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人生100年時代を生き抜くために〜伊藤羊一氏・石川善樹氏〜

10/17(土),18(日)に開催予定のWEIN STUDENTS SUMMITのプレイベント(第5回)が9/18(金)に行われた。今回の登壇者は株式会社Yahoo!内でリーダーを育成するYahoo!アカデミアで学長を務めており、武蔵野大学でアントレパートナーシップ学部の立ち上げにも着手していらっしゃる伊藤羊一さん(写真1段目左から4列目)と、ハーバード大学院を卒業後、予防医学者医学博士を務めており、『問い続ける力』などの著書を出していらっしゃる石川善樹さん(写真最左上)。テーマは「人生100年時代を生き抜くための、自らでリードする人生戦略」だ。

イベントの序盤は石川氏が欠席されており、伊藤氏が一人でお話をなさった。
伊藤氏は「どうすれば明確な目標を立てられるか」という質問に対して「大抵の人には明確な目標などない。結局やってみて初めて目標が明確になる。大事なのは、これがやりたいと決めつけるのではなく、とりあえずやってみて、振り返るということ。ここでいう振り返るとは、やったことに対してどう思ったかを言語化してみることだ。行動→振り返るを繰り返すことで何がいいのかがわかってくる。まずはモヤモヤし続けなさい。」と答えた。これまでWEINで成功者の話を聞いてきて感じたことだが、成功するため、大きなことを成し遂げるためには「とりあえずやってみよう。」という意識が重要だ。失敗を恐れることなどなく、伊藤氏の仰る通り、何かアクションを起こし、その経験を振り返るという過程を何回も踏むことが成功への近道であるように感じる。それが自分の経験や自分自身のメタ認知にも繋がり得るだろう。

次の伊藤氏への質問は「自己肯定感と謙虚さのバランスをどう取るべきか」という質問であった。伊藤氏の答えは以下のようであった。
「自分がやっていることが正しいかはさておき、自分の存在は100%正しいと思うこと。皆さんの存在はオンリーワン。皆さん全員それぞれの人生がある。これはかけがえのないものだ。自分が正しいかで動くときは、いつか自分が一番になると考えて動きなさい。その時に必要なのが謙虚さだ。謙虚さとは決して謙ることではない。何がなんでも他人から学ぶのだという姿勢だ。だから、謙虚と自己肯定感は両立できる。自分は正しいと思いながら表情から全てを学ぶぞと思っているのが謙虚さだ。謙虚に自信を持つためにも自己肯定感は必要だ。」
この答えに私はとても感激した。日本人は謙ることを美徳とする文化を持つとよく言われている。日本人は謙ることと自分を肯定することとのバランスをとることに苦心しがちではないだろうか。以前は私もそうであった。しかし、伊藤氏のこの話を聞くと、謙虚と自己肯定感は相補的な関係にあるのだと感じた。この考えは日本人の心に強く刺激を与えるのではないだろうか。

次は、伊藤氏の大切とする考え方の一つである"Lead the self" にはどのようにしていたったのかという質問が上がった。これに対し、伊藤氏は「最終的には"lead the society"を目指して欲しい。とにかく社会に価値を提供する、世界の人が笑顔になるようなことで貢献してほしい。そのためには1人ではできないから"Lead the people"が必要で、そのためには自分が熱狂できる"Lead the self"が必要になる。明確なものが見えてこないとき、自分が何に燃えるかを振り返って成長できることが大事だ。その繰り返しに成長がある。」と、自身の経験や、時に陥る自己嫌悪などなどの話も交えて答えた。私は"lead the self"という言葉を初めて聞いたが、とても面白い概念だと思った。モヤモヤして明確なものが見えない中で自分を突き動かすものは、自分のうちに秘めた情熱なのだという考えに特に刺激を受けた。

次は「インターネットの出現で国民総発信時代に突入して”個の時代”と言われて久しい。このような背景から、個の力で他者と差別化して生きていくのが難しくなりつつある。その中で、個の力で生きていく上で必要な能力はどのようなものか、もしくは個の力とは違う別の力が必要であるとき、それはどういった能力なのか?」という深い質問であった。これに対して伊藤さんは、精神科医・心理学者のアドラーの考えを紹介し、「皆でコミュニティになって成長していくのが必要になるから共同体感覚は必要だ。しかし、コミュニティに属する個人のキャラが立っていないと面白くない。コミュニティは、ある部分で共感しているが、各個人が統一されてしまっているのも面白くない。キャラが立っている個人が集まっているべきだ。個がより一層大事になっていくだろう。」とした上で、「個の力以外に必要となるのは非認知能力だ。非認知能力とは、学力以外の能力のことだ。非認知能力は、まず好奇心をもち、次に一歩を踏み出し、その行動を振り返るというプロセスを何度も繰り返すことで鍛えていける。好奇心は他の人に対する感情を声に出していうことによって後天的に育てられる。」と答えた。また、伊藤氏は共感力について以下のようにも言及した。「みんな違うからみんなのことをまずリスペクトすることが大事だ。まずは周りの人が言っていることは全部正解だと思いなさい、みんなが違うことを認めた上で、違いを感じるだけではなく共通のゴールを見いだすこと。」
確かに、国際化が加速度的に推進されてきている現代、今まで自分たちが浸ってきた価値観とは異質の価値観に出会う機会も少なくないだろう。その中で相手の価値観を肯定し、共存を図ることのできる姿勢は、これからを生きる私たちに一層求められているものなのではないだろうか。それは異国の人たちとの交流の中でも求められるものであるし、ある程度の規模を持ったグループを主導する上でも持ち合わせているべきものだろう。

次の質問は「人付き合いのポリシーはありますか?」という質問であった。伊藤氏の答えはこうだ。
まずは全員リスペクトから入る。みんなから謙虚に学ぼうという姿勢や時間は大事にしている。しかし単なる友達付き合いは徹底的にやっていない。それによって自分の精神をクリアにしている。最後の最後は自分の人生を生きれば良い。人をリスペクトしながら自分の人生を生きれば良いが、共同体の中にいることは忘れてはいけない。」
(良い意味で)居心地の良い環境づくりや、自分を成長させてくれ、自分に利益を与えてくれるような環境のデザインを怠らないことは、成功者に共通する点だと感じる。

また、伊藤氏は本当の個人主義とは、「自分なりの答えを見つけること、周りに流されず協調性を大事にすること」だという。
(ここで石川氏が登場。)
石川氏はコミュニティと個人のあり方について「本当のコミュニティかどうかは、理由がなくても集まることができるかどうかで決まる。将来の何かの目的のために集まるということもあるだろうけれど、よくわかんないけど一緒にいるということも大事なのではないか。そのようなコミュニティでは弱い自分やダメな自分を全てさらけ出しているものだ。できることがなくても自分を認めてくれる人たちがいるのが強いコミュニティだ。」と語った。石川さんが接してきた素晴らしい方々も、石川さん自身が何者かを気にせず本気で接してくれたのだという。

最後に、石川氏に対しての質問が飛んだ。「好奇心とは何かについて、考えるヒントはありますか?」という質問である。好奇心という言葉はとても抽象的で実体がないので、もしかすると疑問に思っている読者もいらっしゃるのではないだろうか。
石川さんは「自分はなんでも知識で武装する性格であったため、勉強すればするほど、やられ尽くされている絶望的な気分になった。どうやっても先人がいた。しかし、友人の北川さんは違った。自分が何かについて不思議に思うようになるのを待っていた。そうすると楽しい。自分が妄想していたことと世の中で言われていることの答え合わせみたいだ。当然勉強すると少しずれているが、そのずれを起点にまた妄想を膨らませるというサイクルを踏めば、勉強も進むし、好奇心を失うこともない。」と答えた。
これに対して伊藤氏は「石川さんの素晴らしさは、問いを立てることにある。『そもそも〜とは』という姿勢を常に持っている。学生は問いに答えることも大事だが、これからは問いを立てることが大事だ。」と付け加えた。大学生は、高校までの勉強から大学以降の勉強への移行という話の中で「問いは、答えるものではなく立てるものとなるのだ。」ということを教わる。これは実に学びの本質を掴んでいると思う。純粋な疑問を持ち、それについて深く調べて知識を増やしていく。高校までの試験偏重型の教育ではなし難い勉強の形だが、これが本来の学習のあるべき姿なのだろう。学びには好奇心が伴うことを多くの学生が忘れてしまっているのではないだろうか。それを今一度意識しておきたい。

イベントの最後に、伊藤氏は「悩み続けたり怒られることばかりかもしれない。そうやって成長していく。人とたくさん話して自分で問いを立ててやってみて振り返るというプロセスに尽きる。」と語った。
石川氏は「年をとると正しいことを言いがちになる。正しいというのは面白みがない。面白くあるためには『知らない』ことも重要だ。若い世代には、面白いことを思いついてどんどん挑戦していってほしい。正しいことは大人に任せて面白いことをやってほしい。自分を信じて進みなさい。」と若い世代への期待を打ち明けた。まだまだ何も「知らない」私たちだからこそできることがある。大学生の方々には若さゆえの強みを生かして、積極的に挑戦を続けていってほしい。私も自分の夢に向かってまっすぐ突き進んでいきたい。ともに未来の世界を作るためにも、奮闘していきましょう。

WEIN STUDENTS SUMMITは、10/17,18の2日間だけのサミットではない。毎週金曜日、各界で活躍される方々をお招きして行われるプレイベントも見どころのひとつだ。このプレイベント中、登壇者のお話への感想は全てTwitterでハッシュタグ(#WEIN学生サミット)をつけて呟かれるため、参加者同士の繋がりもできやすい。また、FaceBook やSlack、Messengerを通じて、WEINに参加している自身の大学や他大学の学生たちとの交流ができるクローズドコミュニティも提供している。このコロナ禍で他大学とのつながりを持てないなか、このようなコミュニティが手に入るのも利点だ。読者の方々にはぜひWEINに参加して交流の輪を広げつつ、登壇者の方々のみならず他の学生メンバーの話を聞く中で自分の夢や目標をさだめていって欲しいと思う。皆さんの参加を心から楽しみにしている。

               WEIN東京大学支部 高松京介

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