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政治に対する雑感6-政治とカネの問題に思うこと(後編)-

  昨今の政治資金パーティを巡る「政治とカネ」の問題に関する考察になります。前編では、1990年代前半のいわゆる政治「改革」での「政治とカネ」に対する対応への問題点、「政治とカネ」の透明性をどのように確保するべきなのかについて考察しました。後篇では、なぜ政治に金がかかるのか、検察への政治浄化を期待する声について考察します。


なぜ政治に金がかかるのか

 今回の政治資金パーティの資金を巡る疑惑を告発した神戸学院大学法学部教授の上脇博之は、政治に金がかかるということはやむを得ないというスタンスである。(※1)その上で、上脇は政治資金の透明性確保のために有権者が政治資金収支報告書をチェックし、金の使い道に厳しく対処することが必要であると主張する。(※2)上脇の「政治とカネ」の問題に対する姿勢が、政治資金の使い道の適正性を問うものでもあることがわかる。

 政治に金がかかる理由として主として挙げられる選挙活動、具体的には自身の選挙地盤における有権者からの支持を維持し続けるべく、日ごろからのあいさつ周りなどに必要な人材の確保、活動拠点の確保、その維持管理に対するコストが指摘されている。選挙で勝つことが自身の最低限の権力基盤を確保する政治システムにおいては、選挙活動にコストをかけるようになるということであろう。だが、その選挙活動は、自身の当選に関わる有権者に重点を置く活動であり、関わりのない有権者が疎外される傾向にある。その結果、政治家が本来果たすべき公益の観点からの政策立案や、様々な利害を調整するといった活動に対するコスト、時間が軽視されるようになる。

 自身の選挙区におけるイベント、行事への義理、付き合いなどの形で政治家、秘書が参加をすることに時間、労力を使い、また政治資金を使うことに重点が置かれる現在の日本の政治のあり方は、政治家、有権者双方にとって真に望ましいものと言えるだろうか。政治家が本来の政治活動を行うための環境をどのように整えるべきかという観点から、政治に対してどのような労力、コストをかけるべきかという議論がなされないところにそもそも「政治とカネ」の問題の本質があるのではないだろうか。

 私は、以前、「統一地方選挙に思うこと⑤-若年層は政治に無関心なのか-」で取り上げたスウェーデンでの有権者と政治家が身近に接するための選挙小屋と呼ばれる対話の場を取り上げた。地域社会のイベント、行事とは異なる、政治家と有権者が接する場を行う環境を整えることに公費を支出してはどうだろうか。公共の場において政治家と有権者と接触し、政策、政治に対する対話を有権者、政治家を深めることを促進するほうが、現在の選挙活動よりも望ましいと考える。

 これらの活動が活発になることで、私たち有権者が政治に臨む態度も問われるようになるだろう。現状においては、政治に接触を試みる人には、政治家に対して地元のインフラ整備といった目先の利害を中心に陳情や要望を出したり、町内会の活動といった社交的な場でのイベント、行事への参加を重視する傾向がある。また、メディアは、政治について政局、選挙、人事といった事件性のある物事ばかりを求め、あるべき政策とは何かといったことを軽視する傾向もある。このような本来あるべき政治、政策の問題を軽視することを改める意味でも、政治家と有権者との対話が行える環境を整える方向で公金を使うべきであると考える。

検察に政治浄化を求めてはいけない

 「政治とカネ」の問題が出てくるときに、よく出てくるのが検察に政治浄化を求めるというものである。だが、私はこの意見には同意できない。1920年代後半、恐慌によって、現在以上の生活貧困苦にあえいでいた世論の中には、日本の政党政治における低迷、混迷への打破を議会政治を否定する革新将校、在野右翼に求める動きがあった。この結果がどうなったのかについては敢えて言うまでもないだろう。

 もちろん現在の検察は正面から議会政治に対して否定するわけでもないし、指揮権発動という伝家の宝刀が発動されれば戦前の革新将校、在野右翼のような暴走を行うことはできない。ただ、ここで問われるべきなのは、政治の浄化を私たち一人ひとりが主体的に行動し、世論を動かすという本来の民主主義の理念ではなく、何かに頼ることで安直に物事を解決しようとする姿勢にある。政治腐敗を民主主義の危機と感じるのであれば、どうすれば民主主義の危機を克服するべきなのか、という観点から私たち一人ひとりが行動することが求められるのではないだろうか。

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

脚注

(※1)

投票前に知ってほしい「政治と金」問題頻発の根本 期待できない自浄作用、有権者にできること | 国内政治 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

(※2) (※1同)

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