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さらばON THE ROAD…アレック・ソス写真展「部屋についての部屋」
終了数日前にアレック・ソスの写真展「部屋についての部屋」を観に行った。
アレック・ソス(1969-、アメリカ・ミネソタ州生まれ)は、国際的な写真家集団、マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材とした、写真で物語を紡ぎだすような作品で、世界的に高い評価を受けてきました。
本展「部屋についての部屋(A Room of Rooms)」には、初めて出版されたシリーズであり、初期を代表する〈Sleeping by the Mississippi〉から、今秋刊行の最新作〈Advice for Young Artists〉まで出品されます。30年に及ぶソスの歩みを単に振り返るのではなく、選ばれた出品作品のほぼすべてが屋内で撮影されているように、「部屋」をテーマにこれまでのソスの作品を編み直す、当館独自の試みとなります。
「ポートレイトや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」と作家は述べています。ソスの作品に登場するさまざまな部屋や、その空間にたたずむ人々に意識を向けることで、果たして何が見えてくるのか。
同時開催の写真展もあったけど、アレック・ソスだけでお腹いっぱいになる予感しかなかった。
事前情報でRoom1からRoom6に分かれていることを知っていた。牛だって胃が4つの部屋なのに、6つの部屋、少なくとも6つのストーリーがあるわけで。
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写真集は眼差しの読み物だ、と感じていたけれど、写真展は写真家の眼差しの鑑賞のみならず、その先にある内的世界に没入する体験にもなりうる(そう、それは時に胃袋のように噛み砕かれ、分解され…)と感じた。
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ロスト・イン・トランスレーションのオマージュらしい。
最も印象的だったのは、「Advice for Young Artist」の最後であり、写真展全体の最後の写真。おそらく学生にデッサンされたアレック・ソス本人のポートレートが割れたガラスフレームに収まっていて、死を思わせる。若い芸術家たちによる「父殺し」のメタファーとも読み取れる。
旅をしながら旅で出会った風景や人を撮る写真のスタイルは「オン・ザ・ロード系」と呼ばれるそうだ。
かつて、アンセル・アダムスやアンリ・カルティエ・ブレッソン、近年ではサルガドが、「アンチ〇〇」という父殺しにあったように、そろそろ、オン・ザ・ロード殺しが始まるのだろうか。ロバート・フランクは「The Americans」以降、同じような写真集を作らなかったし、活動も控えめだったから殺されなかったのかもしれない。そう思うと、現代のオン・ザ・ロード系の代表的な写真家とされるアレック・ソスが、部屋の写真を出してくるのは非常に興味深いではないか。
マーティン・パーのアレック・ソスのインタビューによると、彼自身、どちらかというと家が好きな方だそうだ。
どうやらアレック・ソスにとって旅は、眼差しを写真として残す手段であって、目的ではなさそうだ。眼差しの中に風景があったから撮ったのではないだろうか?それが室内でも人物でも同じなのかもしれない。しかし、オン・ザ・ロードで成功したので、オン・ザ・ロード系と括られるようになった。ロバート・フランクは成功しすぎて普通の写真家でいられなかった。
鑑賞者側が、写真の中にノスタルジーやアイロニーを嗅ぎ取りながら風景などの被写体を見ることが、現代写真的な作法のように感じていたとしても、写真家の眼差しはさらに深く、より遠くを目指しているのではないだろうか?
アレック・ソスはこの写真展で、暗に、反オン・ザ・ロード系鑑賞を提唱したとも言えなくもない。
若き創造者よ、ハートを打ち鳴らし、旅人たちの眼差しの彼方を越えていけ…そういうことなのだろうか。そして、自身を奮い立たせているのかもしれない。
写真展を抜けると、そこは途方もないRoom7。終わらない。
アレック・ソスに関するおすすめyoutube3選↓↓↓
↑↑↑コンパクトに作品など紹介されています。
↑↑↑マーティン・パーとのぶっちゃけ対談
↑↑↑アレック・ソスの本棚ツアー。これは楽しい!!