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【すっぽんノベル】「桃太郎」 第二話

writen : AD.TAKEDA

いくらなんでも腐敗していたその桃は、グシャっと崩れ、中からは凄まじい異臭と共に、産業廃棄物のようなヘドロが出てきました

「デロデロ〜」

「ゴホッ、ゴホッ!ひどいニオイねぇ...」

おばあさんは桃を持ち帰ってきたときにすぐに食べなかったことを後悔し、

「桃の食べごろって意外と難しいのね...」

とかなんとか言いながら、若返ってあわよくば...と淡い期待を抱いていた自分を恥ずかしく思っていました。

「ん?なんじゃろう?これは」

新しいおじいさんは、桃から出てきたヘドロの中から、キラリとひかる小さなものを見つけ、拾い上げました。

「これは...」

ヘドロを水できれいに洗い流すと、それは、親指サイズの精密機器。赤いランプが一定のリズムで点滅していました。

「ま、まさか...」

顔色を変えた新しいおじいさんは、すぐさま自分の部屋に駆け込むと、おばあさんにこう伝えました。

「わしゃこれを調べる。これが何かわかるまで、この部屋の扉は開けてはいけん。絶対に。約束じゃけぇな。絶対だでぇ。」

「おじいさん...それは何なの?」

おばあさんの声を聞くより早く、新しいおじいさんは、自分の部屋の障子(しょうじ)をピシャリと閉めました。

1時間が経ち、2時間が経ち、おばあさんは、部屋の前で待ち続けました。
その間、新しいおじいさんのこと、そして3年前、こつぜんと姿を消した古いおじいさんのことを考えていました。

「やっぱり恋はタイミングよね...」

と頬(ほお)を赤らめながら、新しいおじいさんと出会った時のことを思い出していました。古いおじいさんのことを思い出さずに過ごせるようになった途端に現れた新しいおじいさん。
口数は少ない方だけど、お金はたくさん持っているようでした。そこがまた良かった。

「あんたが良けりゃあ一緒におりたい思うとるけぇ」

おじいさんの独特の方言が、妙におばあさんの心に刺さったの、と思い出にひたっている中、ふと現実に戻り、頭をよぎったことが一つありました。

「あたし、おじいさんのこと何も知らないわ...」

新しいおじいさんは、どんな人生を送ってきたのか、なぜそんなにお金を持っているのか、かつての職業はおろか、出身や年齢、顔に似つかわないエドワーズという名前も果たして本名なのか。
不安になったおばあさんは、開けてはいけないという約束だった障子に手をかけ、開けてしまいました。

すると、、

↓以下、世界線の選択肢になります。↓

1.そこには見たこともない大きなフラミンゴが一羽、自分のピンクの羽根を一枚ずつはぎ取りながら、それはそれはきれいな桃色の織物を作っていたのでした。

2.そこにいるはずの新しいおじいさんの姿はこつぜんと消え、机の上に「わしゃ組織を追いかける。探さんでくれ」というメモが一つ残されていただけでした。

3. 「あ、開けてはだめじゃ言うたのに...」
なぜか服を脱ぎ捨て、真っ裸になっていた新しいおじいさんは、そういうと、持っていたTENGAをゆっくりと床に置きました。

番組内ではリスナーさんの投票により「2番」が選ばれました。
第三話は「2番」の世界線で物語が続きます。

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立花裕介
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