身近なものを打楽器に
叩くと音の出る物体は、すべて打楽器である。
「打楽器アンサンブル」と聞くと、おそらくほとんどの人が太鼓や鉄琴・木琴などたくさんの楽器が並んでいるのを想像するでしょう。しかし実は、あなたが今座っている椅子も、目の前のコップも、「楽器」として立派にアンサンブルを創り上げられる存在なのです……!
私たちぺるあんは、「打楽器」の可能性を追い求めて、さまざまな “身近なものアンサンブル” に取り組んできました。今回はそんな異色アンサンブルに奏者として参加したこともある団員が、オススメ演奏動画をご紹介します。「打楽器」概念の最果て、とくとご覧あれ!
団員のおすすめ演奏動画紹介・楽器アンサンブル編はこちら
▶▶▶私のお気に入り
今回は、近年演奏した曲の中で、個人的に個性強めと思う2曲をご紹介します。この2曲に共通するのは、いずれもいわゆる「楽器」を使わない点です。打楽器アンサンブルとしては一見邪道とも思えるような楽曲たちですが、それらの魅力を少しでもお伝えできればと思います。
Stinkin' Garbage(2020年駒場祭演奏会より)
動画はこちら▶▶▶【バケツ6重奏】Stinkin' Garbage / Ed Argenziano
筆者も演奏しています。
原題は「臭いゴミ」(Google先生曰く)です。ずいぶんと嫌な名前ですね。まあそれは置いといて、この曲は本来は30ガロンの金属製のゴミ箱を楽器にするという指定があります。1ガロンは4L弱なので、約120Lのゴミ箱を練習のたびにいちいち持ち運ぶことになります。それはさすがに嫌なのでこの時は、ドンキかどこかで持ち運べるサイズの金属製のバケツとポリバケツを購入し、これらを楽器としました。
アンサンブルとしては、皮もの(編注:太鼓だけしか使わない曲)のみの曲に近い雰囲気があります。バケツを楽器にするということで、この曲ならではの苦労した点がいくつかあります。まず、バケツはスティックで叩かれることを想定していないので(当たり前)、練習しているうちにだんだんとバケツに凹みが生じてきます。練習ごとに使い込まれた感が増して、それはいいのですが、楽器として使い物にならなくなるのではないかという恐怖も少しありました…
また、バケツの中でも叩く位置がかなり細かく指定されていました。バケツの表面だけで左、真ん中、右と叩く場所が分かれており、それに加えてバケツの縁(リム)と側面に対応する音符が楽譜に書かれていて、計5パターンの叩き分けが必要でした。バケツがそこまで大きくなく、ストライクゾーンが狭い上に、かなり速いテンポで16分音符がたくさん登場するので、隣の奏者とスティックが当たったり、というトラブルもしばしば…(苦笑)打音を揃えるのにも苦労しましたが、音がピタッと揃った時は、一種の達成感を感じられました。
この曲では、演出にもこだわっています。ぺるあんの演奏会の衣装といえば黒シャツに黒のズボンですが、この曲ではバケツを叩くということで、カジュアルな衣装で揃えました。また、楽器の下には、バケツから連想して、雑巾(きれいなもの)を敷きました。
この曲を披露したのはオンラインでの演奏会だったため、演奏動画は対面での演奏会のものに比べて演奏の様子が見やすくなっています。動画をご覧になる際は、音だけでなく奏者の手もとにもご注目ください!
◆この曲の推しポイント!
細やかなスティックさばきや奏者の息が揃った動きによって、視覚的にも楽しめるパフォーマンスになっているところ。
Coffee Break(2020年駒場祭演奏会より)
動画はこちら
▶▶▶【コーヒーカップ5重奏】Coffee Break / Mark Ford & Ewelina Bernacka Ford
コーヒーカップ5重奏です。筆者はこの曲は演奏していないので、傍から見たこの曲の概要や見どころなどをお伝えできればと思います。
コーヒーカップ(カフェで飲み物を持ち帰るときの入れ物を想定しています)を楽器にするということで、演奏するためにはそれらの調達が必要です。この時は、スタバのカップを使用したようです。余談ですが、この曲を演奏している団体はいくつもあるのですが、どの団体も大体スタバのカップを使っています。やっぱりカフェと言ったらスタバなんですかね…(どうでもいい)
この曲には、カップの底を円を描くように擦り付けたり、ストローをカップの中でかき回したり、カップの蓋を飛ばしたり、スリーブを叩きつけたり、、、と独自の奏法(?)も多く登場します。蓋やカップを叩いたり、このような奏法をしたりすることで、カップの消耗が激しかったようです。そのため、練習ごとに新しいカップが必要となり、かなりカップを集めるのに苦労していたようでした。
また、この曲最大の特徴は、小芝居を交えて曲が進んでいくことです。仕事の同僚4人がカフェでの休憩でコーヒーを飲んでいたら、そのうちリズム遊びが始まり、そこに通りすがりのお客さんも加わります。そのあとどうなっていくかはぜひ動画でお楽しみください!
◆この曲の推しポイント!
コーヒーカップ全体を使って奏でられる音の多様さ。休憩中というシチュエーションに起因する、楽しげな雰囲気もこのアンサンブルならではだと思います。
ぺるあんの演奏曲の中には、他にも個性が強い曲がいくつもあります。これらを見て、打楽器アンサンブルの新たな一面を知っていただけたら嬉しいです。
というわけでどんな曲か気になったあなた!今すぐにぺるあん公式YouTubeをチェックだ!!!