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ロッセリーニ『イタリア旅行』、見られる役者たち

12/4/24
ラオール・ウォルシュ『死の谷』(1949)

同監督による『ハイ・シエラ』のリメイク。『死の谷』ほうがストーリーのベースは同じでも無理無くかっこよくて好きだ。主演のジョエル・マクリーはボガートみたいな不自然な笑い方しないし、位置が高すぎるベルトもない、声も良い。相手役のヴァージニア・メイヨは肩出しブラウスで肉感的な唇、ふんわりと長いティアードスカート。このスタイルはメキシコ風?かわいい、真似したい。農夫の娘役ドロシー・マローンも良かった。彼女が男を裏切り保安官を呼び止めようとする行為は、ハイ・シエラのストーリーより理にかなっている感じ。そしてカーチェイスではなく馬で追いかけっこする西部劇。要所要所で乗り捨てられたり倒れ込む馬が結構いたので、なんだかその後のことも考えてしまう。実際に西部開拓時代は捨てられて野生化した馬って結構いたのだろうか。死の谷という場所が見た目完全に言葉通りの切り立った巨大な岩壁で、実際に行ってみたいなと思った。しかし今後、わたしが観光でアメリカに行くことはあるだろうか。

ロベルト・ロッセリーニ『イタリア旅行』(1953)

イングリット・バーグマンが夫役のジョージ・サンダースを脇に乗せて車を運転しナポリへ向かうところから始まる。イタリア語でバーグマンがペラペラ話しているのを初めて見た。運転を普通にこなす女性はこの時代にどれだけいたのだろう。この様子から夫婦の間は冷えたものでも対等な印象を受ける。滞在する別荘は、それはそれは瀟洒。貴族の生活だ。階級社会。ナポリの博物館、火山の火口や遺跡、カタコンベ、ポンペイの発掘現場など、イタリアの名所を訪れるバーグマンに合わせて自分も観光している気分になる。特に博物館の彫刻の撮り方がものすごく怖い。
後半、この映画はほとんど音楽が流れないことに気付いた。これが緊張感と妙な雰囲気につながっている気がする。ついに離婚を決めたふたりが帰途につくあたりから静かに悲しげな音楽が鳴る。ラストシーンではパレードが行われる現場に入り込み車の行く手を遮る。楽隊が激しく音楽を鳴らし、マリア像を祀って大勢の子どもたちと練り歩く様子をふたりは茫然と眺める。これが何なのかわたしは分からないが、映画の中の夫婦もこの祭りが何なのかわかっていない様子だ。すごい数の一般人たちが好奇心隠しきれずじろじろと注目する中で役者が演じるのは、ただただおもしろい。そして、まるでその場にいる一般市民たちのエネルギーが渦巻いて勢いに流されるように、また、見られる事で興奮したかのように、夫婦は仲直りする。しかしなぜ和解したのか理解していないように見える。予定調和ではない破綻した感じの、不思議な映画だな。これはハッピーエンドなんだろうか。

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