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【すっぽんノベル】「桃太郎」第七話
writen:立花裕介
まさか、そんなはずはない。思い出すはずがないんだ。
あの力に目覚めてからというもの、ふさえは、力を使うたびに記憶を失っていった。最初は幼少の頃の記憶だった。保育園の時の担任の先生の名前。そういうこともあるだろうと思っていた。だって、おばあさんだもの。しかし、気がつけば、息子の事、そして、愛していたであろう古いおじいさんの名前まで忘れていたのだ。どうやら古い記憶から順に忘れていくようだ。このままいけば、いつか自分のことも忘れてしまうのだろう。それでもいいと思っていた。例えいつか自分の事を忘れてしまっても、そばに居られるのなら、それでいいと。
そんな状態のふさえが、何度尋ねても思い出せなかった息子。そう、坊ちゃんの名前を思い出せるはずがない。組織はふさえに何をしたんだ?
エドワーズはいても経ってもいられず、思わずベッドから起き上がろうとした。しかし身体には力が入らず、拘束具さえぴくりとも動かない。
「まだ無理をしないほうがいい。」
懐かしい声が聞こえる。組織を離れる前は、よくこいつと行動を共にしていた。相変わらず生意気な声だ。水鉄砲を撃ち合っていた頃が懐かしい。
「遠藤か…。」
そこには二年前と何も変わらない、ビチャビチャに濡れたのスーツを着たオールバックの男が立っていた。
「おっと、今はバックスって名乗ってるんだ。遠藤はやめてくれ、山内さん」
「ワシも今はエドワーズと名乗っておる。山内はもう捨てた」
「へっ、奇遇だな。二年の内にお互い変わっちまったってことか」
「そんな事はどうでもいい。お前達、ふさえに何をしたんじゃ!」
その言葉を遮るように、遠藤がベッドに横たわったままの山内の胸ぐらをつかみ叫んだ。
「どうでもよくねぇよ!今まで何してたんだ?なんで?なんで組織を裏切ったんだ、山内さん!」
「遠藤!今はその話をしている場合じゃない!組織はふさえに何をしたんだ?何故ふさえの記憶が戻っている!?」
山内と遠藤、互いに睨み合ったままの沈黙が続く。やがて遠藤がその手を離し、
「はあ…難しいことは俺にはわからねぇ。まあ、元気そうで何よりだ。もう少しそこでゆっくりしてな。」
どこまで行っても平行線だと悟った遠藤は、溢れ出しそうな感情を飲み込み、部屋から出て行った。山内のベッドは、涙で濡れたとは思えないほどビチャビチャに濡れていた。
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父の顔はよく覚えていない。幼少の頃の微かな記憶だけだ。
母さんともあまり過ごした記憶はない。
やっとのことで見つけ出した母は、何故か組織が探していた「黄金のオーラ」を身に纏っていた。
両親と離れて過ごしていた僕を育ててくれたのは、エドワーズとバックスだ。
本人達を尊重して、そう呼んでおこう。
夏の日も、冬の日も3人で水鉄砲で遊んでいた。
エドワーズは長距離射撃、バックスは中距離射撃が得意だった。
僕はそんな二人に水鉄砲の全てを教わった。
しかし、どんなに楽しい水鉄砲も卒業の時が来る。
僕は組織を飛び出した。
きっかけはエドワーズの失踪だ。
当時、組織の重要任務を課せられたエドワーズはだんだん帰りが遅くなっていた。
僕はバックスと二人の時間を過ごすわけだが、
エドワーズがいない事で、二人の関係はギクシャクし始めていた。
バックスは僕にだけ水鉄砲を向け始めた。
しかも近距離から攻めてくるのだ。
そしてエドワーズが失踪。
バックスの集中砲火に耐えきれなくなった僕は、エドワーズが課せられた重要任務「黄金のオーラ捜索」のための重要文献を盗み、組織を抜け出した。
まさかまたここに帰ってくる事になるなんて、夢にも思わず…。
そんな僕が今、父だと思われる人の前に立っている。
彼は想像していた通り、随分年老いていた。
僕は一体、何歳の時の子供なんだろうか?
そして、父はこの組織で何をやっているのだろうか。
そんな事を考えていると、目の前の老人が口を開いた…。
「よく来たな、桃太郎。待っていたよ」
↓以下、世界線の選択になります↓
1.「早速だが、君の兄弟を紹介しよう」
父と思わしき人物が部屋の明かりをつけると、そこには僕と同じ顔をした人間が無数に浮いている、とてつもなく巨大な水槽が現れた。
2.「早速だが、私の本当の姿をお見せしよう」
父と思わしき人物が徐ろに服を脱ぐと、そこには「金」という漢字が大きく書かれた赤い前掛けが現れた。
3.「早速だが、君の新しいお母さんを紹介しよう」
父と思わしき人物が合図をすると、そこに現れたのはなんと、
僕だけではなく日本男児なら誰もが一回はお世話になっているであろうセクシー女優、紗倉まなちゃん、その人だった。
番組内ではリスナーさんの投票で「1番」の世界線が選ばれました。第八話は「1番」の世界線で物語が続きます。
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