堕武者+ultraviolence+ に伝えたいこと
「表現の自由」は彼らのためにあるのかもしれない。そんなことすら思った。
去る2021年8月9日開催された「エア麦酒夜宴 第2夜」
大盛況に終わり、箱代支援ということで販売したコースターもありがたいことに多くの方に手を取っていただけたようである。
片霧烈火さんと一緒に演奏出演させていただいた私も、とても楽しく自分の演奏を終えた。
本来なら会場に集まるたくさんのお客さんと、ビール片手に盛り上がることができただろうに…少しの切ない気持ちを抱えつつも、インターネットの向こうで一緒に楽しんでくれているであろう多くのオーディエンスの皆様の熱気を受信しながら、イベントはいよいよ終盤戦を迎えていた。
そう。彼らの出番である。
堕武者+ultraviolence+
そのあまりに破壊的、アナーキーな芸風で話題を集めるバンドである。
麦酒夜宴にもこれまで「ハードコア将棋プロレスリング」やパワポを駆使したプレゼン(!?)を主な演目として、準レギュラーのような形で参加されている。
今回の演目について詳細を述べることはとても難しい。ネタバレになってしまうし、再演を望む一人として、まだ見ていない人に過度の情報を提供することがふさわしいと思えない。
主に堕武者のメンバー(&ゲストメンバー)の人間模様と、代表Agai氏の精神世界を主題にした作品であった。(だいぶ脚色)
19時というゴールデンタイムにふさわしくない、きわめて卑猥な表現が多数含まれ、最後は会場で見ていた女性出演者に土下座して終わるという、間違いなく人を選ぶ内容だった。
だが、今回の演目「徒然ヴァイオレンス出張編」は、私が知る限りでは最高傑作だったのではないかと感じている。
終演後どういうわけか不思議なくらいに爽快感を覚えたのである。卑猥な表現は多数あれど、これらを最終的に「救い」にまで昇華させたAgai氏の脚本と、企画力だけが鮮烈に印象に残っている。
彼らの演目を小学校の芸術鑑賞教室に用いることはきっとできないし、ドン引きする人も、嫌悪感を覚える人もきっといる。
だが、アナーキズムの極みといってもいいであろう本演目の完成度の高さに畏れすら覚える私のような人間もいるのだ。
堕武者の近年の演目の根幹にあるのは、代表であるAgai氏の「自虐」である。
自らに対するネガティブな評価をあれほどまでに飾ることなく、ネタとして使い切ることができるその思い切りの良さと、羞恥心のなさ(褒めてます)。そしてそれに(リハ中に肉離れを起こすレベルで)肉体をもって100%応えるメンバー。
すべてが揃って「徒然ヴァイオレンス出張編」が構成されているのである。一種の芸術作品とすらいえる。
何度も言うように極めてアナーキーでアングラな作品であり、すべての人におすすめすることはできない。正直なところ、公平で公正であることが求められる社会的背景に則しているとは到底言えない本作品をはじめ、堕武者の一連の作品は、「共有の時代」である現代社会と相いれない部分があるとさえ思う。
誰が見るかわからないという意味で、インターネットでの配信との相性も決して良くはない。場合によっては彼らは「自主規制」を行わない限り、自らのコンテンツを自由に世に出すことはかなわないだろう。
だが、彼らのような表現者が現代には必要だと思う。
堕武者の作品の神髄は、卑猥な表現でも、その暴力性でも、ましてや自虐ネタでもなく、精神世界の爆発的な顕在化にあると考えている。
自らの精神世界を僅かの恥じらいのフィルターすら通すことなく顕在化させるAgai氏の「企画力」と「弱さを武器にすることのできる圧倒的強さ」によって一連の作品は生まれている。
そしてそれは一人の作曲家として、喉から手が出るほどに欲しいもののひとつである。
かつて「ハードコア将棋プロレスリング」が音楽と将棋、そしてプロレスを同時進行させることで(恐ろしいことにこれらの展開はすべてリンクしている)、人間の多層的な精神世界を描写したように、本作「徒然ヴァイオレンス出張編」も、卑猥な表現を舞台装置として用いつつ、Agai氏の心の内を克明に描いた作品といえるのではないだろうか。
一見矛盾しているようではあるが、笑い転げつつ感動する自分を発見することのできる作品であった。オーディエンスはすべてAgai氏の手のひらの上で踊らされていたのかもしれない。
個人的には有料公演で、見たい人のために誰にも気兼ねすることなく(今もしていないと思うが)、彼らの全力のパフォーマンスを見てみたいと思っている。
健康に不安を抱えながらも、文字通り身体を張った演目を完遂させた姿にはリスペクトしかない。
Agai氏本人はびっくりするほどの紳士で、上演中とのギャップがすごいのだけれど、これに関して言及するのはエンターテイナーに対してどうなんだろうという気もする…(あとで消すかも)
毎週火曜日にYouTubeで「徒然ヴァイオレンス」を配信されているので、是非ご覧ください。
【ついでに宣伝】
片霧烈火さんと隔週土曜日22:00から、YouTubeで演奏配信を行っています。
(次回は8/21を予定しています)
チャンネル登録よろしくお願いいたします。
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