エア麦酒夜宴開催で得られた配信イベントに関する知見
まずはこちらを読んでいただきたい。
盛況のうちに無事終了したエア麦酒夜宴。イベントを生配信するという初めての試みで、準備段階から手探りの連続だった。
しかし、当面はこの緊急事態が続くであろうということを考えると、私たちが得られた知見は、もしかしたら他のイベント企画者にとっても参考になる部分があるのかもしれない。
もちろんオンラインのイベントそのものは、多くのイベンターさんやYouTuberさん、VTuberさんによって既にたくさん実施されているのだが、麦酒夜宴というイベントが本来持っていた性質をオンラインに移行するという意味で、今振り返るとかなり斬新な要素が含まれていたのではないかと考えられるのである。
今後こうしたイベントを企画する方にとって少しでも参考になる部分があればと思い、本稿では企画面であったり、技術的な部分であったりに関して共有したい。
Chapter.1 麦酒夜宴について考える
私はあくまで麦酒夜宴のレギュラー出演者の一人である。本稿における麦酒夜宴に関する捉え方、考え方はあくまで私の主観であって、主催のWhoopeeさんの見解ではないことを先に断っておく。
麦酒夜宴の特殊性の一つは、様々な「顔」があるという面である。
・ビールを主体とするフードイベント、飲み会
・DJの音楽を楽しむクラブイベント
・歌や演奏を楽しむライブイベント
・ボードゲームを楽しむイベント
これらが程よい割合で合わさっているのが麦酒夜宴である。そのため、名前に反して「ビールを飲めないor飲まない」参加者は決して少なくない。そういう人でも楽しむことができるのである。
中には(レギュラー出演者の一人である片霧烈火さんがそうであるように)それまではあまり好きでなかったものの、麦酒夜宴を通じて自分が好きなビールのスタイルを知ったという人もいる。
上記のいずれか、あるいはすべてではなくてもいくつかを楽しむことができれば、その「場」を楽しむことができるというのが麦酒夜宴の最大の特徴といえよう。
麦酒夜宴をオンラインの場に移すにあたって、これらの要素をどのように自宅で実現させるかということが最大のキモとなった。
Chapter.2 配信の手段について考える
前述した要素を満たす上で絶対に必要なことがあった。それは、「シームレスの配信であること」である。
現実の麦酒夜宴における「ビールを飲みながらDJの流す音楽を聴いていたらいつの間にかそれが終わってライブが始まってたし、かと思えば突然他のお客から声をかけられて気づけばボードゲームに興じていたでござる」を実現させるには、動画配信を途切れさせるわけにはいかない。つまり、イベントの最初から最後まで、1つの動画配信を観続ければ完走できる形態をとらなければならない。
各出演者がそれぞれ動画を配信するだけなら簡単である。それぞれ配信してURLをTwitterか何かで告知すればいい。でもそれでは連続性が担保されない。
この技術的な壁に関してはanoStudioのA-KIさんが見事に解決してくださった。それも、このイベントに合わせて新システムを開発するという荒業で。
各参加者はOBSという動画配信ツールを使用してanoStudioに配信データを送信。それを受け取ったanoStudioが動画サービス(今回はPeriscopeを使用)にてリレー配信を行うという方式だった。
【参考】OBS Studio
https://obsproject.com/ja
途中で通信の問題などで出演者からの配信が不安定になっても、配信そのものへのダメージを食い止められることや、そもそもの出演者からの送信ビットレートが、映像は3000Kbps、オーディオは320Kbpsと非常に高く設定されており(参考までに、Twitter公式でのPeriscopeの推奨ビットレートは映像が2500Kbps、オーディオが128Kbps)、高画質、高音質と安定性を兼ね備えたシステムとなっている。
(注)私はあくまで配信側としてこのシステムを使用したに過ぎないため、技術的ノウハウについては不明である。
配信サービスに関しては様々なサービスを比較検討して、Periscopeを使うことにした。長いイベントであるため、途中の出入りを簡単にするということが最大の狙いであった。やはりTwitterでTLに直接表示されるメリットは大きい。
半面、一度閉じてしまうと過去のコメントが消えてしまう(アーカイブ配信で確認は可能)デメリットへの対処も必要だった。そのため、ハッシュタグ#エア麦酒夜宴 を使用してのツイートもお願いして、イベント参加者外へのアピールもできる形を取った。
Chapter.3 現場の魅力をオンラインでも
大元の物理的手段は整った。それでは実際にChapter.1の4つの要素をどのようにイベントに持ち込むか。
現実の会場でのイベントとオンラインのイベントの最大の違いは「参加者の拘束レベル」にあると考えられる。拘束ってなんだか言葉が悪いな…
実際に会場に来た人は、その会場を出るまではイベントに参加していることになる。でも、オンラインであれば入るも離れるも自由である。家事、仕事、食事などで一時的に離れた人でもイベントの現状を把握しやすい構成にする必要があった。
そのため、全出演者の持ち時間は1hとし、毎時00分開始とした。そうすれば一度画面から離れても、現在の出演者が誰なのかわかりやすい。
DJ配信もライブも、オンラインならではのメリットがあった。ちょむさんや片霧烈火さんは、バーチャルキャラクターとして映像出演することができたし(ちょむさんのバ美肉は、出演者一同その瞬間まで何も知らされておらず、大変にびっくりした)、私も、現場のライブではちょっと長くて飽きてしまうかもしれない10分くらいある曲を、セットリストに組み込むことができた。
現場のイベントをオンラインに完全にコピーする必要はなく、オンラインならではの利点を活かしたイベントにしようという着想で取り組んだことは、結果的に良かったのではないだろうか。
そして、麦酒夜宴としては絶対に忘れてはならないビールだが、こればかりは視聴者の皆さんに助けられたと考えている。出演者も事前に自分たちが飲むビールや、当日仕入れる予定だったビールの宣伝などを通じて、ビールのアピールを行ったが、#エア麦酒夜宴 で検索すると、それぞれの参加者がビールを用意してイベントに臨まれていたということが分かる。
一方で、今後の課題と感じているのがボードゲームである。
これだけはオンラインで実現するにはまだ課題があると考えている。事前に主催よりBoard Game Arenaの案内があったものの、Twitterを見る限りでは実際にプレイした人は確認できない。
ただ唯一救いだったのは、堕武者+ultraviolence+さんの配信が昨年実施されたハードコア将棋プロレスリングのオーディオコメンタリーで、将棋の局面の解説などもあり、一応ボードゲーム要素が保てたということだろうか。
今後また実施するチャンスがあれば、ゲームの要素をどのように取り入れるか、もう少し知恵を絞りたい。
Chapter.4 今後の課題、まとめ
自分たちが楽しみにしていた機会を失ってしまった、さらには出演者としては表現の場をなくしてしまったというところから、どうやってそれを少しでも取り戻すかというのが当初のテーマだった。
気づけばそんなことよりも、どうやって今までになかったような楽しい場を提供できるかということに夢中になっていた。
結果として、延べ来場者数が3000人以上、同時視聴者数が最大70名ほどと、準備期間の短さに対してなかなか胸の張れるイベントになったのではないかと考えている。
一方で様々な課題もはっきりしてきた。
PeriscopeのコメントとTwitterが連動していないので、参加者に2チャンネルでのコミュニケーションをお願いすることになったことは、コメントの拾いやすさであったり、参照のしやすさという意味では課題が残るものであっただろう。とはいえそれぞれのコメントには利点もあったので(Twitterは後で参照ができる、画像を掲載できるといった利点があり、Periscopeは参加者同士のコミュニケーションが盛り上がった)、もしかしたらこれでよかったのかもしれない。
また、Periscopeはシステム上配信が開始されるまでURLが確定せず、事前のURL告知が難しいのも問題点の一つである。
確かにアカウントURLに誘導するという方法もあるが、これでは動画がTL上に表示されず、様子が伝わらない。
【参考】今回使用したアカウントのURL
また、当然ではあるが告知をTwitterに頼る以上、時々動画URLを含んだツイートをしないと、途中から参加したい人がどこに動画があるのかわかりづらい。この「流動性の高さ」は、この形態でやる限りどうしても課題になってしまうだろう。何かいい方法はないものだろうか。
収益を…ということになってしまうとさらなる課題が発生してしまうかもしれないが、今回に関しては特に触れるべきところではないと感じている。
以上いろいろと述べてきたが、オンラインイベントをやるうえで重要なのは、実際のイベントとの環境の違いをしっかり認識したうえで変えるべきところは変えるということなのではないかと改めて認識した次第である。当たり前といえば当たり前ではあるが。
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(コミケでの頒布のチャンスが流れてしまって色々ピンチなんやという心の叫びをこっそりチラ裏)
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