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オンガクはなぜ短い。 【長い音楽(仮) 制作メモ2】

1.「5分ルール」との関係

大半のポップスやロックなどは、楽曲の演奏時間が5分程度になるように作られています。
もちろんそれを超える、7分以上、10分以上という曲もあるにはあるのですが、少数派といえます。

JASRAC(日本音楽著作権協会)の規定上、楽曲の使用料を計上する際に、演奏時間が5分以上の楽曲は2曲扱いとなるため、使用料が高額となり使われなくなることを防ぐために、5分以内になるように曲を作る…とよく言われています。

おそらくそういうことが全くないわけではないと思うのですが、とはいえ、それって「卵が先か、鶏が先か」という話だと思うのです。

https://www.jasrac.or.jp/profile/covenant/pdf/2.pdf
著作物使用料分配規程(JASRAC)

上の文書の冒頭には、この規定が作成されたのが1987年であること、その後たびたび変更が加えられていることが書かれています。

1987年以前の規定を調べることができていませんし、この「5分ルール」が、いつ作られたものなのかは定かではありませんが、仮に5分以上の曲が多数を占めていて、それらが「2曲扱い」になってしまう状況で、なおかつそれが著作者・使用者双方にとって著しく不利益を招くのであれば、これは不合理な規定となってしまいます。

つまり、現状この「5分ルール」は作曲家を大きく縛るような規定ではなく、そして5分を少し超えるくらいの楽曲を作ることに対する制限にもそれほどなっていないと考えられます。

これを読んでいる皆様のお持ちの音楽ソフトの再生リストをご覧いただきたいのですが、「5分ちょっとくらい」の楽曲、普通にありますよね。

とはいえ、これが6分、7分…となっていくと、その数をどんどん減らしていくのではないでしょうか。

ということは、上の「5分ルール」の存在と無関係に、長い音楽の存在を難しくする事情があるのではないかと想像してしまいます。

2.長い音楽は飽きる

それが何かというのは実はものすごく単純だと思います。長いとダルいし飽きるからです。
確かに私自身、サビが終わったと思ったのに、アウトロが長すぎて、さっさと次の曲を聴き始めたということが全くないわけではありません。
前章でも述べたとおり、クラシックの演奏会で曲が長すぎて途中で眠くなるのが分からないわけではありません。
音楽ではありませんが、野球の国際普及を阻む要因として、試合時間が長いことが挙げられるそうです。確かに延長戦に突入して5時間とか超えることありますよね。そう考えると長い。
野球の場合はタイブレークの導入や、投球間の時間制限導入などもあって、試合時間は少しずつ短縮に向かっています。

長すぎるとどうしても途中で疲れます。ずっと集中しているとなおさらそうだと思います。
でも待てよ…と。映画は2時間くらい普通にあります。サッカーの試合もアディショナルタイムを除けば90分。テレビアニメは30分弱。
どうして音楽は7~8分で長いと思われなければならないのでしょうか。

3.音楽が短い理由

長い音楽を作るためには、どうやら「音楽が短い理由」を考えていく必要があるように思えました。
映画は場合によっては長いと感じることもあるとして、せいぜい20~30分くらい、テレビアニメ1話くらいの尺があったっていいじゃないですか。

と、自分で言っておいてなんですが、実際には難しいのだということも認識しています。
まず、現代のポップソングは非常に洗練されています。「サビありき」の構造で、無駄が落とされています。

テレビアニメのOP、EDの尺は89秒という規定があります。30分の放送枠にぴったり納められるようにそのような規定があるのですが、不思議なことに、意識的にどこかの構成要素を長くしたりしなければ、イントロ→A→B→サビがだいたいそれくらいに収まります。
もちろんそれは、私が「だいたいそれくらいの長さの曲」をこれまでにそれなりの数作ってきたことによる手癖のようなものでもあったりするのですが、「キャッチ―なサビありき」で曲を作ると、凡そそういう構成になるのです。

A→B→サビで構成されるリフレイン形式に関しては、過去に拙作「アタリマエへの叛逆」にて散々考察を行っておりますので、ご興味のある方はそちらを参照頂ければと思います。

「とにかくサビに全集中!そこさえ聴けばどんな曲か大体わかる」というのがリフレイン形式のすべてです。ということは、それ以外の部分を長くする理由は特にないのです。むしろ焦点がぼやけるので長くない方がいい。

当然世の中にこういう構成の音楽であふれかえってしまえば、音楽にはサビがあって当然、とりあえずそこ聴けばOKという共通認識が生まれてしまいます。
でも、これ、ある意味仕方ないですよね。分かりやすいですし、聴きやすいです。それだけ完成された形式でもあるのです。

更に、前章で述べた「音楽を途中で中断したり、途中から再開したりすると、意味が変容する」という問題点を一挙に解決してしまうのです。そう。サビだけ聴けばいいのだから、曲を冒頭から聴かなくてもなんとかなります。
例えば1曲の長さが5分あるとして、実際にはこれだけ聴けばいいという最小単位が30秒以下になることも珍しくないのです。
よく知らない、あるいは好みに合わない音楽でも、まあ30秒なら聴いてもいいかと思えるんじゃないでしょうか。これが受け入れられるきっかけになったりもするので、商業的にも成功しやすいといえます。

考えれば考えるほど、音楽が短くなったことにはきちんと理由も、合理性も存在する気がします。

次回は音楽を長くするにはどういう要素が必要なのか、考えてみたいと思います。

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