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都議選各党の公約を比較する①-新型コロナ・オリンピック対策-

 都議選が告示されたことを受け、都議選における各党の公約について比較検討をしたい。1回目の今回は新型コロナ対策とそれに関連してオリンピックに対する自民党、公明党、都民ファーストの会、日本共産党、立憲民主党の主要政党の見解を比較検討する。

お断り

 本来であれば、公平性の観点から全政党、候補者の公約を比較検討をすべきところですが、国政政党でかつ都議会に一定の議席を持っている政党について比較させていただきました。

 なお、日本維新の会、れいわ新選組については国会に議席があること、生活者ネットワークについては都議会に議席があることを鑑み、最後の回に公約について掲載をさせていただきます。

1.新型コロナ対策

1-a)自民党

 自民党は新型コロナ対策として、高齢者ワクチン接種を7月末までに終わらせることを目指すほか、病床確保、宿泊療養施設の拡充、後遺症相談窓口の設置、医療従事者支援の充実強化を行うとしている。

 新型コロナの感染拡大による経済の低迷については、新型コロナの収束まで都民税の20%減税、事業所税の50%減税をすることで経済の活性化を目指すほか、雇用調整助成金・家賃負担の軽減などによるコロナ禍の事業継続支援を目指すほか、コロナ禍の影響を受けた事業経営者には東京都独自の支援の他、各種融資制度の充実に取り組むとしている。

 コロナ禍による生活困窮者に対しては臨時の雇用創出、転職支援のほか、一人親世帯の生活支援等で子育て、教育を支援するとしている。(※1)

1-b)公明党

  公明党はHPの2021年6月12日の「だから 都議会公明党」の中で「新型コロナ対応でも、知事らに計49回397項目の緊急要望を行い、都の施策に大きく反映させています。」としているほか、「新型コロナワクチン接種の加速化に向けては、国会議員や区市町村議員と連携しながら、きめ細かい施策を都に提言。都独自の大規模接種や、打ち手確保のための協力金事業の創設などを次々と実現しています。」としている。(※2)

1-c)都民ファーストの会

 都民ファーストの会は実績として、新型コロナ対策の検査体制の強化により最大で1日辺り9.7万件の検査を行えるようにし、コロナ重点病床を5500床を確保、都独自の大規模ワクチン接種体制の整備、医療機関への協力金など接種の担い手確保などにより、コロナ収束に努めたと強調している。

 また、国の対策について緊急事態宣言が遅れたこと、水際対策の甘さ、法改正が遅れたなどと批判した上で東京都独自の条例案、署名活動等によりこれらを是正したと強調している。(※3)

 それらの前提の上で、都立施設の活用など都独自の大規模接種体制の整備・強化、接種の担い手確保策の強化などを行うほか、戦略的検査:高齢者施設・特定エリア等リスクに応じた重点検査を行うとともに、都立・公社病院を核とした感染症対応力の強化などを行うとしている。(※4)

1-d)日本共産党

 共産党は「感染拡大が深刻化しているのは、政府と都がやるべきことをやってこなかった結果」であるとし、

①「無症状者からの感染を防ぐPCRなどの大規模な検査をおこなうことです。医療機関、高齢者施設、障害福祉施設、職場や学校、保育園等での週1回程度の検査、感染が広がりやすい場所、人が集まる場所(繁華街、駅、大学など)での無症状者への検査、変異株の全数検査などを、飛躍的に拡充させ、実行する」

②「ワクチンにかかわる正確でわかりやすい情報を国民・都民に提供しつつ、接種を希望者全員に、安全に、迅速に、確実にゆきわたらせるよう責任をはたす」

③「長期にわたるコロナ禍によって危機に陥っている中小企業、芸術・文化関係のみなさんに、事業を続けられる十分な補償を行うこと、生活困窮者への緊急の支援をおこなうこと、「人流」抑制を求めることに見合った生活保障をおこなうこと」

④「すべての医療機関への減収補てんに踏み切り、病床を確保するためにあらゆる手だてをとることです。都立・公社病院の「独立行政法人化」は中止する」

といった以上の政策について「対策が緊急に、徹底的に実行されるよう、全力をあげ」るとしている。(※5)

 新型コロナ感染拡大による経済の低迷については、「(東京)都の協力金は、対象事業者をひろげ、日割でも実施するよう改善し、増額・拡充し、」「手続きを簡素化し、迅速に支給できるように」するほか、「営業が継続できるよう支援する「中小企業応援金」や、「家賃支援給付金」を行うほか、「コロナ対策緊急融資の返済猶予期間を延長」し、「コロナ対策緊急融資の返済猶予期間を延長」するとしている。(※6)

1-e)立憲民主党

 立憲民主党はコロナ対策について、ワクチン接種において正確でわかりやすい情報を提供し、公平で迅速な接種を実現するとし、交通、運輸、生活必需品の販売員、清掃、介護、保育、教育の従事者、都内のエッセンシャルワーカーに優先的に接種するべきであるとして、駅前接種、ワクチンカーの巡回を東京都として行うべきであるとしている。また、医療機関、福祉施設への支援、PCR検査の拡充、保健所体制の整備など基礎的自治体が進める新型コロナウイルス対策の財政支援に取り組むほか、診断・検査から入退院、健康体への復帰まで切れ目のない相談・医療提供体制の確保に取り組むとしている。(※7)

 このほか、緊急事態宣言による1人10万円以上の定額給付金を国に求めるほか、高等学校等奨学給付制度について、新型コロナウイルスによる長期間の休業の影響を受けて、無収入や大幅な収入が減少をしているすべての世帯がを受けられるように制度を拡大するとしている。(※8)

2.オリンピックへの対応

2-a)自民党 2-b)公明党

 自民党、公明党はオリンピックに関する公約には言及していない。自民党は「中止、延期は考えていない」としつつ「都議選前に観客の問題が正式発表になる。争点にはならない」(自民党都議会幹事長談)とし、公明党は「五輪憲章で五輪の政治利用は禁止されており、書き込むと憲章に引っかかってしまう」としている。(公明党都議会幹事長談)(※9)

2-c)都民ファーストの会

 重点公約の中で、「あらゆる事態を想定すべき 国が強行開催するならば
東京オリパラ大会は最低でも「無観客」」としている(※10)

2-d)日本共産党

 共産党は、

① 「ワクチンが間に合わ」ず、「開催国・日本の接種率が人口比で世界116位(5月12日現在)と非常に遅れており、国内外ともに開催の条件がなくなってい」る。

② 「フェアな大会になら」ず、「世界の感染状況は、インド、ヨーロッパの一部、南米などでも非常に深刻であり、全世界のアスリートが同じ条件でフェアに競い合う五輪にならない」

③ 「医療従事者を東京五輪のために医療現場から引きはがし集めることに、現実性がない」「五輪組織委員会などが看護師500人、スポーツドクター200人の動員、30の指定病院の確保を要請していることは、コロナのもとで大変な負荷がかかっている日本の医療体制に、さらなる負荷を強いる」

として、その上で、

「東京都が開催都市として、今夏の五輪中止の決断をただちに下し、関係諸機関との協議に入ること、東京都のあらゆる力をコロナ対策に集中すること」を引き続き強く求めていくとしている。(※11)

2-e)立憲民主党

 立憲民主党は「今はコロナ危機から脱するために、リスクを排し、あらゆる資源をコロナ対策に集中する時」であり、「感染を拡大させないための確かな対策を示し、感染拡大の懸念を払しょくできない限り、東京五輪は涙をのんで、延期できなければ中止するしかない」としている。(※12)

3.各党の傾向についてのまとめ

(あくまでも宴は終わったが個人の意見です)

 新型コロナ対策に関連する医療提供体制については、共産党が医療病床の確保を理由として公立病院の統廃合に反対するほかは各党とも個別具体的な医療政策に言及が少ないためか差異が見られない。

 差が出てくるのは新型コロナ対策を巡っての生活保障、経済対策であろうが、各党の特徴について私なりの考えを以下に述べたい。

 自民党は都民税、事業税の減税やコロナ禍被害を受けた事業者への支援といった経済活性化に重点を置いた政策を提唱している。

 公明党は都政において自党が行ったことの実績を中心とした形で新型コロナ対策について言及している。

 都民ファーストの会は7600億円相当の都税を国から返還を求め、世帯収入に応じて最大で年15万円相当を給付することで、コロナ禍での生活保障を行うとしている。(※13)国との対立による東京都による地方自治を強調した美濃部亮吉の東京アイデンティティに訴える政策をうかがわせる。

 共産党は東京都の協力金の対象事業者を拡大、増額のほか、「中小企業応援金」や、「家賃支援給付金」の制度の創設、生活困窮者への「定額給付金」を東京都独自に実施など生活貧困者への対策を中心としており、経済活性化よりは社会保障的な観点からの政策を訴えている。

 立憲民主党は一人当たり10万円以上の定額給付金を出すよう国に求めるとし、方向性としては共産党と同様の社会保障的観点であるが、都民全員を対象としている点では中間層などを含めた視点であると言える。

 今回は、新型コロナ、オリンピックについての各党の公約について私、宴は終わったがの視点で比較検討をした。次回はそれ以外の都民の生活に関連した政策についていくつか比較検討をしてまいりたい。

皆が集まっているイラスト1

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

(※1) 自民党都議選公約 「命を守る。東京を動かす。」

P4「1 コロナ感染症対策」P6「2 減税で経済を再生する」より

(※2) 公明党HP 2021年6月12日「だから、都議会公明党」

cf. 公明党都議選公約(政策目標 チャレンジ8)

(※3) 都民ファーストの会都議選公約「都民ファーストの会政策集2021」

(公約)P4,P7,P13

(※4) (※3)前掲P14

(※5) 日本共産党都議選公約 「2021都議選 訴えと重点公約」

「1.安心と希望の新しい政治を、日本共産党の躍進で」の「新型コロナから命と暮らしを守る日本共産党の提案」より

(※6) (※5)前掲 

「3.日本共産党の重点公約」[2]「コロナ危機から都民のくらしを守る」より

(※7) 立憲民主党都議選公約 「都議選政策2021」P5,P16

(※8) (※7) 前掲P5,P6

(※9) 朝日新聞「都議選、各党の公約出そろう」2021年6月17日 11時00分

(※10) 都民ファーストの会

(重点公約)

(※11) (※5) 前掲

「1.安心と希望の新しい政治を、日本共産党の躍進で」「今夏の東京五輪の中止をただちに決断し、コロナ対策に全力集中を」より

(※12) (※7) 前掲 東京都連「立憲民主号外」より

(※13) (※3) 前掲 P14

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