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感覚的な色彩、語りかける風景…小西真奈 個展「Wherever」
「何処かで見かけたかな?」
小西真奈さんの絵に惹かれ、小さな旅のつもりで府中市美術館の個展へ。
小西真奈は、現代の日本において、風景画の可能性を拡げているひとりです。アメリカ東海岸の美術大学で学んだ後、帰国して描いた作品が2006年に、若手作家の登竜門であるVOCA賞を受賞しました。雄大な景観を大画面に収め、隈までしっかりと描きこんだ理知的な絵画は、広く人気を得ました。感情を抑えた描写は写真にも似て、どこか懐かしさを感じさせ、穏やかに人々の記憶に語りかけます。
2010年代に生じた変化は、2020年代初頭のコロナ禍の時期に決定的になりました。隔離生活のなかで小西真奈は、自宅近くの都立公園や付属の温室、小川を訪れ、それらの風景を描きました。対象との距離は縮まり、筆運びは即興的でおおらかになり、色は感覚的に選ばれます。絵を見るわたしたちの緊張を解くような、軽やかさとやさしさが魅力です。
本展は、小西真奈の美術館での初の大規模個展となります。2000年代の代表作を精選し、また近作と新作をたっぷりと展示します。
本日は晴天なり。
電車を乗り継ぎ、カフェラテで一息つき、バスに乗りこみ、和やかな住宅地を抜けて、府中市美術館へ。
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初期の作品は景勝地の風景が緻密に描かれている。近づくと筆跡が残り、色と色が重なっているところのニュアンスが心地よく、いつまでも見ていたい。色彩に濁りがなく、カーキやベージュに透明感がある。その透明感が光を感じさせる。
イエローとカーキの重なり、グリーンに透けるホワイト、ホワイトの向こうのグリーン、グレーにパープル、ディープグリーン…影から光へ移ろう色。
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ラフな筆跡や色と色の重なりが見える。
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近年の作品は、コロナ禍の影響もあり、画家の自宅に近い公園や温室が描かれている。絵のタッチはラフになり、あえての塗り残しが風の如く吹き抜けていくよう。
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地元の小学生たちが学校行事として鑑賞していた。彼らに親しみのある地域の公園や景色だろうから見やすかったかもしれない、と思った。自分の経験から考えることだけど、子供は好みのツボやポイントを感じないと絵画を観れないみたいだ。想像力を刺激する大胆な色彩やデフォルメされた伸びやかな線の意外性、楽しんでいたかな?
小西真奈さんの作品は、写真的なところがある、と感じていたけど、実際、作品作りのために撮影をした写真を元に描いているそう。インタビューにそのことについての発言があった。
「私の絵は、視界がクリアでしっかり焦点があっていてコントラストが強い処理をされている、という指摘もあるし、実際そういう部分が写真的と見られるのかな、と思うんです」
「写真は自分のコントロール外になってしまうところがいい。現実を写しとっているつもりで全然写し取れてないというか。自分の意図から外れたものをくれるというか。そういうのを面白いなと思った」
じっくり鑑賞して、程よくお腹が空いたので、館内のカフェへ。
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周辺に派手な看板とかないのも好ましい…
↑↑↑本展の魅力が詰まった紹介記事。
Information
小西真奈 Whenever
会期:2024年12月14日〜2025年2月24日
会場:府中市美術館2階企画展示室
住所:東京都府中市浅間町1-3(都立府中の森公園内)
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00 ※入場は14:30まで
休館日:月、1月14日(1月13日、2月24日は開館)
料金:一般 800円 / 高校・大学生 400円 / 小・中学生 200円 / 未就学児 無料