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【すっぽんノベル】「桃太郎」 第三話

writen : 立花裕介

不安になったおばあさんは、開けてはいけないという約束だった障子に手をかけ、開けてしまいました。

すると、そこにいるはずの新しいおじいさんの姿はこつぜんと消え、机の上に「わしゃ組織を追いかける。探さんでくれ」というメモが一つ残されていただけでした。

「おじいさん…!」

とっさに、風が吹き込むの窓の外を見ると、なんと、新しいおじいさん”エドワーズ“が、二人の愛の巣である30階建て高層マンションの壁を、よいしょよいしょとロープをつたい降りていくところでした。

「エドワーーーーズ!」

その姿を見つけたおばあさんは、思わず名前を叫んでしまいました。

「早かぁ!」

エドワーズも思わず叫びました。
と、その瞬間、驚いたエドワーズはロープから手を滑らせてしまいました。
だいたい28階くらいの高さから、真っ逆さまに落ちていくエドワーズ。

「危ない!」

窓から飛び出したおばあさんは、高層マンションの壁をまるで忍者のように、光のはやさで駆け抜け、あっという間に地上に到着。落ちてくるエドワーズを見事にキャッチしました。
一命はとりとめたものの落下のショックで朦朧とする意識の中、「早いとよ…ふさえ」とだけ言い残し気を失ってしまったエドワーズ。黄金のオーラを身に纏ったおばあさんは、本当に愛おしそうにエドワーズを優しく抱きしめるのでした…。

エドワーズを抱え、部屋に戻っていくおばあさんの後ろ姿を眺めながら、足元に転がっている親指サイズの精密機器をそっと拾う一人の青年。

「やるじゃないかエドワーズ。」

一人言のように呟くと、精密機器を握りつぶし、その場を後にして歩き出した。

いつもと変わらない街並み。一見すると賑わっているように感じるのだが、行き交う人たちの目にはどこかうつろ。ネオンは明るく煌々としているのに、空気は冷たい。そんな街に嫌気がさしていたはずなのに…。青年は、またこの街に戻ってきた自分の愚かさを嘲笑いながらも、どこかホッとしている自分にも気付いている。
何が本当で何が嘘なのかわからないこの街が、やはり自分の居場所なのだと改めて突き付けられるのであった。

ゴミゴミした人混みを抜け、目的地である街の外れの暗がりに着いた時、予想してた通り、後ろから声をかけられる。

↓以下、世界線の選択になります↓

1. 「遅かったわね。エドワーズの様子はどうだった?」
振り向くとそこには、その流れるような金髪に似つかわしくない黒い衣装を身に纏った一人の女性が立っていた。

2. 「遅かったじゃねぇか。てっきり逃げ出したのかと思ったぜ。んで?例のものは手に入ったのかい?」振り向くとそこには、いかにも高そうなスーツにオールバックといった出立の中年の男が立っていた。

3.「遅かったじゃないか?で、ユバーバに名前は返してもらえたのかい?」振り向くとそこには黒い丸眼鏡をかけ、6本の腕で器用にボイラーに火をくべる、釜爺が立っていた。

番組内ではリスナーさんの投票で2番の世界線が選ばれました。第四話は2番の世界線で物語が続きます。

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立花裕介
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