初めてのドレミパイプ体験記
打楽器の魅力の一つは、他のどんな楽器よりも身近であるということです。音を出す方法は極めてシンプル、「叩く」ただそれだけ。つまり誰でも簡単に奏でられるし、また叩いて音が出る物体は何でも「打楽器」にすることができます。身体さえあれば、いつでも、どこでも、誰でも「打楽器」奏者になれるのです。
そんな打楽器の身近さをまさに体現していると言えるのが「ドレミパイプ」という楽器です。楽器と言っても、その実態は”音程に合わせて長さが決められたプラスチック製のつつ”。叩くと決まった高さの音が出るという単純さ、どこを叩いてもいいという気軽さから、ドレミパイプは知育楽器として子どもたちにも演奏されています。
私たちぺるあんは、叩けば簡単に音が出る打楽器の面白さや奥深さを味わってもらいたいと、ドレミパイプを使って様々な演奏に挑戦してきました。連符などの複雑なリズムを取り入れたり、同時にたくさんのパイプを鳴らすことで和音を作ったりと、ドレミパイプ音楽の可能性を広げてきました。
もちろん新しいことに挑戦するためには、専用の楽譜を自分たちで新しく作らなくてはなりません。2019年にドレミパイプ演奏を初披露してから今日まで、ぺるあんでは毎回、自分たちでドレミパイプのために編曲し楽譜を用意しています。今回は、先日行われた演奏会でドレミパイプの演奏に参加し、編曲も手掛けた1年生の団員が、その舞台裏を明かします。
こんにちは。11月の駒場祭演奏会を聞いてくださった方、どうもありがとうございました。
さて、1日目と2日目にはドレミパイプとカホンによる『アンダー・ザ・シー』の演奏があったのですが、お聞きいただけたでしょうか?まだ聞いてないよという方はこちらから
▶▶▶【ドレミパイプ八重奏&カホン】アンダー・ザ・シー/ Alan Menken
今回は、この曲がいかにして完成したのかを、編曲者目線で書いていきたいと思います(編曲関連のことが多くなりますがあしからず)。
ドレミパイプのはじまり
まずは曲決め。なのですが、ドレミパイプはなかなか候補曲が出ず…… 自分はドレミパイプやりたいなあとはずっと思っていたのですが、やりたい曲はあるのかと聞かれると???みたいな感じでした。最終的には先輩方の出した『アンダー・ザ・シー』が候補となり、そのまま決定となったのでした。
ところで、今回は自分が編曲を担当したのですが、実は初めてでした。今までやったことがなかったけれど、高校のとき楽譜作成ソフトは使ったことがあったのと、初めてでも大丈夫とのことだったので、挑戦してみることにしました。
編曲!やべぇぞい!
てなわけで編曲開始。先輩曰く「ピアノ譜とかを元に作ればいいよ〜」と言っていたので、その言葉のままにピアノ譜を持ってきてソフトに入れました。ところが楽譜を持ってきたところで一旦満足し、作業ストップ。9月中頃、「やべ、やってね」と思い、ピアノ譜の音符を8人にとりあえず割り付けて先輩に見せてみる。
「これはどういう方向性を目指してる?」
うっっ…… そんなの考えてないよぉぉぉぉぉぉぉ。だってピアノ譜コピペしただけだもん。
「ここの伴奏のリズム違くない?」
はぁ…… ピアノ譜がそうなんだから別に良くないすか?
「ここの音違うと思う」
知りません。
とまあ色々指摘がありました。なぜそうなったか。ピアノ譜はピアノで弾きやすいように原曲を多少いじっていたこと、そして原曲を聞かずに曲を作ったからでした。それで曲の方向性が曖昧になっていたのでした。
とはいえ当時の自分は何がそんなに問題なのかはしっかり理解できず、とりあえず先輩に「原曲に忠実な方向性で行きます」と言って、先輩のアドバイスに従ってとりあえず原曲を聴きながら再び編曲を始めました。
原曲を聴いてみると、ああ確かにピアノ譜では落としているけど、裏で流れている音があるなあと気付きました。これは編曲に入れたいなあと思うけど音わかんないなあ…… じゃあちょっと面倒だけど自分で歌って、チューナーで拾って楽譜におこすか、という感じで曲を作っていきました。
しかし編曲の中で問題が。低音の伴奏がよく聞こえないのです。スマホのスピーカーに耳を当てて聴いてみるが上の音ばかり聞こえて分からずじまい。どうすんべかなと思っていると、ある日しばらく使っていなかったCDプレーヤーのBluetooth機能を思い出しました。これで聞けば低音もいけるのではと思いやってみると
お、めっちゃ聞こえるやん。(今までスマホに耳ぴったりつけて聴いてた自分の努力は?)
などと心の内で思いながら低音の伴奏も歌って、チューナーで拾って楽譜におこしました。
この頃(9月中旬〜下旬)になると、練習そろそろやりたいなあみたいな空気が醸し出されてくるので、おおやべえやべえと思いつつ編曲。楽譜に起こし終わると、次は音高ごとに楽譜を分けて、人が演奏できるように音の割り当てをしていきます。結構大変ですが、パズル的なところもあり、そういうところは楽しかったです。
できた楽譜を先輩に見せてみると、「ここからは練習しながら直していこうか」と言われ、その週に初練習。初回はパート決めと個人練習をすることになったのですが、
「このパート2本しかないんだ」
「こっちは8本もあるんだが」
「誰がやるねんw」
とまあパートでかなり難易度がバラバラで、曲としてはもう一息な感じになりました。本当は練習後に地理部の立体日本地図作りを手伝う予定でしたが、それどころじゃねえぞということで帰宅し、再び音の割り当て。夏休み最後の一週間は、こうして消えていきました……
一週間後、新しい楽譜が完成。個人の使用するパイプは3〜6本に集約し、負担が一部に偏らないようになりました。ということで何とか練習開始にこぎつけました。
練習は始まるも苦労は続く……
ところが、練習を進めるうち、一つ問題が発生しました。ドレミパイプは音域がかなり狭い(ピアノが7と1/4オクターブあるのに対して、ドレミパイプは2と1/2オクターブ)ため、本来は1オクターブ以上離れた音高のメロディーと副旋律を、編曲段階で同じ音高にまとめていました。その結果、実際に演奏してみると二つの旋律が混ざって何が何だかわからなくなっていたのでした。
そこで、まずは一部の副旋律をカットすることが考えられました。しかしそれだと曲としてやや薄くなってしまうという別の問題が。そこで、メロディー、副旋律、伴奏で強弱を分け、その差で二つを区別することに決めたのでした。今度は作った楽譜に強弱を散りばめます。人によってはメロディー、副旋律、伴奏を行ったり来たりして、楽譜がすごいことになりました(笑)。
という感じで、練習は順調に進んでいった……、と言いたかったのですが、実際はかなり難航しました。曲がやや難しかったんです。全体的に雰囲気は似ているけど、各部微妙に音やリズムが違うんです。それは曲の面白いところであり、難しいところでした。しかも、演奏メンバーは皆何だかんだで忙しく、全員が揃って練習したことは、実は1,2回しかありませんでした。その結果、オンライン演奏会用の収録では、多くの人が楽譜を覚えられず、しれっと楽譜を置いて耐えました。たださすがにこれはまずいなということで練習は追加になりました。(今だから言えますが、割と冗談抜きで本番までに完成しない説あるかもと思ってました。本番の日の朝まで練習しましたし。)
そしてついに対面演奏会本番へ
いよいよ本番。自分は演奏前に編曲者として曲紹介を喋る担当で、何回か練習しましたが、緊張しました(リハで一回喋ることが飛んだので本番は余計に緊張しました)。本番で喋るときには今まで自分が努めてきたことを何とか伝えられました(立ち位置をあまり確認していなかったせいで、机を置く時に自分が邪魔になってしまったことは本当にごめんなさい)。
そして、本番の演奏が始まりました。ギリギリまで練習をした甲斐あり、ひとまず大きな失敗はなく終えることができました(自分は途中何箇所か音がごっちゃになりかけましたが)。かなりヒヤヒヤしたこともありましたが、とりあえずめでたしめでたし。
編曲を終えて
最後に一言。やはり曲が難しかったですね。次回やるならピタゴラスイッチのテーマぐらい簡単なやつにしたいと思います(笑)。
ここまで長い駄文をお読みくださり、ありがとうございました。編曲は初めてだったので、大変なこともありましたが、それと同時にとても楽しくもありました。個人的にはまた編曲に挑戦してみたいなあと思っています。今後もぺるあんの演奏会を聴きに来ていただけると嬉しいです。ではまたの機会にお会いできることを楽しみにしています!