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第50回(2024年)衆議院選挙主要政党政策集に関する考察(前編)

 10月27日に行われる衆議院選挙(10月15日公示)に関する主要政党の政策集について、生活面を中心に政策比較をしたいと思います。前編の今回は社会保障の年金、育児・教育をについて考察して参ります。


1.社会保障

1-1.年金

各党の年金政策について(概略)

 年金については、少子高齢化の問題から将来的な年金制度の維持についての在り方が問われているが、維新、共産、れいわ以外は2004年の年金財政検証(※1)で導入された2017年までの保険料引き上げ(後固定化)、マクロ経済スライドの現行制度を変える意志は示していない。ただし、維新と共産、れいわでは現行制度を変えるスタンスが異なっている。

 維新は現行制度が現役世代の負担を増やしており、世代間格差を是正するとする間接的に現行制度のあり方自体の是非を新自由主義的立場から唱えている。これに対し、共産はマクロ経済スライドの廃止による給付抑制の是正による給付の拡大を主張しているほか、れいわも国庫負担による社会保険料の引き下げを主張するなど、現行以上の手厚い保障制度と負担の抑制を主張しており、社会保障重視の姿勢を示している。

 そのほかの政党の特徴としては、自民党が基礎年金受給額の底上げ、立憲民主党(以下「立民党」)が低所得の高齢年金の上乗せを主張するなど、国民年金など低年金に置かれている人々に対する社会保障の不十分な状況への是正を主張している。また、立民党の短時間労働者の厚生年金加入への適用拡大の提言は、2階建て部分の厚生年金への加入によって低年金者をできるだけ減らそうとする意味で注目に値する。

 ただ、現行の年金制度の給付と負担の在り方については、理念志向のある政党を除くと、現状維持というスタンスであることが伺える。今年2024年は年金の財政検証が行われた年であるが(※2)、特に現行制度を変えるとの言及がないことからもわかる。

 自民党、公明党は年金制度との兼ね合いで高齢者が働きやすい仕組みに言及をしている。将来的な受給開始年齢の引き上げとも読み取れる箇所である。だが、現状において60歳からの再雇用において再雇用後の賃金が下がっている傾向にある(※3)一方で定年前と同じ量の業務をこなさないといけない状況が運輸、医療・福祉、建設で高い割合が出ている。(※4)以上を考慮すると、高齢者の労働環境、労働負担軽減がない中で、受給開始年齢を引き上げるべきではないだろう。

1-2.育児・教育

各党の育児・教育政策について(概略)

 育児・教育については、少子化対策の一環から、基本的には各党とも前向きな傾向である。「ただ、維新については教育費無償化以外では今回の衆院選における言及がなく、関心の低さをうかがわせる。」(2024年10月20日付記。誤りであるため、当該箇所を撤回。また、れいわ新選組についても、給付や現場の処遇改善については言及があるものの、実際に子どもを育てるであろう労働者、フリーランスといった人たちが子育てをしにくい労働環境の整備に対する言及がない点でも問題であろう。

 共働きが増えている現状においては、子どもを育てるための環境整備においては、施設のみならず、共働き世代の働き方自体をどのように改めるかという点も問われている。その意味では日本共産党の次の視点は重要かもしれない。

(少子化)問題は、経済的・社会的事情などで自由に選択できなくなっていることです。選択できるようにするためには、教育費をはじめ子育てにかかる重い経済的負担を軽減する、政治の責任で「賃金が上がらない国」を根本から転換する、長すぎる労働時間を短縮し、働く人の自由な時間を増やす、非正規ワーカーへの差別をなくす、ジェンダー平 等をすすめ、女性に家事、育児をおしつける不平 等をなくすなど、子育てしにくい社会を変えることが求められます。

日本共産党 2024総選挙政策

 では、具体的な子育て世帯の処遇改善について各党はどのような政策を提示しているのだろうか。自民党は男性の育児休業取得率の大幅引き上げ実現のための取り組み強化をしているとしているほか、公明党はテレワーク、短時間労働等の推進、育児休業、残業免除等が利用しやすくなるよう取り組むとしている。両党とも共通している言葉は「取り組む」ということだろう。取り組むのはいいのだが、それらを実現するためにどのような施策を講じるのかが問われている。具体策への言及がない点では実現性に疑念を生じさせるものである。

 対照的に立民党は、育児休業給付を国庫負担とすることで非正規雇用者、フリーランスが同給付を受給できるようにするとしていることし、国民民主党が一定期間の育児休業機会の付与を事業主に義務化することとしている。立民党は正規雇用以外の事実上の被用関係にある人たちの処遇改善、国民民主党は育児休業を労働者に保障する制度を整えることに言及をしている点で、実際に子育てに携わるであろう人たちの処遇をどのように改善するかを踏まえているものであるという点で評価したい。

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 次回は、農業、物価対策・賃金の各党間公約比較を皆さんと一緒に考えたいと思います。

参考資料

自民党衆議院選挙公約(令和6年政策パンフレット)

公明党衆議院選挙公約(2024衆院選政策集)

立憲民主党衆議院選挙公約(政権政策2024政治活動用)(リンク先にpdf有)

日本維新の会衆議院選挙公約

日本共産党衆議院選挙公約(2024年総選挙政策)

れいわ新選組衆議院選挙公約

訂正(2024年10月20日追加)

 昨日2024年10月19日付で挙げました各党の比較公約の中で誤りがございました。それに伴い図表と文章を訂正させていただきます。

1.年金項目の図表における「国民民主党」の訂正

 当初図表において「国民民主党」の項目において年金に関する言及がないとしていましたが、年金に関する言及がございました。差し替えさせていただきます。

2.育児・教育の図表における「日本維新の会」の訂正

 当初図表において「日本維新の会」の項目において育児・教育に関する言及がないとしていましたが、「育児・教育」に関する言及がございました。差し替えさせていただきますとともに、本文中にあります「ただ、維新については教育費無償化以外では今回の衆院選における言及がなく、関心の低さをうかがわせる。」の部分は誤りですので訂正の上お詫び申し上げます。

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

脚注

(※1) 年金制度の仕組みと考え方_第5_平成16年改正年金財政フレームと財政検証 (mhlw.go.jp)

(※2) 将来の公的年金の財政見通し(財政検証) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

(※3) 高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)P31~P32丨労働政策研究・研修機構

(※4) (※3) 同 P24


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宴は終わったが
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