カービィメドレーに込めた想い
ピンク色のまん丸なフォルムといえば、きっと誰もが真っ先に思い浮かべるであろうゲームキャラクター、カービィ。見た目の愛らしさと何でも吸い込んでしまう大胆さも人気の理由の一つですが、ゲームシリーズを通した奥深いストーリーや、それを彩る様々な音楽も大きな魅力となっています。
私たちぺるあんの中にも、そんな星のカービィシリーズにすっかり魅せられた団員が……。カービィと打楽器をとことん愛する彼は、持ち前の編曲スキルで打楽器アンサンブルによるカービィメドレーを1年に2本も制作し、カービィを愛するプロの打楽器奏者・嶋崎雄斗さんとのカービィコラボ(!)まで実現させてしまいました。
今回はそんな彼が、カービィ30周年に合わせて制作したメドレーについて、選曲理由から本家再現のこだわりポイントまで、溢れるカービィ愛とともに語りつくします。ぜひ演奏動画で確認しながらご覧ください!
こんにちは。2022年度の駒場祭で演奏した『星のカービィ30周年メドレー』の編曲者です。
私は先日嶋崎雄斗さんと共に演奏した『星のカービィwiiメドレー』の編曲も担当しています。こちらについては解説動画を投稿しているので、ぜひご覧ください!
解説動画はこちら▶▶▶
【嶋崎さんコラボ!!】星のカービィWiiメドレー【団員コメント付きVer.】
投稿時期を逃してしまい随分遅くなってしまいましたが、様々な想いを込めて編曲した曲なので、ぜひ読んでいただけると幸いです。
編曲者のカービィ歴
まずは私のカービィ歴を軽く紹介します。
私は小学生の頃からゲーム少年で、毎日何時間もDSや3DSを触っているような子どもでした。その中でもカービィシリーズは大のお気に入りで、USDX、wii、毛糸、あつカビ、TDX、ロボボ、スタアラ、ディスカバリーなど、様々な作品を楽しんできました。
私のカービィシリーズへの魅力の対象は、年齢を重ねると共に徐々に変化していきました。小学生低学年の頃はアクション面を楽しんでいたのですが、高学年になるにつれ次第に音楽にも魅了されるようになり、公式サウンドトラックを何枚も購入し、ウォークマンに入れて毎日聴くようになりました。また、キャラクターデザインも好きで、イラスト投稿サイトに絵を投稿したりもしていました。
更に、中学生になるとストーリー面も深く考察するようになりました。
カービィシリーズのディレクターは何度か交代しているのですが、現在の熊崎ディレクターに変わってからは、カービィの世界観がより作り込まれてシリアスになり、考察要素が増えていったので、連日ネットで他の人の考察記事を漁っていました。
このように、私は中学生の頃までは、カービィにどっぷり浸かった生活をしていました。
メドレー全体についての話
さて、私は2021年度の駒場祭で『Jump Up! Super Star』の編曲を担当したのですが、その時自分が書いた楽譜が演奏されることがとても楽しかったので、今回もぜひ編曲を担当したいと思っていました。
そして、昨年はちょうどカービィシリーズが30周年を迎えた年であったため、カービィの曲を演奏するなら今しかないと思い編曲を名乗り出ました。
まず、編曲をする上で最も苦労したのは、「どの曲を採用するか」ということです。
コアなカービィファン向けだけでなく、広い世代に向けて演奏するため、あまりにもマイナーな曲ばかり入れてもふさわしくありません。
また、ネット上に存在するカービィメドレーは、そのほとんどが30分を超えており、名曲をこれでもかと採用しています。しかし、今回は練習時間・演奏会の構成を考えると、せいぜい7分ほどしか演奏できないため、採用する曲をかなり絞らなければいけません。そのため楽譜まで作ったものの、泣く泣く不採用にした曲がたくさん存在します。例えば、『デデデ大王のテーマ』は比較的有名な曲ですが、尺と展開の都合上カットしました。
他にも、『ドロシア戦』『ドロシアソウル戦』『隆隆たる獅子叢の哮り』『ヘルパーたちの休息』『Welcome to the New World!』なども楽譜を制作しましたが、尺や知名度の関係で不採用になりました。
それでも、せめてできるだけ採用する曲数を増やしたかったので、対旋律として曲をねじ込んだりと、試行錯誤を繰り返しました。その結果、全部で13もの曲を採用でき、それなりに満足できました。
メドレーの詳細な解説
それでは、これから具体的にメドレーの編曲について解説していきます。
今回のメドレーは4部構成になっており、それぞれのセクションで、カービィの異なる魅力を表現することを目指しました。
第一部
第一部では、カービィの楽しさ・元気さを前面に押し出した曲を採用しました。
カービィの音楽の中でも耳にしたことがある人も多いであろう『GREEN GREENS』, 『激突!グルメレース』に加えて、近年ビッグバンド団体によるアレンジがグラミー賞を受賞した『戦艦ハルバード:甲板』です。さりげなく主要キャラであるカービィ、デデデ、メタナイトの要素をまんべんなく取り入れています。
前奏部分は2022年に行われた公式ビックバンドフェスのオープニングをほぼそのまま使わせてもらいました。華やかで素敵なアレンジで気に入っています(一応ロボボの『GREEN GREENS』のアレンジが元になってるっぽい?)。
『グルメレース』のサビ部分はカノン進行もどきなので、同じくカノン進行もどきな人気曲『天かける虹』を対旋律としてヴィブラフォンに叩いてもらいました。
『戦艦ハルバード:甲板』は、毛糸のカービィのアレンジが非常に好きなので、編曲の際にかなり参考にしました。
カービィの曲の魅力の一つはメロディの音数の多さだと思っており、特にこれらの曲は打楽器アンサンブルとの相性が非常に良いと思っています。
第二部
第二部は、雲の上の世界をテーマに、静かで優しい曲を採用しました。
『バブリークラウズ』『グレープガーデン』は、どちらもシリーズを通して繰り返し使用されている人気曲であり、優しい響きの中にどこか切なさを感じさせる旋律が特徴の楽曲です。
『バブリークラウズ』の裏でヴィブラフォンが『レインボーリゾート』のフレーズも叩いています。この3曲は初期のカービィ作品の中でも屈指の名曲で、何とか全部ねじこめてよかったなといった感じです。
『レインボークルーズ』や『グレープガーデン』は、僕が小〜中学生の頃にYoutubeに「糸奇はな」という方がボーカルアレンジを投稿しており、当時大好きでとてもよく聞いていたため、今回のアレンジも影響を受けています。
糸奇はなさんの曲はどれも対旋律が非常に美しいため、僕も編曲する際には対旋律を非常に大事にしています。
ちなみに糸奇はなさんは「Undertale」の作者のToby Fox氏と仲が良く、共同でいくつも曲を発表しています。どれも素晴らしいので是非聞いてみてください!
第三部
第三部は雰囲気を一変させ、ラスボス戦の禍々しい楽曲を採用しました。三部は語る内容がとても多いです!笑
1曲目の『VS.マルク』は、予測できない拍子の変化や、不協和音によって構成される美しいハーモニーが特徴的な楽曲です。2曲目の『組曲:星羅征く旅人 最終楽章:煌めき星』は、これまでの星のカービィシリーズの集大成とも言えるラスボスの曲であり、悲壮感溢れる旋律と重々しい伴奏が特徴的で、星のカービィの魅力の一つである「物語の奥深さ」を体現している楽曲です。この2曲では銅鑼やバスドラムといった大型楽器を用いて、原曲の迫力を再現しています。
1曲目の『VS.マルク』は、私が初めてプレイした「USDX」のラスボスの曲であり、その独特の不安定さや迫力に小さい頃からずっと魅了されており、ピアノアレンジを練習したりと思い入れのある曲なので、今回採用しました。シリーズでも屈指の人気曲です。
2曲目の『組曲:星羅征く旅人 最終楽章:煌めき星』は、私がこの星のカービィ30周年メドレーの中でも特に重要な役割を与えた曲です。
その役割を解説する前に、まずはこの曲が収録されている作品である「星のカービィ スターアライズ」について解説します。
星のカービィ25周年のタイミングで発売された「星のカービィ スターアライズ(スタアラ)」。この作品は、これまでのカービィシリーズの集大成と言っていいほど、過去作のオマージュやサプライズが多く盛り込まれています。
本作ではピースのかけらを集めて絵を完成させる要素があるのですが、一番最後に完成する絵が「さよならカービィ」という、夕焼けの中カービィが涙を流しながら旅立って行く姿を描いた絵であり、前述のファンサービスの要素も考慮し「カービィシリーズは本作品で終わりなのでは?」と当時のファンを心配させました。
しかしそれは杞憂で、30周年となる2022年に「星のカービィ ディスカバリー」が発売されました。しかしこの作品は、これまでのカービィシリーズとある点で大きく異なっていました。
これまでのカービィのメインシリーズの作品は全て2D横スクロールアクションだったのですが、今作はメインシリーズ初の3Dアクションであり、カービィの当たり前が大きく見直されたのです。
すなわち「さよならカービィ」は、開発者がスタアラを節目に2Dのカービィに一旦区切りをつけ、今後は3D路線へと切り替えていくことへの意思表示だったのではないかと言われています。
つまり、星のカービィ30周年である2022年は、カービィシリーズにとっても新たな時代の幕開けの年でもあるのです。
さて、話が戻りますが、そんなスタアラのラスボス戦で流れるbgmが『組曲:星羅征く旅人』です。本作のラスボスについて語り出すと文章量が倍以上になってしまうので詳細は省きますが、とても壮大な裏設定を持ったラスボスです。
興味がある方は、こちらの動画がわかりやすいのでぜひご覧ください。
▶▶▶ニルについて解説!!【星のカービィスターアライズ】―まるピンク【アクションゲーム愛好家】
カービィの設定の奥深さが伝わると思います。
私はこの曲を昨年の公式ビックバンドフェスで初めて聞いたのですが、最後のGREEN GREENSのアレンジに鳥肌が立ったのを覚えています。その後速攻でスタアラを購入し二日で全クリしたのですが、全てを知った後だと、このGREEN GREENSのアレンジにも深い意味を感じられます。
スタアラのラスボスを倒すということは、25年のカービィの歴史に区切りをつけるということ。こうした意味で、第三部を締めくくる曲にふさわしいと思い選曲しました。
さて、スタアラのラスボスを倒したことにより、時代はさらに前へと進んでいきます。
第四部
第四部は、ボスを撃破したカービィがポップスターに帰還する様子を表現すると同時に、今後も形を変えながら続いていくカービィシリーズを表現しました。
一曲目は、「SDX」や「USDX」でのラスボスを倒した際に流れる曲『カービィ凱旋のテーマ』です。この曲は古のニコ動を見ていた人にとってはお約束のbgmとして馴染みが深いのではないでしょうか?笑 「ボスの撃破」というシチュエーションと、ネット世代への知名度の両方を考慮して採用しました。
そして本メドレー最後の曲は、「Wii」のスタッフロールのbgmである『Return to Dreamland』です。
このメドレーを制作している最中に、奇しくも「wii」のリメイク版の発売が決定しました。元々この曲は採用する予定だったのですが、wiiのリメイク版の発売決定によって、この曲がメドレーの最後にある理由がさらに増えてラッキーでした。
さらに、ほんの僅かですがメドレーの終わりに2022年発売の「星のカービィディスカバリー」のテーマ曲『Welcome to the New World』のフレーズを入れることで、30周年を迎え新たなステップを踏み出したカービィシリーズを表現しました。
以上がメドレーの解説となります。
終わりに
昔から大好きだったカービィの曲を、大人数でさらに2回も演奏し、本当に幸せな経験をさせていただきました。
今後も編曲の腕を磨いて、色んな曲を演奏していけたらなと思っています。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
打楽器奏者・嶋崎雄斗さん×ぺるあん カービィコラボリスト
ぺるあん×ゲーム音楽の歩み