【書評】サッカー戦術本「サッカーとは何か」の解説と所感 Vol.13
浦和レッズ分析担当コーチ・林舞輝さんのサッカーの本質を問う書籍「サッカーとは何か」
本書では「戦術的ピリオダイゼーション」「構造化トレーニング」という2つのトレーニング理論に視点をあてて、サッカーとは何かという漠然としていて、抽象的で、壮大な問いを追求していく
Vol.1-4では、戦術的ピリオダイゼーションの「戦術的」の部分を解説してきた
Vol.5では「ピリオダイゼーション」の部分の入り口である意味や方法を解説した
Vol.10からは「構造化トレーニング」を解説し、構造化の意味や理解に迫った
Vol.11では、トレーニングメニューを組む際の4つの条件に焦点をあてて解説した
Vol.12では、選手一人一人にスポットを当てたコンディショニング管理と、それに伴う負荷の掛け方を解説してきた
Vol.13では、3つのシーズン(プレシーズン、シーズン、移行期)の中で、それぞれどんな準備・トレーニングが大切なのかを探っていく
プレシーズンの準備
一般的にサッカーのプレシーズンは4〜6週間と言われて、この期間に重要なのは開幕戦に向けてチーム・選手を戦える状態に持っていくことである
プレシーズンでは、最初から構造化マイクロサイクルによる週毎での負荷調整を行う
ここで気をつけなければならないのは、プレシーズンだからといって2部練習、3部練習をして選手を痛みつけないようにすることである
あくまで、開幕戦に向けた準備の期間であるので、ボールを全く使わない練習や過度に負荷をかけることは意味を持たない
プレシーズンの初めは、一般負荷・直接負荷・特有負荷をかけた練習を行う(プレシーズンの45~50%)
その後、特有負荷・競争負荷をかけた練習を、プレシーズンの後半から徐々に上げていく
従って、プレシーズンの後半から徐々にミニゲームや紅白戦、練習試合を増やしていくことになる
基礎負荷は、紅白戦や練習試合の前後の「リカバリー」で定期的に行っていく
インテンシティは、一般負荷・直接負荷・特有負荷が最も重要になるまでの最初の数日まで上げていき、その後は特有負荷・競争負荷と合わせて自然に上がっていく
シーズン(リーグ期間中)のトレーニング
シーズンは約40週にわたり、週末の試合に合わせ1週間単位の構造化マクロサイクルを回していく
ここでは、日曜日に試合がある場合を参考に考える
火曜日、水曜日に一般負荷・直接負荷・特有負荷を増やしたトレーニングを行う
そして水曜日は最も練習量を多くできるようにしているとともに、2部練習を行う
木曜日の朝にも、直接負荷・特有負荷をかけてトレーニングを行うことを推奨している
特有負荷・競争負荷は木曜日に最も負荷をかけて行い、それまでは徐々に上げていく
インテンシティの負荷のかけ方は、特有負荷・競争負荷と同じで、日を追う毎に増えていき、木曜日に最も負荷をかける
基礎負荷は、試合の次の日の「リカバリー」として取り入れられる
移行期での対応
移行期はシーズンとシーズンの間、いわゆるオフの期間のことで、欧州では4-6週間程が一般的である
構造化マクロサイクルでは、この期間はサッカーから離れ、スイミングやサイクリングなど、一般人の「適度な運動」とされるジェネリックの負荷のトレーニングのみを行うべきとしている
この期間で必要なのは、心身ともにリフレッシュし、疲れをよくとり、ストレスのかかった選手の構造をもう一度作り直す準備をする
次のVol.14では、5種類の構造化マイクロサイクルを掘り下げていく