらいには回復。
嗅覚もほんの少し戻る朝。
たまにむせたり、痰が絡むのは、普段の風邪の病み上がりと似ている。
7/30【day12】
強い香りには嗅覚が反応しだしている。
今夜から熱帯夜。エアコンのない部屋で眠るにのも慣れたが、発熱時にこの暑さでなくてよかった。
喉の痛みは無いが、軽い咳、痰。日常生活に支障はないが、体力が落ちている気がする。
7/31【day13】
嗅覚の回復が毎朝の楽しみ。ようやくコーヒーが飲みたいと思えたのも嬉しいが、顔が異様に乾燥しており、なかなか治らない。咳と痰はしばらく続きそう。
ドラムとベースを新しい曲に吹き込み、DIY心が音楽自体に降りてきているのを実感する。
今夜も熱帯夜。保冷剤を握りしめながら眠る。