「JARUJARUTOWER2018」F-20
千秋楽から二週間がたとうとしている今、このブログを書くのは土曜日の夜特にすることもないこの時間を埋めるためが半分、そして一年後、二年後、少しずつこの作品に受けた衝撃を薄めていくわたしが今日に戻れるように手元に残すためが半分。
コントについて細かくまとめるつもりはありません。あくまでわたしの人生に突如現れて強烈な衝撃を残して去っていったあの日の夜についてたらたらと綴る文章になります。
ものすごくざっくりまとめれば、1998年生まれのわたしが小学校高学年の頃はんにゃやフルーツポンチと一緒によくテレビに出ていた兄ちゃん2人に、二十歳の秋夜、たったの二時間で世界を変えられたという話。
11月1日の夜、わたしはリビングに座りながらなんとなくチケットよしもとをぶらぶらしていた。(ジャルジャルとわたしの距離は、毎日18:00に更新されるYouTubeを見てフフッと笑い、土曜の夜には二人のラジオ「しゃべってんじゃねぇよ!」を聞くくらい。まぁ、そこらのお笑い好きレベル?秋に単独があると知って検索したときには上から✖、△と残っていったのは立見券のみ。そう、だから、立ち見で5000円ならいいやと諦めるような、そんな距離だ。)あー明日は東京初日か、行きたかったなぁとJARUJARUTOWERの頁を撫でる右手の親指の傍、わたしの目に飛び込んできたのは✖の上にそびえる〇…〇?!?!!!と鼻息荒く即【購入へ】を押すとキャンセルが出たのか唯一購入可能だったのが愛しい愛しいF-20であった(貴方のことはきっと忘れないよ)。結局、この一連の流れすべてが運命だったのです。
突然手のひらに舞い降りたチケットに確かにワクワクはしていたものの、あの時のわたしはまだ何も知らなかった。これから自分に人生で最大のショックと生気を与えるとんでもない舞台を見ることになろうとは。公演前に撮ったポスターや花の写真を見返す度に「呑気に時間つぶししちゃって…」とため息が出る。
2018年11月2日、金曜日の大学をあとにしてたどり着いた先はルミネの七階、六列目、通路、おじ様、わたし。
音楽が遠くなり、会場は暗くなり、わたしたちの期待が最大限に高まったところで主役のお出まし。徐々にこの作品のやばさに気づき始めたのは(考え抜いた上でやばいが一番しっくりきてしまった)、暗闇待機タイムが一切ない……これってお客を飽きさせない&会場の空気を切らさない最高の手立てだと思う。そして片方は同じキャラのまま進まざるをいけないわけだから、必然的に物語が同じ世界を進んでいくのだ!そして恐ろしいことに連続しないコントの中でもつながりを入れてきよったのだ!!一個人の意見ですが、現代の人々は伏線回収をこよなく愛するのでこんなのは好物中の大好物。’解けて散る’というひとつのキーワードを軸に登場から最後の台詞までのすべてを見事に一つ残らずもっていかれ、それはそれは鳥肌があちらこちらでゾワ~である。ここまで読むと「で、ちゃんと笑えたの?」とつっこまれそうだが、そんな失礼な質問は丸めてポイしたいくらい大爆笑だ、笑い過ぎの酸素不足で手先まで痺れていたわたしが、証明です。一拍目で「そうです」言うところとか、定食屋のおっちゃんがやっと厨房についたと思ったらめちゃくちゃ手際よくトントントントン、ジュ~ジュ~って楽しそうに会話しながら料理するところとか、君はもうー受験する大学決めた?とか、すべてが絶妙で、かと思ったらあほらしすぎてなんで自分が笑ってるかわからないのに手をたたいて笑ってしまうネタがあったり、もう正直、そこで起こっていることがなんでも面白いのだ。480人ほどが異空間に閉じ込められて、新宿でも東京でもなんなら地球でもないどこかの世界の、目の前にいるおかしな人たちが面白くてしょうがないのだ。異様に小さなサングラスの男が放った’解けて散ってたんとちゃいますか?’の一言で締めくくられた物語の終わりを、わたしは精一杯の拍手でどうしようもない高ぶりを少しずつ外にやりながら見た。鳥肌として姿を出したそれは、紛れもなく体内で出してくれと暴れまわったエネルギーと興奮の粒たちであった。どうしてもその場から離れたくなかったわたしはいつの間にか最後の一人になった。アンケート用紙に必死に想いを書きなぐり、帰路についた。一歩一歩会場から離れるたびに薄まる濃度が、逃げていく空気が、どうしようもなく寂しかった。お願いだからずっと、とおくにいかないでほしかった。だけどひとつ。何よりも強調したいのが、わたしはあの夜、あの帰り道、何もこわいものはなかった。この年頃で、未来のことを考えては不安になるような夜もあったのだけれど、わたしはあの日から満ち溢れている。満ちるどころかこぼれるほどの何かを、たしかにこの身体に得た。あの日の夜、目の前でみたキラキラした目の彼らみたいな大人になると、決めたのだ。人々の日常にガツンとのめりこむものづくりをすると、この二時間でわたしがガッシリつかまれてしまった部分をわたしもいつか掴んでやると、決めたのだ。どれだけの大人の頭と体と時間が使われたのだろう。考えただけでワクワクする!
あの夜わたしは血迷って、今日のことをこの目と頭にすべて閉じ込めておきたいからとDVDを予約せずに帰った。
ホクホクした顔で、「そら早歩きにもなるわ、」とつぶやきながら、バス乗り場へと急いだ。
翌日、4000円を財布に忍ばせて、ルミネの七階に向かった。
F-20をわたしに譲ってくれた神様、ありがとう。